- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1416CD018
- 開始/終了年度
- 2014~2016年
- キーワード(日本語)
- 北極,永久凍土,土壌有機炭素,放射性炭素,温暖化
- キーワード(英語)
- Arctic, Permafrost, Soil organic carbon, Radiocarbon, Globar warming
研究概要
北極高緯度地域における永久凍土融解の進行は温室効果ガスの放出を増加させ、温暖化に対して高い正のフィードバック効果を与えることが強く懸念されている。しかしながら、観測データが極めて少なく、凍土モデルが不完全であることから、現在のフィードバック効果予測は不確実性が高いとIPCC 第5 次報告書は指摘している。本研究では、米国アラスカにて凍土環境が攪乱された後、約70 年間温暖化環境下に曝されてきた永久凍土モニタリングサイトを利用して、その期間の土壌炭素動態及び炭素収支の変化を14C から計測する。今回実測データを得ることで、凍土融解・活動層の拡大と温室効果ガスの放出並びに有機物分解のメカニズムの包括的な理解を進め、温暖化に対するフィードバック効果がどの程度なのか、解を得ることを目指す。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究では、中・長期的な温暖化が凍土融解と土壌有機炭素動態に及ぼす影響を明らかにすること目的に、米国アラスカ州の長期温暖化実験サイト等における土壌コア試料採取を中心に調査研究を行う。約70 年間(1946 年〜現在)にわたる永久凍土融解の進行とそれに付随する土壌環境の変化によって土壌中の炭素収支が変化しているか、土壌試料の放射性炭素同位体14C 分析を利用し評価する。また、土壌試料の物理的分画とその14C 分析から、凍土融解後にどのような炭素の分解が促進されるのか、分解される炭素の起源を明らかにする。加えて、永久凍土から長期間温暖化の影響を受けた土壌の培養実験を実施し、それぞれの土壌の分解活性を評価し、永久凍土融解後、長期間(〜70 年)有機物分解は活性化しつづけるのか検討を行う。
今年度の研究概要
採取した土壌コア試料の分析を継続して行い、温暖区と対照区における土壌炭素蓄積量を評価する。それぞれの区で、土壌炭素収支および平均滞留時間を計算し、温暖化影響後の評価を検討する。また、地上部の植物から土壌への炭素のインプット量を評価するため、夏期に現地調査を実施する。現存する樹木の生長量を概算し、温暖化による植物生産量の変化を検討する。加えて、構築した土壌培養システムおよび採取した土壌コア試料を用いて、土壌培養実験を進める。温暖区と対照区それぞれの土壌試料の培養実験から、異なる温度域(低温から常温まで)におけるCO2フラックス量および温度依存性を示すQ10のデータを得る。
これらのデータを基に、永久凍土の融解とこれに伴う有機物分解の活性化が長期間にわたり起こりうるのか、総合的に検討を行う。
外部との連携
共同研究機関: 岐阜大学、農業環境技術研究所
課題代表者
近藤 美由紀
- 環境リスク・健康領域
計測化学研究室 - 主任研究員
- 博士(農学)
- 化学,生物学,農学