- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1620CD001
- 開始/終了年度
- 2016~2020年
- キーワード(日本語)
- 健康影響,サプライチェーン
- キーワード(英語)
- health impact,supply chain
研究概要
大気汚染による早期死亡者数は約700 万人にも達し,社会経済動向がこのまま推移した場合,2050年には大気汚染が早期死亡をもたらす最大のリスク要因である。本研究では,アジアのバリューチェーンを対象とし,その中で発生する一次および二次粒子のPM2.5 が引き起こす健康被害は,アジアの如何なる産業がどのような生産活動の連鎖によって引き起こされているかを綿密に解析し,PM2.5 による健康被害の発生メカニズムを経済システム分析と大気質モデル解析の融合により全容解明を達成する。そして,アジアバリューチェーンにおけるどの排出削減対策を健康被害の減少に向けて最も優先すべきかをその定量的効果と共に最終的に明らかにし,将来のアジアの温暖化対策の推進がもたらすPM2.5 由来の健康被害軽減に関するコベネフィットを定量化する。
研究の性格
- 主たるもの:政策研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
インドと東アジア諸国におけるバリューチェーンをシステム境界とするPM2.5 分析用多地域間産業連関モデル(MRIO)を開発し,一次粒子と二次粒子前駆物質のサテライト勘定表を整備する。MRIO により国別,部門別,前駆物質別に導出するバリューチェーン内での各排出量を健康被害量に容易に変換するためのソース・レセプター関係(SRR)行列を整備する。気象モデルで気象場,大気質モデルでPM2.5 を含む汚染物質濃度を計算し,曝露人口と疫学資料から排出量と健康被害量との関係を係数化する。アジア各国の経済需要と健康被害との関係を解析する手法を考案し,改善を優先すべき最重要チェーン(経路)を同定する。完成したMRIO を活用し,アジアのGHG削減目標を達成することの健康被害量低減から見たコベネフィットを定量的に解析する。
今年度の研究概要
アジア各国のPM2.5の一次粒子および二次粒子の前駆物質に関する発生源別インベントリの精度を向上させる。それに対応したPM2.5の濃度マップデータの整備を進展させ,アジアのバリューチェーンを表現する多地域間産業連関モデルとの接続を深化させる。濃度マップデータを基に曝露人口分布と年齢構成等から健康被害量を算定する方法論を確立し,加えて被害量から経済的損出額の推計を試行する。それらをソース・レセプター関係(SRR)行列に加え,各国の最終需要と被害国との間に存在する重要なサプライチェーンの同定を行う。アジアの中でも発生量も被害量も大きい中国については新たに省別の算定を実施し,産業連関モデルの中で中国を一つとして扱う場合の不確実性について検討を開始する。濃度マップデータの整備と健康被害量の算定について計算負荷が高いため,簡略化の検討や計算アルゴリズムの見直しを適宜行う。
外部との連携
京都大学、九州大学、信州大学、早稲田大学