- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1416CD002
- 開始/終了年度
- 2014~2016年
- キーワード(日本語)
- 遺伝子,ストレス,オゾン,植物
- キーワード(英語)
- gene, stress, ozone, plant
研究概要
オゾンは植物に対する毒性が強く、現在大気中に存在する化学物質としては最も広範囲で大き
な影響を農業や生態系に及ぼしているものの一つである。今後その影響はさらに増大すると予想
されるが、その作用や植物の応答についてはまだよくわかっていない。我々は、植物のオゾ
ン応答機構の解明を目的に、シロイヌナズナのオゾン感受性突然変異体の単離と解析を行ってお
り、今回、光呼吸系に欠陥のある、新規感受性変異体を単離した。そこで、オゾン処理及び非処
理下でのその変異体の性状(光合成・光呼吸活性、シグナル物質量、遺伝子発現等)を調べ、光
呼吸とオゾン応答の関係を明らかにするとともに、本変異体の二酸化硫黄等のオゾン以外のスト
レス因子に対する感受性を調べ、植物の新規ストレス反応とその影響の度合いを解明する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
平成26年度:本変異体がオゾン感受性になっている原因を明らかにするため、変異体と野生型について、オゾン処理または非処理下での光合成や光呼吸系の性状について調べる。また、本変異体および野生型植物の気孔開度を測定・比較するとともに、二酸化硫黄や過酸化水素に対する感受性を調べて比較する。さらに、本変異体の原因となっている酵素以外の光呼吸系遺伝子に欠損があり、本変異体と同様に通常の条件下では普通に育つような変異体を文献等で調査し、その種子を入手する。
平成27年度:平成26年度に得られた結果を基にして、変異体のオゾン感受性と光呼吸の関係をさらに調べるとともに、入手した他の光呼吸系欠損株のオゾン感受性を調べることにより、オゾン感受性形質と光呼吸の全体的フローとの関係を明らかにする。また、変異体および野生型植物をオゾン処理し、細胞内のレドックス状態や各種シグナルの活性、ストレス応答性遺伝子発現等を継時的に測定し、オゾン処理下におけるこれらの植物の生理状態、特にどのようなシグナルが動いているかを解明し、オゾン障害との関係を考察する。
平成28年度:平成27年度に引き続き、オゾン処理した変異体および野生型植物における各種シグナルの活性や遺伝子発現を測定し、オゾン感受性との関係を明らかにする。また、オゾン感受性の異なるシロイヌナズナの野生系統群について、対象とする酵素や光呼吸活性の、オゾン感受性への寄与度を明らかにする。
今年度の研究概要
変異体と野生型植物について、オゾン処理または非処理下での光合成や光呼吸系の性状について調べる。具体的には、異なる光強度下やオゾン存在下での光化学系量子収率や光呼吸活性を調べるとともに、対象とする酵素やそれ以外の光呼吸系酵素の活性や基質の量を調べ、変異体と野生型の間で比較する。
本変異体および野生型植物の気孔開度を測定・比較するとともに、ガス暴露チャンバーを用いて二酸化硫黄と接触させ、可視障害の程度や葉からのイオン流出量の計測により感受性を調べて比較する。また、変異体および野生型植物の葉を異なる濃度の過酸化水素やパラコート等の溶液に浸し、光照射下に放置して継時的にクロロフィル量や葉からのイオン流出量を計測することにより、これらの酸化性物質等に対する葉組織の感受性を調べて比較する。
本変異体とこれまでに明らかにされた種々のオゾン感受性系統を高濃度の二酸化炭素とオゾンで処理し、生じる障害の程度を調べることにより、これらの植物のオゾン感受性に及ぼす高濃度二酸化炭素の影響を明らかにする。
本変異体の原因となっている酵素以外の光呼吸系遺伝子に欠損があり、本変異体と同様に通常の条件下では普通に育つような変異体を文献等で調査し、その種子を入手する。
- 関連する研究課題
- 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題