- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1719CD034
- 開始/終了年度
- 2017~2019年
- キーワード(日本語)
- 複合影響,遺伝子発現解析,ミジンコ
- キーワード(英語)
- Mixture toxicity, Gene expression analysis, Daphnid
研究概要
水環境中の多種多様な化学物質は水生生物に対して相乗的な複合影響を及ぼすことが懸念されているが、すべての組み合わせを生態影響試験に供することはできない。効率的な評価を行うためには、化学物質の作用機序に基づき、複合影響の作用メカニズムを理解する必要があるが、無脊椎動物であるミジンコに関する情報は限られている。そこで本研究では、近年発展が著しい網羅的遺伝子発現解析(次世代シーケンサーやマイクロアレイ)やバイオインフォマティクス手法を活用することで、ミジンコ繁殖影響に対して相乗作用を示す化学物質の組み合わせ(金属と多環芳香族炭化水素(PAHs)等)による、複合影響の作用メカニズムの解明を行う。さらに、相乗作用時に特異的な発現遺伝子やその反応経路を明らかにすることで、同様のメカニズムにより優先評価が必要な化学物質群を推定する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
1年目は相乗作用が既知または作用機序から相乗作用が懸念される2種の化学物質(候補:金属類とPAHs)を組み合わせてミジンコ繁殖試験を実施し、複数の濃度比におけるEC50および単独物質のEC50を算出する。得られたEC50から等効果線法によって相乗作用が最大となる条件を求める。ミジンコ繫殖試験として短期間(1週間程度)かつ小規模で試験が実施でき、排水や環境水の影響評価に国内外で使用されているニセネコゼミジンコ繁殖試験を用いる。
相乗作用を示す条件が明らかになったら、対照区、相乗作用が最大時の物質A+B複合曝露、その時の物質A、物質B単独曝露後のミジンコからTotal RNAを抽出・精製し、ライブラリを調製した後、RNA-Seqに供して網羅的に発現遺伝子情報を得る。得られた遺伝子配列情報から相同検索による機能予測・アノテーションの付与を行うとともに、KEGGのPathway解析やGO解析、GALGO解析などのバイオインフォマティクス手法により解析し、相乗作用時に特異的に発現している遺伝子やその機能、関与している代謝などのPathwayについて推定する。
2年目は引き続き、遺伝子発現解析を行うとともに、バイオインフォマティクス手法により推定した特異的発現遺伝子やPathwayの検証を行うために、リアルタイムPCRを用いて、様々な条件下で複合曝露した際の遺伝子発現解析を行い、推定した作用メカニズムの検証を行う。このとき、PAHsや金属類の代謝に係わるERODやメタロチオネインなどの酵素活性測定も実施し、遺伝子発現だけでなく、酵素レベルの応答が起きていることを確認する。
3年目は、推定した特異的発現遺伝子やそのPathwayに関与することが懸念される別の化学物質群を用いて、同様に相乗作用が示されるか検証を行う。さらに可能であれば、作用機序が不明で相乗作用または相殺作用のある別の化学物質の組み合わせについても、確立したアプローチによって複合影響メカニズムの解明が可能かどうか検証を行う。
今年度の研究概要
昨年度に引き続き、作用機序から相乗作用が懸念される2種の化学物質(候補:金属類とPAHs、医薬品と農薬)を組み合わせてミジンコ繁殖試験を実施し、等効果線法によって相乗作用が最大となる条件を求める。相乗作用を示す条件が明らかになったら、対照区、相乗作用が最大時の物質A+B複合曝露、その時の物質A、物質B単独曝露後のミジンコからTotal RNAを抽出・精製し、RNA-Seqに供して網羅的に発現遺伝子情報を得る。さらに、相同検索による機能予測・アノテーションの付与を行う。得られた遺伝子発現情報をKEGGのPathway 解析やGO解析、GALGO解析などのバイオインフォマティクス手法により解析し、相乗作用時に特異的に発現している遺伝子やその機能、関与している代謝などのPathwayについて推定する。
課題代表者
渡部 春奈
- 環境リスク・健康領域
生態毒性研究室 - 主任研究員
- 工学博士
- 土木工学,生物学,化学