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魚類慢性毒性予測手法の提案:化学物質構造や他生物の毒性値データの活用(平成 30年度)
Development of Chronic Fish Toxicity Models Based on an Interspecies Relationship and Molecular Descriptors

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1719CD004
開始/終了年度
2017~2019年
キーワード(日本語)
生態毒性予測,有害化学物質,魚類毒性,慢性影響,構造活性相関,定量的構造活性活性相関
キーワード(英語)
eco-toxicity prediction,hazardous chemical substance,fish toxicity,chronic effect,structure-activity relationship,QSAAR

研究概要

生態系への影響が懸念される化学物質の有害性を評価し、環境汚染を防ぐことは重要である。定量的構造活性相関(QSAR)を活用すれば、時間と費用を抑えて化学物質の有害性を評価することができる。また、既存のQSARの概念を発展させた化学物質の毒性値から別の毒性値を予測する定量的構造活性-活性相関(QSAAR)手法では、毒性予測能が向上する結果が得られている。
本申請では、動物愛護の観点から試験の削減が進んでいる脊椎動物(魚類)の慢性毒性値を無脊椎動物の毒性値から予測するQSAARモデルを開発し、モデルの適用範囲を明確化する。そして、魚類慢性毒性を決定する要因やこのモデルでは慢性影響を評価できない物質の化学的な特徴を明らかにする。得られた成果は、化学物質の有害性評価の効率化に貢献することが期待される。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

最初に、魚類初期生活段階毒性試験で得られる慢性毒性値を予測するQSAARモデルを提案する。他生物の毒性値、構造情報、物理化学的性状等を説明変数として魚類慢性毒性の知見を得る。説明変数に基づく情報からモデル適用範囲を示す。次に、更に広範なモデル適用範囲の定義手法の構築を行う。内分泌かく乱作用物質や農医薬品には特徴的な慢性毒性を持つことが知られており、開発したQSAARモデルによる毒性評価は不適切である。そこで、化学物質の説明変数となる観測量を用いて、内分泌かく乱作用物質と農医薬品の相似性を定義し、QSAAR モデル適用範囲を判断するフローチャートを作成する。得られた情報からQSAAR モデル適用範囲外物質の化学的な特徴を解明する。

今年度の研究概要

平成29年度に構築した魚類ファットヘッドミノーELSの無影響濃度予測するQSAARモデルを環境省が実施したELSデータセット(36物質)で検証する。モデル構築に使用したELSデータは77物質であり、うち67物質は米国環境保護庁のPesticide Assessment Guidelinesに基づき、特定の要件でELS試験が要求された農薬での試験結果に該当する。一方、環境省の36物質のELSデータは一般工業化学物質を主としており、化学物質群の特徴が異なる。そのため、昨年度構築を試みたQSAARモデルのうち、リンや硫黄、塩素原子の個数・有無といった説明変数の必要性について個別に検証し、農薬の毒性を特徴づける記述子や一般化学物質の予測では重要にならない記述子を精査する。また、農薬のように特殊作用をもつデータ群で構築したQSAARモデルを化学物質審査規制法などで対象となる一般化学物質に適用する際にどのような手順が必要になるのかを提案する。その上で、QSAARモデル適用範囲を判断するフローチャートを作成する。また、他の魚種のデータセットが、構築したQSAARモデルでどのような予測結果と傾向を示すのかを検証し、魚種依存性を明らかにする。

備考

連携研究者:林岳彦、山本裕史(環境リスク・健康研究センター)

課題代表者

古濱 彩子