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雲の対流圏調節の不確実性と瞬時放射強制力(平成 30年度)
Uncertainty in tropospheric cloud adjustment and instantaneous radiative forcing

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1719CD016
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
地球温暖化
キーワード(英語)
Global warming

研究概要

温室効果気体の増加に伴う気候変化を全球気候モデル(Global Climate Model, GCM)で予測する際に問題となるのは、CO2倍増に対する地表面気温の平衡応答または過渡的応答の推定値がGCM間で大きく異なることである。このことが、地球温暖化の社会・経済的影響を評価する上で大きな不確実性をもたらしている。GCM間で気温の応答に違いが生ずる主な要因は雲フィードバックの違いであるが、雲の対流圏調節の違いも無視できないほどの寄与を示す。雲の対流圏調節とは、CO2増加がもたらす放射加熱(瞬時放射強制力)により、地表面気温が応答する前に対流圏の雲が変化する現象である。こうした雲の変化が大気上端の放射を通して地表面気温に影響することがGCMのシミュレーション結果から知られている。本研究の目標は、複数のGCMを用いた大気中CO2増加シミュレーションにおいて、雲の応答のモデル間のばらつきのうちどの程度が瞬時放射強制力のばらつきに由来するものか、数値実験を通して明らかにすることである。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

研究1年目は、複数のGCMでCO2増加シミュレーションを実施し、瞬時放射強制力と雲の対流圏調節に関連した出力データを収集して国環研のデータサーバに保存する。また、上記で取得したデータを用いて雲の対流圏調節を定量化し、対流圏調節が大気上端の放射を通して地表面気温の上昇幅にどの程度影響しているかを推定する。研究2年目は、大気GCMを用いた数値実験を新たに実施して出力データを解析することにより、瞬時放射強制力のモデル間のばらつきが雲および大気上端放射にどの程度のばらつきを生じさせるかを定量化する。研究3年目は、雲の対流圏調節によって生じる大気上端放射と地表面気温の変化について、モデル間のばらつきのうちどの程度を瞬時放射強制力のばらつきで説明できるかを検討する。最後に、これまで得られた知見を取りまとめて学会等で報告する。

今年度の研究概要

今年度は、当初の計画に従い、気候モデルMIROC3に外部境界条件の熱源を与えて気候変化をシミュレートした結果を解析する。これは、昨年度に降水変化に注目して開始した解析を引き続き実施するものであり、今年度は雲と大気上端放射の変化に注目して解析する。具体的には、5つの気候モデルから得られた5種類の熱源によって生じる気候変化を相互に比較する。こうした比較により、瞬時放射強制力に起因する雲と大気上端放射の変化のばらつきを定量化する。また、大気上端放射の変化のばらつきにより地表面気温にどの程度のばらつきが生ずるかを見積もる。

課題代表者

小倉 知夫

  • 地球システム領域
    気候モデリング・解析研究室
  • 室長(研究)
  • 理学博士
  • 物理学,コンピュータ科学,地学
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