- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1317CD002
- 開始/終了年度
- 2013~2017年
- キーワード(日本語)
- データ同化,ライダー,エアロゾル,ラマン散乱ライダー
- キーワード(英語)
- data assimilation, lidar, aerosol, Raman scattering lidar
研究概要
アジア域の主要な大気汚染物質の発生源からの流れを把握するために緯度帯・気候帯を代表する3地点に同じ機 能を持つ多波長のラマン・ミー散乱ライダーを展開し、エアロゾル組成・空間分布を連続測定し、黒色炭素(BC) 成分を含むエアロゾルの組成を高精度でリトリーバルするアルゴリズムを開発する。また、エアロゾルの前駆気 体の計測をMAX-DOAS分光解析装置を用いて行う。これらの観測値を拘束条件として、多成分同時同化化学輸送イ ンバースモデルを構築し、高精度のBCや人為起源エアロゾルの5次元(時間・地点・組成)のエアロゾル分布の 再解析データベースを作成する。これをもとに、エアロゾルの分布と動態の詳細な解析を行い、気候影響評価の 高精度化への貢献も目指す。
国立環境研究所では主に多波長のラマン・ミー散乱ライダーによる観測を分担する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
新設計の多波長ライダーによるエアロゾル組成と MAX-DOAS による汚染ガス の計測手法の開発、それと同期して化学輸送モデルによる多成分同時同化システムの開発・応用 を同時に進める。
平成25年度
多波長ライダーシステムを設計し、福岡(既存の 355nm ライダー改修と増強)と沖縄に設置し て、試験運用を開始する。実測データの処理アルゴリズム開発と処理の自動化を行い、消散係数、 後方散乱係数、偏光解消度の導出法の検証を行う。エアロゾル種分離推定結果の検証は、地上の 化学計測データの利用できる沖縄サイトを中心に行う。MAX-DOAS システムの導入と処理システム の改良を行う。
モデル研究では、多成分同時同化モデル本体と最適化モジュールの整備を行う。完成した同化 システムを用いて、疑似生成データを用いた双子実験を用いてシステムの検証を行う。また、年 度末に起動する福岡と沖縄のライダー結果を用いてモデルと観測の比較・解析の準備を進める。
平成 26 年度以降
ライダーシステムを札幌に設置する。In-situのエアロゾル測定結果をもとに、実測データの処 理アルゴリズムの見直しを行い、リトリーバルの精度の向上を行う。エアロゾル種分離推定アル ゴリズム(BC などを分離推定アルゴリズム)の開発を開始する。平成 27-29年度にかけて、沖縄 や福岡での in-situ エアロゾル計測の結果をもとに、検証を継続するとともに、ライダー計測・ 推定データを同化モデルで扱いやすい物理量に変換・整備する。また、計測結果を気柱カラム量 (スカイラジオメーター、サンフォトメーター)や、MAX-DOAS からの光学的な厚さとの比較を進 め、計測精度の更なる向上を行う。
モデル研究は 3 地点のライダー結果を用いた成分毎の同化実験を開始する。既存の排出量イン ベントリーの結果をライダー計測の結果でインバースして、最適化されたエアロゾル別の排出量 の予備的評価を進める。モデル結果と観測結果の精度を確認しながら、同化システムを多成分同 時同化システムに拡張し、他の衛星ライダーや MODIS,地上ライダーとの比較も含めて、エアロゾ ル排出量インバースの精度を高める。モデル開発としては、Tagged BC や Tagged Dust のモデル も同時に開発し、モデル検証を様々な角度から進める。モデルの検証はエアロゾル成分だけでは なく、MAX-DOAS で計測されるトレースガス成分についても行う。開発・検証されたモデル結果を もとに最終的に、エアロゾル再解析データを構築し、エアロゾルの気候影響評価の精度向上に貢献する。
今年度の研究概要
沖縄辺戸岬における多波長ラマン散乱ライダー観測を開始するとともに、富山大学に同一性能の多波長ラマン散乱ライダーを設置し観測を開始する。これによって当初計画の3地点の多波長ラマン散乱ライダー観測ネットワークを完成する。多波長ラマン散乱ライダーおよび既存のミー散乱ライダーネットワーク(AD-Net)のデータを同化に用いるためのデータ処理手法と自動データ処理システムの整備を進める。
外部との連携
研究代表者:鵜野 伊津志(九州大学応用力学研究所)、共同研究機関:九州大学、国立環境研究所、気象研究所、千葉大学、独立行政法人海洋研究開発機構
- 関連する研究課題
課題代表者
杉本 伸夫
担当者
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西澤 智明地球システム領域
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松井 一郎