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生物検定法による塩素化/臭素化ダイオキシン類測定評価法の確立と高度利用に関する研究(平成 26年度)
Establishment of measurement method for chlorinated and brominated dioxins by using in vitro bioassay for advanced use as screening tool

予算区分
BE 環境-推進費(補助金)
研究課題コード
1315BE001
開始/終了年度
2013~2015年
キーワード(日本語)
生物検定法,臭素化ダイオキシン類
キーワード(英語)
in vitro bioassay, Brominated dioxins

研究概要

PBDD/Fs(臭素化ダイオキシン類)は、臭素系難燃剤(BFR)のひとつ、PBDEs中に含まれる不純物であり、BFR含有製品のライフサイクル(製造・使用・廃棄・リサイクル)を通じて生じる非意図的分解生成物である。従って、その環境排出は、テレビやパソコン等のBFR含有製品のライフサイクルを通じて今後も継続する。臭素化ダイオキシン類に係る問題は、アジア途上国でもリサイクル・処理に起因する問題が顕在化しており、特に日本も輸出国として関わるE-wasteの不適切なリサイクルに伴う健康・環境影響は国際問題となっている。
 2012年3月、国連環境計画(UNEP)と世界保健機構(WHO)は、臭素化ダイオキシン類に毒性等価係数(TEF)を設定して、ダイオキシン類と同様に規制管理することを提言した。UNEPとWHOの見解を受けて、ストックホルム条約やダイオキシン対策特別措置法(特措法)の中で、臭素化ダイオキシン類が国内外で規制される場合、ダイオキシン類と共にTEQ(毒性等量)ベースで管理する可能性が高い。その場合、ガスクロマトグラフ高分解能質量分析計(GC-HRMS)法による分析では、ダイオキシン類と臭素化ダイオキシン類をそれぞれ分析する必要があり、これまで以上に分析費用や時間がかかると推察される。日本の震災復興期という現状を考慮すると、費用対効果の良いモニタリング調査態勢の確立は急務といえる。
 2004年11月に環境省が特措法に追加した生物検定法のうち、「Ahレセプターバインディングアッセイ法」は、測定原理を考慮するとダイオキシン類と臭素化ダイオキシン類の測定評価への応用が期待でき、管理基準を超える試料をスクリーニングできる見込みがある。しかしながら、現行の生物検定法では、管理基準を超えた試料の構成内訳(ダイオキシン類、臭素化ダイオキシン類等)を把握できない難点がある。また、臭素化ダイオキシン類に係る問題を考慮すると、小型焼却炉から排ガス、ばいじん及び燃え殻への適用に限定されている生物検定法を、その他環境試料で高度利用することが望ましい。
 よって本研究では、現行の生物検定法を応用したダイオキシン類と臭素化ダイオキシン類の評価法の確立、各種環境試料での確立手法の適用性評価、モニタリング調査での高度利用について検討する。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

本研究では、生物検定法をビジネスベースで国内外に展開している株式会社日吉、生物検定法の精度管理に携わる国立環境研究所、ダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類分析に関して学際的知見を集積している愛媛大学から構成される、科学知見の社会実装のための産官学コンソーシアムで、費用対効果のある生物検定法によるダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類測定評価手法の確立を行い、その高度利用について検討する。具体的には、以下の課題を実施して目的を達成する。

(1) ダイオキシン類と臭素化ダイオキシン類を分別評価する新規前処理法の開発
 ダイオキシン類及び臭素化ダイオキシン類の化学物質標準品を用いて、臭素化ダイオキシン類を吸着する化学修飾シリカゲル積載カートリッジ型(開発カートリッジ)の新規前処理法の最適条件等を検討する。

(2) 新規前処理法を用いたダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類測定評価手法の標準化
ダイオキシン類及び(或いは)臭素化ダイオキシン類の濃度を把握している小型廃棄物焼却炉からの排出ガス、ばいじん、燃え殻、大気、土壌、底質、ハウスダスト試料(n=3ずつを想定)を用いて、開発カートリッジを用いた新規前処理法の適用評価を行い、結果に基づいて新規前処理法を用いたダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類測定評価手法の標準化(標準化手法)を媒体別に行う。

(3)標準化手法の適用性評価に基づく新規生物検定法の高度利用の検討
採取場所や化学物質汚染が異なる廃棄物焼却炉からの排出ガス、ばいじん、燃え殻、大気、土壌、底質、ハウスダストの多検体試料(n=20ずつを想定)を用いて、標準化手法の適用評価を行う。由来の異なる多媒体多検体試料の評価結果に基づくダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類モニタリング優先度表の作成を行い、費用対効果の観点からの汎用性も考慮してGC-HRMS法に替わる手法としての高度利用について検証する。終局的には、適用性評価に基づいて最適化したダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類を測定する新規生物検定法を提示する。

今年度の研究概要

本年度は、下記の項目を実施して研究を遂行する。

(1)濃度既知試料を得るために、焼却排ガス、ばいじん、燃え殻、表層土壌、堆積物、ハウスダスト、作業環境及び排水について、各媒体少なくとも3試料を対象とした化学分析(PCDD/Fs、Co-PCBs及びPBDD/Fs)を実施する。ダイオキシン類/臭素化ダイオキシン類の濃度把握を終えた試料を濃度既知試料とする。

(2)濃度既知試料を対象として、試料抽出液の調製を新規前処理法を用いて行なう。2種類の細胞ベースの生物検定法で、既知濃度試料の抽出液の評価を行い、手法の標準化(標準化手法)を媒体別に実施する。


(3)採取場所や化学物質汚染が異なる焼却排ガス、ばいじん、燃え殻、表層土壌、堆積物、ハウスダスト、作業環境及び排水を各20検体程度以上ずつ選定し、確立した標準化手法で多媒体多検体試料の抽出液の調製と生物検定法評価に着手する。

(4)標準化手法は、上述の廃棄物・環境試料の他、エコチル・パイロット研究の血清試料(300検体以上)にも適用して、適用性の評価に着手する。

外部との連携

研究分担機関:株式会社日吉、研究協力機関:愛媛大学、和光純薬工業株式会社、同 試薬研究所

課題代表者

鈴木 剛

  • 資源循環領域
    資源循環基盤技術研究室
  • 室長(研究)
  • 農学博士
  • 生化学,化学
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