ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

植物の環境ストレス影響評価とモニタリングに関する研究(平成 31年度)
Study on estimation and monitoring of effects of environmental stresses on plants

予算区分
AH 地環研
研究課題コード
1820AH001
開始/終了年度
2018~2020年
キーワード(日本語)
遺伝子発現,オゾン,環境放射線,植物モニタリング,ストレス診断,ゲノム解析
キーワード(英語)
gene expression, ozone, environmental radiation, phytomonitoring, stress diagnosis, genome analysis

研究概要

 分子的メカニズムに基づくストレス診断によって野外における植物の環境影響評価を行い、環境情報を充実させるとともに、大気環境の保全に取り組むための科学的知見を蓄積することを目的とする。
 わが国では多くの大気汚染問題(二酸化硫黄、二酸化窒素等)が改善されてきたが、光化学オキシダント(オゾン)については、世界的にも汚染の高濃度化、広域化が進んでおり、人間の健康はもとより、樹木や農作物など植物への深刻な悪影響が強く懸念されている。本共同研究グループでは、中長期的にオゾンによる植物被害の実態を把握するとともに、遺伝子発現解析等による植物のオゾンストレス診断手法を開発・高度化し、実際のオゾンによる植物被害調査に利用を拡大してきた。さらに、平成23年3月に発生した福島第一原発からの放射性物質の漏出が生態系や人間社会に対する脅威となっているため、低線量環境放射線の植物への影響の評価も試みてきた。
 本共同研究では、これまでに開発したストレス診断法等を用いて、各地におけるオゾンや放射線による植物の影響を評価し、モニタリングを行うと同時に、手法の改良も行う。また、市民の理解を深めるために各地域の特性を考慮しながら研究結果の普及を図っていく。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

参加各機関において、植物のオゾン被害実態調査を実施する。対象とする植物としては、国環研が供給した単系統のアサガオと、オゾンによる被害が指摘されているブナを用いる。葉や種子を用い、遺伝子発現解析その他のマーカーの調査によりオゾンや低線量環境放射線の影響評価を行う。また。福島県双葉郡浪江町の帰還困難区域で開花直前のサクラ花蕾を採取し、花粉の成熟率等を調査するとともに、同帰還困難区域でアサガオを栽培し、葉と種子を用いて低線量の環境放射線の影響評価を行う。さらに、使用する遺伝子の選定など影響評価手法の改良を行う。

今年度の研究概要

【地環研等】
1)参加各機関において、毎年7〜8月に共同で植物被害実態調査を実施する。対象とする植物としては、国環研が供給した単系統のアサガオを用いる。さらに、一部の機関ではオゾンによる被害が指摘されているブナを用いる。
2)野外で生育させたアサガオの葉を、光化学オキシダントによる被害が観察される前(5〜6月頃)に採取して(無傷葉)、国環研に送付する。また、7〜8月頃に光化学オキシダント濃度が上昇した翌日に、各調査地点において被害が発現しなかった葉(無被害葉)及び被害が発現した葉(被害葉)を遺伝子解析用に採取し、国環研に送付する。アサガオ種子を採取し国環研に送付する。
3)無傷葉は環境放射線の影響評価にも用いるので、各地における生育期間中の環境放射線の線量を測定する。
4)代表機関では各機関で実施した光化学オキシダントによる植物被害調査の結果とオキシダント濃度等の情報を収集し、とりまとめる。
【国環研】
1)各機関より送付されたサンプル葉におけるオゾン応答遺伝子の発現を調査する。
2)一部の機関と国環研において、ブナのオゾン応答遺伝子の発現解析を行う。
3)低線量の環境放射線の影響評価に使用できるマーカーの調査、使用する遺伝子の選定など診断手法の改良を行う。全ゲノム解析も引き続き行う。

外部との連携

埼玉県環境科学国際センター(代表)
福島県環境創造センター
神奈川県環境科学センター
福岡県保健環境研究所
大分県衛生環境研究センター
名古屋市環境科学調査センター(オブザーバー)
新潟県新発田地域振興局健康福祉環境部環境センター(オブザーバー)

課題代表者

青野 光子

  • 生物多様性領域
  • 副領域長
  • 博士(理学)
  • 生物学,生理学,生化学
portrait

担当者