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東南アジア熱帯林における高解像度3次元モニタリングによる生物多様性・機能的多様性の評価手法の開発
(平成 30年度)
Development of methodology for species and functional diversity assessment in Southeast Asian tropical forests using by high-resolution 3D monitoring technique

予算区分
AO 所内公募A
研究課題コード
1618AO002
開始/終了年度
2016~2018年
キーワード(日本語)
熱帯林,3次元,多様性
キーワード(英語)
tropical forest, 3D, diversity

研究概要

本研究は、気候変動がもたらす熱帯林生態系への影響の解明を大きな目的として掲げ、気候の影響を大きく受けると予測される、(1)大気圏と相互作用をもつ森林生態系機能プロセス、(2)森林・林冠構造の複雑性、(3)哺乳類の種多様性の動態や変化について、UAV(ドローン)などの新しい手法を活用して広域・長期的・高解像度でモニタリング可能な手法を開発する。最終的には(1)-(3)をつなぐことで、熱帯林の生物多様性・生態系機能の統合的な評価法を検討する。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

本研究ではサブテーマを三つ設ける。研究拠点は、マレーシア・パソ保護林とする。また、可能な範囲でボルネオ島でもパソで開発した技術の有効性の検証と応用研究を行い、東南アジア全域への展開の足掛かりとする。本研究によって東南アジア熱帯林全域に適用できる汎用性の高い手法が開発できると期待される。

サブテーマ1:生物起源揮発性有機化合物を含む植物生理機能の多様性評価手法の開発(担当:斉藤、唐、冨松)
多様な微環境に応じた植物の機能特性から、熱帯林内の生物多様性を表す汎用性ある指標を開発することを目的とする。熱帯原生林内に複数の計測拠点を設け、植物の生理機能特性と微環境を計測する。対象とする植物生理機能としては、BVOC放出、ガス交換能、窒素含有量、形態特性、フェノロジー等とし、これら植物生理機能間、および生理機能と微環境との関連性を解析する。これにより、微環境の不均一性がもたらす植物機能多様性の評価手法を開発する。これら植物生理機能特性に基づいた多様性評価手法によって、環境変化や気候変動に対する多様性変化や安定性などを植物生理機能に基づいて予測する事が可能となる。
サブテーマ2:低高度リモセン技術を用いた林冠3D構造の復元手法と生物多様性指標の開発(担当:竹内、三枝、林、平春)
熱帯地域における生物多様性の広域評価に向け、森林構造モデルの検証とこのモデルに基づいた生物多様性に関連した林冠の複雑性を表す指標を開発することを目的とする。マレーシア熱帯原生林や二次林を上空からUAVで撮影し、複数の画像から対象物の3D形状を復元する Structure from Motion 技術に基づき林冠3D構造モデルを生成する。そこから林冠表面の複雑性を示す指標を開発する。森林構造モデルで予測される林冠構造と種多様性の関係を検証した上で、種多様性に関連した林冠の複雑性を表す指標を開発することを目指す。最終的には、衛星データを用いて開発した手法の応用を試みる。また、林冠状態と林床環境・機能との関係(サブテーマ1と連帯)、植生、林冠状態と動物の分布の関係性(サブテーマ3と連帯)についても明らかにする。
サブテーマ3:メタバーコーディング技術を応用した陸上動物の多様性評価手法の開発(担当:大沼)
2015年に魚の糞などとともに水中に放出されたDNAを解析し、そこに生息する魚の種類を判定する技術が開発された。この技術を熱帯林内で採取した雨水や河川水に応用する。熱帯林内で採取したこれらの水には分布する動物の糞、尿、皮膚組織等が含まれていることが期待される。これによって、林内で雨水等をサンプルすることで時間的、空間的に生活様式を特殊化した熱帯林の哺乳類相を把握できるようになると期待される。また、既存手法(カメラトラップ、蚊やヒルが吸血した血液から抽出したDNAを利用した種判別等)も並行して行い、メタバーコーディング技術の有効性を評価する。

今年度の研究概要

サブテーマ1:野外調査を継続して実施するとともに、植物生理機能間の関連性や植物生理機能と微環境の関連性を解析する。これにより、BVOC(特に生物間相互作用に関わる高沸点成分)の放出パターンと植物形質との関係性を明らかにし、更に林内の微環境不均一性から植物機能の複雑性と生物多様性を表す指標を開発する。
サブテーマ2:森林構造モデルの検証とモデルに基づいた種多様性指標の検討を行う。これまでのデータから林冠3D構造の複雑性を示す指標と種多様性の関係を統計的に解析し、森林構造モデルを検証する。このモデルに基づき種多様性の状態を予測する林冠構造指標を検討する。
サブテーマ3:パソ保護林内で採取した雨水、河川水からメタバーコーディング技術で得られた野生動物の分布情報とカメラトラップ、吸血蚊から得られた分布情報を照合し、雨水、河川水を野生動物の分布調査に利用できるのか評価する。

外部との連携

Forest Research Institute Malaysia(FRIM)

課題代表者

大沼 学

  • 生物多様性領域
    生態リスク評価・対策研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(獣医学)
  • 獣医学,生物学
portrait

担当者