- 予算区分
- AM エコチル調査
- 研究課題コード
- 1620AU002
- 開始/終了年度
- 2011~2032年
- キーワード(日本語)
- 健康影響,出生コホート,曝露評価,バイオモニタリング,環境疫学
- キーワード(英語)
- health effects, birth cohort, exposure assessment, biomonitoring, environmental epidemiology
研究概要
2010年3月、環境省は「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」基本計画を作成し、国立環境研究所をコアセンターとして、エコチル調査が開始されることとなった。エコチル調査は、環境要因が子どもの健康に与える影響を明らかにすること、特に化学物質の曝露や生活環境が、胎児期から小児期にわたる子どもの健康にどのような影響を与えているのかについて明らかにし、化学物質等の適切なリスク管理体制の構築につなげることを目的とする。
研究の性格
- 主たるもの:行政支援調査・研究
- 従たるもの:
全体計画
エコチル調査は、国立環境研究所がコアセンターとして研究全体を取りまとめ、国立成育医療研究センターが医学に関する専門的知見を有するメディカルサポートセンターとしてこれを支援する。コアセンター及びメディカルサポートセンターは、公募により決定された全国15のユニットセンターと協働して本研究を実施する。ユニットセンターは、単一又は複数の大学等の研究機関によって構成され、各地区でリクルートやフォローアップを担当する。ユニットセンターはそれぞれ行政単位からなる調査地区を、出生数・地域代表性・化学物質曝露レベルなどを考慮して設定する。
エコチル調査では、調査地区に居住する妊婦をリクルートの対象者として、全国で10万人の子ども及びその両親についてのコホート調査を実施する。リクルートは2011年1月から3年間実施する。フォローアップは子どもが13歳に達するまで実施する。すべての対象者(子ども)が13歳に達した後、5年間のデータ解析期間を含めた2032年度までを全体の調査期間とする。実施する調査は、すべてのユニットセンターの調査対象者全員を対象として全国統一の内容で実施する全体調査、リクルート開始2年目以降の全体調査対象者の中から無作為に抽出した約5千人を対象としてより詳細な内容で実施する詳細調査、ユニットセンター等が独自の計画、予算に基づいて、環境省の承認を受けて、調査対象者の一部又は全部を対象として実施する追加調査の3つがある。全体調査及び詳細調査では、参加者(母親)については血液・尿・毛髪ならびに母乳の採取、分娩時には臍帯血の採取、参加者の子どもについては血液・毛髪・尿の採取、参加者(父親)から血液の採取を行い、各生体試料中の化学物質等の濃度を測定することにより、化学物質への曝露評価やアレルギー等の指標物質の測定、仮説で示される環境要因とアウトカムとの関連性に係わる遺伝子の解析を行う。また、質問票調査や面接調査等によって、曝露評価やアウトカム評価および関連要因の評価を行う。
今年度の研究概要
引き続き調査全体の総括的な管理・運営のために、全体調査及び詳細調査の企画・立案、調査手法の整備、生体試料保管・管理等を進める。収集されたデータの整備や解析方法の検討、データ管理システムの運営に当たる。曝露評価については、手法開発や生体試料中化学物質分析の分析手法開発及び精度管理を行う。さらに、成果発表の発信を促進するとともに、参加者やステークホルダーとのコミュニケーションを図る。
長期のコホート研究において調査継続率を高水準に保つことは、データの質に直結することであり、そのための参加者コミュニケーション活動を重視してきたが、今後も参加者の成長や家庭環境の変化などを考慮しながら、その取り組みについても環境変化に対応していかなければならないと考えている。コアセンター・環境省が戦略的な取り組みの方針を示すとともに、各ユニットセンターの地域での取り組みをサポートして、全体活動の調整を担っていく必要がある。
成果の発信については、学術研究としての質を高める取り組みをさらに進めるとともに、わかりやすく成果を説明するためのリスクコミュニケーションの取り組みを強化していかなければならない。
調査参加者の子どもうち約1万5千人が小学校に入学しており、学童期はエコチル調査の重要なアウトカムの一つである成長発達にとって重要な時期に入るとともに、調査実施上も時間的な制約などさまざまな制約が加わることになる。これまでも重視してきた各ユニットセンターにおける地域との連携を教育関係にも広げてより強化する必要があると考えられ、環境省とともに国レベルでの行政機関間の連携を強化して、地域連携をサポートする必要がある。
大規模研究事業は長期的な見通しに基づく計画に従った実施が求められるため、研究の柔軟性が乏しくなる側面があることは否定できない。この点については、ユニットセンター等が独自のアイディアで実施可能な追加調査やパイロット調査の枠組みを活用して、安定的な本体調査の継続と両立させる。
外部との連携
共同研究機関:国立成育医療研究センター、北海道大学、札幌医科大学、旭川医科大学、日本赤十字北海道看護大学、東北大学、福島県立医科大学、千葉大学、横浜市立大学、山梨大学、信州大学、富山大学、名古屋市立大学、京都大学、同志社大学、大阪大学、大阪府立母子保健総合医療センター、兵庫医科大学、鳥取大学、高知大学、産業医科大学、九州大学、熊本大学、宮崎大学、琉球大学