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環境保全型農業促進補助金の効果に関する実証研究(平成 30年度)
Empirical study on the effect of agricultural subsidies to promote environmental conservation

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1821CD003
開始/終了年度
2018~2021年
キーワード(日本語)
環境保全型農業
キーワード(英語)
Environmentally-Friendly Farming

研究概要

日本政府が促進している環境保全型農業は、(a)化学肥料の使用の抑制、(b)化学合成農薬の使用の抑制、(c)堆肥を用いた土作り、(d)カバークロップによる土壌流出の抑制の4つの目標の達成を目指している。特に補助金を用いた環境保全型農業促進政策は、国と地方自治体のそれぞれにおいて積極的に進められている。この状況の下で、我々は「環境保全型農業促進補助金は、これまでにどの程度農家の意思決定に影響し、促進効果を得たのか」という問いを得た。本研究は以下の3つの目的を達成し、上記の問いに答える。まず、日本に2011年より導入された環境保全型農業直接支払交付金と2011年以前より開始している各地方自治体による補助金が、?農家の環境保全型農業の採用インセンティブにどの程度の効果があり、さらに?その効果に持続性がどの程度あるのかについて実証的に明らかにする。環境保全型農業には上記の(a)から(d)を部分的に達成する「エコ農業」と(a)から (d)を100%達成する「有機農業」が存在する。そこで、?上記の補助金政策が持続的に農家のエコ農業への農業様式転換と有機農業への農業様式転換をそれぞれどの程度促したのかについて明らかにする。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

目的?:環境保全型農業促進補助金は、農家の環境保全型農業開始の意思決定に対し、実質的にどの程度影響をしたのかについて明らかにする。補助金申請時の農家には4タイプがある。まず(1)慣行型農業を行っている農家である。次に(2)補助金の交付要件(化学肥料・化学合成農薬使用量が慣行水準の50%以下であり、土壌作り対策を行っている)を満たしてはいないが、既にエコ農業を行っている農家である(環境保全型農業には保全が部分的な「エコ農業」と100%達成する「有機農業」が存在する)。例えば化学肥料は無使用であるが、化学合成農薬使用量は慣行水準であるような農家がこれに当たる。さらに(3)既に補助金の交付要件を満たすエコ農業を行っている農家、(4)既に有機農業を行っている農家である。目的?は、(1)と(2)のタイプの農家が、補助金が交付されることにより、交付要件を満たす水準の保全型農業を行うようになった効果を捉えることである
目的?:補助金の効果が交付期間後にもどの程度持続したのかを明らかにする(補助金の異時点間スピルオーバー効果)。交付期間中には、農家は補助金申請時に提出した計画書に従い、保全型農業を継続することが義務付けられる。補助金の契約は、交付期間後の農業様式を制限していないが、交付期間後の農家の農業様式選択の意思決定にも影響する可能性がある。慣行型農業によって低下した土壌の質は補助金交付期間中の土作り対策により改善され、農地の土地生産性が上昇する。補助金申請時に土地生産性の改善を期待していた農家や、保全型農業の難しさを経験した農家は、交付期間後に再び慣行型農業に再転換する可能性がある。この場合、補助金の効果は交付期間後に持続しない。一方、保全型農業の経験が農家の農業様式に関する選好に影響し、農家が保全型農業を行うことに意義を感じる場合がある。この場合には、農家は保全型農業を継続するため、補助金の効果は交付期間後にも持続する。
目的?:補助金政策が持続的に農家のエコ農業への農業様式転換と有機農業への農業様式転換をそれぞれどの程度促したのかについて明らかにする。保全型農業の実施の程度には化学肥料や化学合成農薬の利用をゼロにし、堆肥の利用や土壌流出抑制対策を行う有機農業と、これらについて部分的に達成するエコ農業がある。補助金の効果の持続性を評価するには、交付期間終了後に保全農業が行われている農地面積の変化(保全の外延)だけではなく、各農地における環境保全対策が実施された程度(保全の内延)の変化も評価する必要がある。目的?は、補助金の「保全の外延」への影響の程度を捉えることができる一方、目的?は補助金の「保全の内延」への影響の程度を捉える。これにより、補助金の、交付期間後に農家の農業様式転換に与える影響を捉えることができる。

今年度の研究概要

2018年度は、日本全国で実施されている環境保全型農業促進制度について調査を行い、比較評価を行う。また、保全型農業に関する統計分析を行うためのデータを収集する。

外部との連携

本課題の代表者は、堀江哲也氏(上智大学経済学部准教授)である。

課題代表者

岡川 梓

  • 社会環境システム研究センター
    統合環境経済研究室
  • 主任研究員
  • 博士(経済学)
  • 経済学
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