- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1114CD002
- 開始/終了年度
- 2011~2014年
- キーワード(日本語)
- ヒ酸塩還元,亜ヒ酸塩酸化,ヒ素可溶化,医薬品
- キーワード(英語)
- Arsenate reduction, Arsenite oxidation, Arsenic mobilization, Pharmaceuticals
研究概要
抗生物質を含めた医薬品が広範な水環境から検出されており、環境中における薬剤耐性細菌の発生や耐性遺伝子の伝播・拡大が憂慮されている。一方、その影響は環境微生物の群集構造にも及び、物質の挙動を大きく変化させる可能性がある。特に、ヒ素のような毒性を持つ微量元素の場合は、微生物を介した環境動態の変化がヒトの健康影響に直結する恐れがある。即ち、抗生物質の環境中への流入には、ヒ素による水環境汚染を助長する新たなリスクが潜在するが、これまでにその可能性に着目した研究は報告されていない。
本研究では、環境中におけるヒ素の可溶化/不溶化に関与するヒ素および鉄の酸化・還元に着目し、これらを担う微生物反応に及ぼす各種抗生物質の影響を評価する。それとともに、微生物相の変遷をモニターし、抗生物質が各微生物反応に影響を与えるメカニズムを解明したうえで、そのリスクを詳細に評価する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
本研究では、まず、抗生物質によって活性が大きく変化すると考えられるヒ酸塩還元とヒ素耐性細菌に着目し、それらの優先化に寄与する抗生物質をフラスコレベルの実験系でスクリーニングする。実験系内からは、優先化した耐性細菌の単離も行い、培養法と遺伝子解析の併用により詳細な特徴づけを行うことによって、その裏付けとなる知見を得る。次に、スクリーニングにより選定された抗生物質を用い、国内各地から採取したヒ素濃度の異なる多様な土壌・底泥サンプルを対象として、ヒ素の可溶化/不溶化に関与する各微生物反応(ヒ酸塩還元、亜ヒ酸塩酸化、Fe(III)還元、Fe(II)酸化)に与える影響を個別の活性試験により網羅的に評価する。並行して、各サンプルのヒ素可溶化ポテンシャルに与える影響を調べ、ヒ素の環境動態変化に影響を与えるメカニズムを推定する。最終年度には、実環境を模した反応槽を用いて、以上で得られた知見の検証・リスク評価を試みる。
今年度の研究概要
抗生物質の流入による微生物相の変遷が、ヒ素の環境動態変化にどの程度貢献し得るかを評価するために、河川・湖沼の底泥等を模擬した複数のラボスケールリアクターを用いた実証実験を行う。ヒ素濃度の異なる底泥等に対して、抗生物質を一定期間流入させ、リアクター内でのヒ素の挙動を液相・固相の分析により、また、ヒ素及び鉄の酸化・還元に関わる細菌群を分子生物学的手法によりモニターする。有機物や栄養塩濃度等を変化させた条件でリアクターを運転することで、抗生物質の影響によってヒ素の可溶化が生じやすい環境条件を明らかとし、水環境汚染リスクを評価する。
- 関連する研究課題
- 0 : 地域環境研究分野における研究課題
課題代表者
山村 茂樹
- 地域環境保全領域
土壌環境研究室 - 室長(研究)
- 博士(工学)
- 生物工学,土木工学