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久米島ハマサンゴを指標とした海洋汚染の歴史的変換調査(平成 28年度)
Investigation of time-series marine pollution recorded in Porites australiensis at Kume Island

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1415AQ005
開始/終了年度
2014~2017年
キーワード(日本語)
海洋汚染,赤土,サンゴ,重金属元素,同位体
キーワード(英語)
marine pollution,ed soil,coral,heavy metal elements,isotopes

研究概要

自然豊かな久米島では、河川や海洋への「赤土汚染」が大きな問題になっている。赤土には、除草剤や農薬が含まれていることが多く、例えば除草剤として使用されているジウロンは、サンゴ礁の共生藻に働いて白化や成長阻害を引き起こすと考えられている。その他、サンゴ礁の生育環境の悪化原因として、海水温上昇によるサンゴ礁の白化現象のような全球的な環境変化も大きな要因と考えられているが、赤土等の影響を受けたサンゴ礁は、高水温による影響への抵抗力や回復力が低いと報告されている(本郷・山野、2013年)。
本研究では、久米島のサンゴ生息域での赤土等の影響を把握するため、ハマサンゴの骨格年輪を化学分析を実施することで、赤土等による影響を定性・定量的に理解し、サンゴ礁の環境悪化過程を復元することを目標としている。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

1)河川水の流入調査
赤土は河川を通じてサンゴ礁生息領域に流入するため、河川水流入の指標となるBa/Ca比を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)で求める。
2)土壌起源物質の流入調査
陸上の土壌由来のフミン酸がサンゴ骨格内に取り込まれることで、骨格中の蛍光強度が大きくなると考えられている。このことより、土壌起源物質の輸送量を見積もるために蛍光分析を実施する。
サンゴ礁生態系は貧栄養の水環境下で良好に保たれているが,陸域からの生活排水や化学肥料など栄養塩の過剰流出が,サンゴ礁生態系に悪影響を及ぼすと考えられている。サトウキビ畑やパイナップル畑で使用されている肥料には、栄養塩である窒素やリン酸、カリウム等が含まれていることから、栄養塩を含む赤土等の流入の指標としてCd/Ca比およびリンの濃度をICP-MSで求める。
3)海水温の変化調査
1998年の世界的なサンゴ礁の白化現象で示された通り、サンゴは高水温に対する抵抗力が低い。サンゴ骨格中のSr/Ca比やMg/Ca比は、骨格形成時の海水温の指標になるため、海水温の上昇によるサンゴへの影響を調べるために両元素比をICP-MSで求める。
4)その他(重金属元素の流入調査)
人間活動により放出され、サンゴ骨格に取り込まれるものとして、鉛がある。鉛は、有鉛ガソリンの使用や石炭燃焼、また、鉱山の採掘など主に工業化に伴って放出されることが知られており、国内外からの放出履歴がサンゴ骨格中の鉛濃度や鉛同位体比の変化によって調べられている(Inoue and Tanimizu, 2008)。その他、船底塗料に含まれるスズやカドミウム等の重金属元素も人間活動による放出物であり、サンゴ骨格中に記録されている。これらの混入物は、サンゴを死滅させるほどの影響はないが、久米島ならびに久米島周辺の人間活動を追跡する上で非常に有効である。本研究では、鉛や船底塗料の経年的な影響をマルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)およびICP-MSにて分析する。

今年度の研究概要

2016年度の実施内容は以下の通り。
(5) 年輪に沿った試料の切出し、粉砕
(6) ICP-MSおよびICP-AESを用いたハマサンゴ骨格の化学組成分析(Ba/Ca, 重金属元素)
(7) データ解析・まとめ

課題代表者

山川 茜

  • 環境リスク・健康領域
    環境標準研究室
  • 主任研究員
  • 理学博士
  • 地学
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担当者