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水銀・鉛・ストロンチウム同位体を利用した越境大気汚染調査(平成 28年度)
An investigation of long-range transport of polluted air using Hg, Pb and Sr isotopes

予算区分
KZ その他公募
研究課題コード
1617KZ005
開始/終了年度
2016~2017年
キーワード(日本語)
水銀,同位体,ストロンチウム,鉛
キーワード(英語)
mercury, isotope, strontium, lead

研究概要

 本研究の目的は、大気中水銀の定量および同位体分析に基づく広域汚染の実態を調査し、水銀の発生源の推定や、発生からレセプターまでの化学反応や状態変化(=環境動態)について新たな知見を得ることである。
 経済発展が著しい東・東南アジアからの水銀排出は世界全体の約4割にも達する(UNEP, 2013)。日本は東アジア諸国の風下に位置するため、季節風が卓越する時期における越境汚染が懸念されている。日本海側での大気の同位体比調査は、水銀が大気に排出されてから中・長距離輸送されるまでのプロセスを理解する上で天然の実験室的な役割となる。東西南北に長い列島の日本では、気象条件や気団が影響をもたらす時期が場所によって異なるため、複数地点での調査が重要である。申請者は、沖縄県辺戸岬および石川県能登半島で水銀の広域汚染に関する調査を実施している。それらに加えて、鳥取県三朝町で実施する本研究の調査では、水銀広域汚染研究の精度・確度を高めるために、必要不可欠である。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

?Hg0(g)の定量・同位体比の取得:
(i)捕集:大気中Hg0(g)濃度には一定時期とスパイク状に高濃度になる時期がある。濃度が一定となる時期を「バックグラウンド大気」、スパイク状に高濃度になる時期を「発生源由来の大気」とし、両大気の捕集を試みる。中国大陸から捕集場所へのHg0(g)の到達時間を考慮し、捕集の時間分解能を24時間としHg0(g)の水銀濃度・同位体比を計測する。取扱いの簡便性を考慮し、日本インスツルメンツ社製の水銀捕集管を利用し、エアーサンプラーと接続することでHg0(g)を捕集する。その際、水銀捕集管にHg2+(g)とHg(p)が混入しないよう、プレフィルターを装着する。
(ii)時期・期間:Hg0(g)の濃度変化が現れる時期について重点的に調査を実施する。気団が日々変化することを考慮し、各時期について連続する14日間の調査を行う(以下、aおよびb)。
a. 越境汚染大気調査:北西季節風が卓越する2月〜3月。連続する14日間(試料数:14本)。
b. バックグラウンド大気調査:季節風の影響が低い7月〜9月。3ヶ月のうち、連続する14日間(試料数:14本)。
この際、14日間の現地滞在は時間・コスト面で現実的でないため、自動切替え弁を搭載した捕集装置を利用する。これにより、本研究公募期間後も継続して研究を実施でき、将来予測に向けた定期的モニタリングが可能というメリットがある。申請者は自動捕集装置を設計済みであり、本研究課題の開始直後に作成・使用が可能である。
(iii)定量・同位体分析:(i)で得た試料は、国立環境研究所にて前処理および定量・同位体分析を実施する。分析には、マルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)に、試料の導入系として還元気化装置を接続して行う。

?降水中の鉛・ストロンチウムの定量・同位体比の取得:
(i)捕集:降水の場合、Hg0(g)のように24時間で濃度・同位体比変動を確認するのは困難なため、時間分解能は1ヶ月とする。捕集時期は12月〜8月とし、1ヶ月毎に降水を回収する(試料数:9本)。
(ii)定量・同位体分析:(i)で得た試料は、岡山大学のクリーンルームにて前処理を行う。ストロンチウムの定量・同位体分析には、岡山大学のICP-MSおよび表面電離型質量分析計(TIMS)を用いる。鉛の定量分析には岡山大学のICP-MS、同位体分析には国立環境研究所のMC-ICP-MSを使用する。

?後方流跡線解析:捕集した大気の気団の流れを把握するため、NOAA HYSPLIT Back Trajectoryモデルを用いて解析を行う。

今年度の研究概要

全体計画のうち、?および?を実施する。

外部との連携

千葉 仁(岡山大学大学院自然科学研究科、教授)
山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科、准教授)
阿久津 好明(東京大学大学院新領域創成科学研究科、准教授)

関連する研究課題

課題代表者

山川 茜

  • 環境リスク・健康領域
    環境標準研究室
  • 主任研究員
  • 理学博士
  • 地学
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