- 予算区分
- BA 環境-推進費(委託費) S-14
- 研究課題コード
- 1418BA003
- 開始/終了年度
- 2015~2019年
- キーワード(日本語)
- 地球温暖化,緩和策,適応策
- キーワード(英語)
- global warming, mitigation, adaptation
研究概要
気候変動の緩和策と適応策の統合的戦略を立てるにあたり、水資源は両者と密接に関わる要素である。水は社会に欠かせない資源であり、緩和策の中にも水を大量に消費するものが含まれている。一方で温暖化の影響によって将来の気候が変化し、安定的に得られる水資源量は減少すると予測されており、悪影響回避のために必要な緩和策や適応策が議論されている。気候政策や持続可能社会への転換政策の検討にあたり、水資源を考慮することは極めて重要である。
世界の社会・経済・温室効果ガス排出および地球の水循環・水利用を定量的に評価するための道具として、それぞれ応用一般均衡モデルと全球水資源モデルがある。これまで緩和策の検討には応用一般均衡モデルを中心とする統合評価モデルが利用されてきたが、多くの場合、水資源の制約は考慮されていなかった。また、世界の水資源への影響評価と適応策の検討には全球水資源モデルが利用されてきたが、社会・経済の扱いが弱いという問題があった。
本研究は世界で最も詳細に人間の水利用が扱える全球水資源モデルの一つであるH08と、同じく最も包括的に世界の社会・経済変化と気候政策を扱える応用一般均衡モデルの一つであるAIM/CGEを連動させるための理論的・技術的基盤を確立し、社会・経済・温室効果ガス排出の変化および水資源・水利用の変化を、相互作用させつつ整合的にシミュレーションすることを目的とする。これにより、水不足問題を回避した統合的な緩和策と適応策を評価・分析することが可能になる。適応策・緩和策・水資源の複合問題は世界的に関心の高いテーマであり、得られた知見はIPCC報告書等、世界に向けて発信する。なお、本研究は水資源に注目するが、研究の骨格は他の分野にも応用できると考えられる。
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
本研究は将来の社会・経済・温室効果ガス排出の変化および水資源・水利用の変化を整合的にシミュレーションするため、応用一般均衡モデルと全球水資源モデルを連動させる理論的・技術的基盤を確立する。これにより、水不足問題を回避した統合的な緩和策と適応策を評価・分析し、気候政策と持続可能社会への転換政策の検討に貢献する。
本研究は将来の社会・経済の変化と密接に関わる、発電用水、製造・生活用水、農業用水、環境用水の4つの水利用に着目する。まず、発電用水については、温暖化により水循環が変化し、水力発電の水量が減少すること、また旱魃や低水時に火力発電の冷却用水が不足することが懸念されている。そこで、発電用水需要量推計モデルを開発し、全球水資源モデルH08による将来の河川流量の変化の推計と組み合わせることで、いつ、どこで水不足が起きやすいかを推定する。また、水不足が起きた時の社会・経済への影響を応用一般均衡モデルAIM/CGEを利用して推計する。次に、製造・生活用水については、世界的な人口増加と経済成長に伴って水需要量が増大し、水不足の発生が懸念されている。そこで、AIM/CGEによる将来の産業別の活動量に基づき、水需要量を推計するモデルを開発し、分析を行う。農業用水については、人口増加やバイオマス燃料の生産増加によって農業生産の増加が見込まれることや、気温の上昇や降水量の変動することにより、灌漑用水の需要が増大することが懸念されている。そこで、AIM/CGEとH08を連動させることにより、農業生産と水資源の整合的なシナリオ分析を行い、緩和策と適応策の効果や実現可能性を明らかにする。最後に、環境用水とは自然生態系のために河川に維持すべき流量のことである。社会の環境意識が高まりより多くの環境用水を設定すれば、間接的に人間の水資源量は減少することになる。AIM/CGEによる社会・経済シナリオに整合的な環境用水量を推定し、水資源への影響について分析する。
今年度の研究概要
平成28年度は製造・生活用水および火力発電所の冷却用水に関する水利用に着目し、緩和策と適応策の総合的分析を実施する。
- 関連する研究課題
課題代表者
花崎 直太
- 気候変動適応センター
気候変動影響評価研究室 - 室長(研究)
- 博士(工学)
- 土木工学
担当者
-
ZHOU QIAN