- 予算区分
- NA 寄付
- 研究課題コード
- 1213NA004
- 開始/終了年度
- 2012~2013年
- キーワード(日本語)
- 炭素・窒素安定同位体比,散水ろ床法,下水処理,高次生物
- キーワード(英語)
- Carbon and nitrogen stable isotopes, Trickling filter, Sewage treatment, Microfauna
研究概要
本研究では、炭素・窒素安定同位体比解析を用いて、散水ろ床型の下水処理システムにおける高次生物生態系を評価し、処理性能および余剰汚泥量との関係を明らかにすることを目的とする。対象の下水処理システムは、スポンジを汚泥の保持担体として用いた散水ろ床であり、高い処理性能と余剰汚泥の発生量が少ない特長を有している。余剰汚泥量が少ない要因は、保持汚泥濃度が30gVSS/L程度と高く、汚泥滞留時間 (SRT)を100日以上であるため、微生物生態系が高次にシフトすることが考えられている。しかし、高次生物による汚泥の減容効果の評価に関しては、高次生物(原生動物、後生動物)の存在数を把握するのみであり、摂餌関係の解明はほとんど進められていない。そこで本研究では、炭素・窒素安定同位体比を用いて、高次生物生態系における被食—捕食の関係を明らかにすることを試みる。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
本研究では、下水処理システムの汚泥に多数生息する高次生物(イトミミズなど)の炭素・窒素の同位体比の変化を把握し、被食-捕食の関係を評価することを試みる。また、保持汚泥の安定同位体比を測定することで、汚泥(微生物群集)全体の評価を行う。さらに、リアクターにおける、汚泥と高次生物の存在量の変化とともに、相対的な栄養段階の変化を把握する。この結果得られた生態学的データと、処理特性や汚泥特性などの工学的データの比較評価を行うことで、高次生物生態系と処理性能/汚泥特性との関連性を評価する。以上により、本リアクターにおける保持汚泥の高次生物生態系に関する科学的知見と、処理性能の効率化に向けた基礎的知見を得る。
今年度の研究概要
研究成果目標は、本下水処理リアクターにおける流入下水、汚泥および主要な高次生物の安定同位体比のデータを取得することで、リアクター高さ方向における相対的な安定同位体比の変化を明らかにするとともに、処理性能や汚泥特性の変化と比較することにより、それらの関連性を評価することである。まず、本リアクターにおける流入下水、保持汚泥、高次生物の各サンプルの安定同位体比を測定する。この結果は、高次生物のレベルを示すとともに、保持汚泥の捕食-被食による影響を示す貴重なデータとなる。さらに、リアクター高さ方向の変化を把握することで、汚泥減容化への影響を調査する。さらに、保持汚泥における微生物相と安定同位体比のデータの関連性を評価する。また、リアクターの処理特性、汚泥特性および安定同位体比のデータの解析を進めることで、安定同位体比の変化と処理や汚泥特性との関係を調査する。最後に、マスバランス、高次生物相、安定同位体比の各データをまとめ、本リアクターにおける汚泥の高次生物生態系の変化を示す。
- 関連する研究課題
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