- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1719CD002
- 開始/終了年度
- 2017~2019年
- キーワード(日本語)
- 食性,生活史初期,ペプチド核酸,甲殻類,底棲魚介類,東京湾,次世代シーケンス
- キーワード(英語)
- feeding habit, early life stage, peptide nucleic acid, crustacean, benthos, Tokyo Bay, next generation sequencing
研究概要
東京湾の底棲魚介類の資源量は近年低水準で推移しており、漁業管理策も奏功せず回復の兆しがみられない。資源回復を図るためには、漁獲圧以外の減耗要因を明らかにする必要がある。本研究は、東京湾の優占種で、資源量減少の著しいシャコを対象として、生活史初期の生残に影響する因子を解明する。特に、生活史初期の餌料条件および環境因子(水温、溶存酸素濃度)に着目する。従来困難であったシャコの生活史初期個体の食性を分子生物学的に解析する手法の開発を行う。野外調査により採集した生活史初期個体の食性を明らかにする。餌生物の種組成、密度を調査するとともに、水温、溶存酸素濃度などの環境因子も併せて統計解析を行い、各因子がシャコ生活史初期個体の生残に及ぼす寄与を推定する。得られた結果を総括し、餌料環境がシャコの生活史初期における生残に及ぼす影響を推察する。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
東京湾の優占種であり、資源減少の著しいシャコを研究対象種として、生活史初期の生残に影響する因子の推定を行う。本研究では特に餌料条件に着目して、生活史初期の生残に及ぼす影響を調査する。従来、技術的に困難とされてきた生活史初期個体の食性を調べるための分子生物学的手法を開発する。東京湾においてシャコ生活史初期個体を採集し、生活史初期における生残率および食性を明らかにする。また、動植物プランクトンおよびマクロベントスの種組成・密度を調査し、水質・底質項目もあわせて、シャコ生活史初期における生残率との関係を解析する。得られた結果から、各因子が生活史初期の生残率に及ぼす影響の寄与について推察する。以上の調査で得た知見を総括し、餌料環境がシャコ生活史初期の生残に及ぼす影響の程度を評価する。
今年度の研究概要
東京湾全域を網羅する定点を設定し、食性解析に供するシャコの生活史初期個体(浮遊幼生、および変態し着底した稚シャコ)をプランクトンネットおよび底曳網により採集する。調査はシャコの浮遊幼生および着底稚シャコが出現する6〜11月に毎月実施する。環境中の餌生物の種組成および豊度を調べるため、採水器により植物プランクトン、プランクトンネットにより動物プランクトン、および採泥器によりマクロベントスを採集する。CTD-DOロガーにより水温、塩分、溶存酸素濃度を測定するとともに、採泥器により底質試料を採取して粒度組成、強熱減量、酸化還元電位を測定し、調査定点の環境状態を把握する。
生活史初期個体(幼生・稚シャコ)の、消化管内容物を摘出する。生活史初期個体の体サイズは微小であり、消化管内容物のみを摘出して試料とすることは困難であるが、可能な限り消化管周辺の体組織(消化管、筋肉、頭胸甲など)を除去して、ゲノムDNAの抽出を行う。抽出したゲノムDNAを鋳型として、ユニバーサルプライマーとPNAプローブを用いたPCRを行い、捕食者の28S rDNA増幅を阻害し、餌生物由来の28S rDNA のみ増幅する。PCR増幅産物についてMiSeq(illumina社)による次世代シーケンス解析を行い、Blast等のwebデータベースを用いて、得られた塩基配列について個別に種まで同定し、種まで同定できない分類群については可能な限り下位の分類階級(属、科、目レベル)での同定を行う。また、環境中のシャコ餌生物として想定される植物・動物プランクトンおよびベントスについて、種同定およびユニバーサルプライマーで増幅される28S rDNAの塩基配列解析を行い、塩基配列をwebデータベース(DDBJやGenBank)に登録することで、シャコの食性解析の精度向上を図る。得られたシャコ消化管内容物の同定結果について、個体別に餌生物の構成種比率を調べ、シャコの生活史初期における食性を推定する。
外部との連携
中央水産研究所と連携して実施。
備考
なし
- 関連する研究課題
課題代表者
児玉 圭太
- 環境リスク・健康領域
生態系影響評価研究室 - 主幹研究員
- 博士(農学)
- 水産学,生物学