- 予算区分
- AO 所内公募A
- 研究課題コード
- 1517AO002
- 開始/終了年度
- 2015~2017年
- キーワード(日本語)
- 化学物質,ヒト脳,非侵襲,磁気共鳴,発達障害
- キーワード(英語)
- chemicals, human brain, non-invasive, magnetic resonance, developmental disorders
研究概要
【背景】達障害の増加は社会問題の一つとなっている。この原因として遺伝的要因の他に化学物質などの環境要因の疑いがあり、評価法、対策が急務となっている。この化学物質の発達障害への影響評価法として、曝露後の動物行動試験法が用いられている。この評価法では化学物質曝露という能動的な前進型の試験が可能である反面、発達障害に関するヒト脳との差異やヒト脳への外挿などの点で限界が残り、ヒト脳への影響評価に一層近づく手法が望まれている。この一つの方法として現在エコチル調査が進行中であり、年数、労力がかかるものの、幼少期などの血液データと発達障害との疫学調査の成果が待たれるところである。
この一方で、ヒト発達障害の理解も進められ、患者の高次脳機能検査、MR(磁気共鳴)測定などが行われている。特に、非侵襲という特徴を持つMR測定では、脳内代謝物濃度などの客観的な量を測ることができ、非侵襲、定量性、客観性という特徴を有していると言える。課題代表者等は、このMR測定を用いて、広汎性発達障害(現在、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders: ASD)と呼ばれている)患者で、未だ一層の確認が必要であるものの、脳内代謝物と白質が指標候補となり得る可能性を見出してきた。
これらの状況を鑑み、本研究では、化学物質曝露動物の試験法として、環境研が保有する動物用MR装置を利用したMR測定評価法を提案する。この評価法では動物MR測定で、発達障害患者と同様な応答を見出せるかを判定する。この方法の妥当性検討のため、本研究では、発達障害様の行動が現れる小動物、すなわちこれまでに報告されている発達障害小動物モデルを用いることを特徴とする。この評価法によって、前進型試験の化学物質曝露動物試験法とヒト発達障害への影響評価のつながりが強化され、エコチル調査に対する有用な情報が得られると考える。
【目的】ヒト発達障害への影響評価法として、化学物質曝露動物実験、すなわち能動的な前進型試験をベースとした非侵襲MR測定を組み合わせた評価法を提案し、その妥当性を検討することを目的とする。
【達成目標】提案する評価法の妥当性を、発達障害小動物モデルと発達障害患者とで同じMR指標で同様な応答が得られるか否かで検討する。この検討は、ヒト脳との差異を完全に埋めるものではないが、動物モデルで客観性のあるMR指標応答が得られれば、ヒト脳への影響評価に従来法よりも一層近づく期待ができると考える。以上の考えから、次の2項目を今回の研究提案の達成目標とする。
(1)ヒト発達障害に関する非侵襲MR測定での指標(ヒトMR指標と呼ぶこととする)とその応答についての知見を得ること
(2)発達障害小動物モデル(ラット、マウス)で、ヒトMR指標と同様な応答をするか否かを見出すこと
研究の性格
- 主たるもの:応用科学研究
- 従たるもの:基礎科学研究
全体計画
研究概要で記載した目標を達成し目的に到達するため、本研究は、達成目標に対応して、ヒト、小動物の観点から下記2つのサブテーマで構成する。サブテーマ2に関しては、進め易さの観点から2A、2Bの2テーマ体制で推進する。
サブテーマ1:ヒト発達障害に関する探索
サブテーマ2:発達障害小動物モデルに関する探索
2A.MR測定を用いた探索
2B.化学分析を用いた探索
【概略】サブテーマ1のヒト発達障害MR指標とその応答に関しては、患者結果と健常人結果との比較検討、測定、解析の高度化を通して研究を進め、研究概要で記載した目標(1)の達成を目指す。サブテーマ2では、2Aで発達障害ラットモデルなどの非侵襲MR測定を行い、指標とその応答の探索を行う。2Bでは、発達障害ラットモデル、マウスモデルの導入と行動試験によるモデルの洗い出しを行い、化学分析などを用いて指標応答を探索する。(2Bで洗い出したモデルを2Aで用いる。)2A、2Bにより目標(2)の達成を目指す。
今年度の研究概要
サブテーマ1:ヒト発達障害に関する探索
白質データの詳細解析を目指してヒト脳内の部位体積解析法を開発し、ASDでの白質変化が特異的に生じている部位の検出評価を進める。ヒト脳1HMRS測定のボランティア測定プロトコル取組を行い、ベースラインデータ取得のための健常人ボランティア測定を進める。
サブテーマ2:発達障害小動物モデルに関する探索
動物用MR測定法を開発する。発達障害小動物モデルを導入し、ラット行動試験法を導入する。
課題代表者
渡邉 英宏
- 企画部
- フェロー
- 工学博士(物理工学)
- 物理学,工学,医学
担当者
-
TIN-TIN-WIN-SHWE環境リスク・健康領域