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東南アジア地域の集落保護林が生物多様性保全に果たす役割(平成 25年度)
Assessing the biodiversity conservation value of fragmented forest reserves managed by local communities in Southeast Asian tropical region

予算区分
AQ センター調査研究
研究課題コード
1314AQ002
開始/終了年度
2013~2014年
キーワード(日本語)
種多様性,熱帯林,生物多様性保全,集落保護林
キーワード(英語)
species diversity, tropical forest, biodiversity conservation, community forest

研究概要

東南アジア熱帯の生物多様性保全の場として、この地域の集落がもつプラウと呼ばれる保護林に注目する。プラウは、地域住民が林産物などの利用のために焼畑耕作地の間に残した小さな森である。これまで、プラウ(1〜数個)が原生林と同等の樹木集団の遺伝的多様性、動物や昆虫の種多様性を持つことが示されてきた。もし個々のプラウがそれぞれ異なる種のセットを保持するならば、景観レベルで複数のプラウを保護することが、地域的な生物多様性の維持に有効だろう。この研究では、景観レベルでのプラウの生物多様性維持機能を明らかにし、その保全価値を評価する。さらに、種多様性に影響を与える生物的・社会的要因、その空間スケールを解明して、プラウを利用した生物多様性保全策を具体的に提言することを目標とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

(研究計画・方法)
平成25年度
(1)各村における土地利用パタンマップの作成:現在のプラウとその周辺の土地利用の状態を村での聞き取り調査、現地調査を行って確認する。この情報を地域の航空写真と照らし合わせて、土地利用パタンマップを作成する。(航空写真の一部は既に入手済みである。)プラウを中心とした位置、面積、周りの土地利用パタンをGIS情報として、後の解析で使用する。

(2)プラウの植生・バイオマス調査:プラウの中の樹木の種多様性に影響を与える要因(プラウの面積、孤立度(原生林までの距離)、周辺の植生、プラウの利用頻度)を考慮してプロットの設置場所を決定する。プロットは1つ当たり30m x 40m (0.12ha)を考えており、20個設置を目指す。その場所に生育する樹木の種と個体数のリストの作成を行う。また樹木の胸高直径、高さからバイオマスを推定する。(種同定作業は、サラワク植物研究所の研究者と共同で行い、平成26年度中に完了予定。)

平成26年度
(3)種多様性に影響を与える要因の解析:プラウの中の樹木の種多様性に影響を与える4つの要因を考慮した統計モデルを作成し、どの要因が種多様性に影響を与えるかを明らかにする。解析はベイズモデルを使用する。後述のように空間スケールを大きくして解析を行うため、空間スケールに応じてパラメータが変化する場合にも対応できる。

(4)バイオマスの評価:植生調査プロットでの胸高直径、高さからバイオマスを算出する。種多様性とバイオマスの関係、またバイオマスと3で解析した4つの要因との関係を解析する。GIS情報と組み合わせて地域的なバイオマスの推定も試みる。

(5)種多様性に影響を与える要因のスケール依存的な変化:面積を増やしたときにそこに含まれる種数は、局所スケールでは傾きの急な曲線、中程度から地域スケールではゆるやかな線形、さらに大きな大陸スケールでは再び急勾配となることが経験的に知られている。こういったスケール依存的な変化は、種数の生物学的な決定要因の違いを反映していると考えられる。理論的には、局所スケールではニッチ集合規則が卓越し、少し大きな空間スケールでは地域個体群からの移入の程度が重要になってくると予測されている。種多様性が面積だけでなくスケール依存的な現象によって影響を受けることを検討する。

(6)生物多様性の保全策:地域的な種多様性の維持のためのプラウの面積、距離、周りの植生、配置について具体的に算出を試みる。ベイズモデルでの解析を行う予定であるため、プラウの数や土地利用パタンがさらに変化したときに、どのような多様性に変化が見られるかなどの予測にも対応できる。

今年度の研究概要

今年度は3回の現地調査を行い、以下の調査を行う。

(1)各村における土地利用パタンマップの作成:現在のプラウとその周辺の土地利用の状態を村での聞き取り調査、現地調査を行って確認する。この情報を地域の航空写真と照らし合わせて、土地利用パタンマップを作成する。(航空写真の一部は既に入手済みである。)プラウを中心とした位置、面積、周りの土地利用パタンをGIS情報として、後の解析で使用する。

(2)プラウの植生・バイオマス調査:プラウの中の樹木の種多様性に影響を与える要因(プラウの面積、孤立度(原生林までの距離)、周辺の植生、プラウの利用頻度)を考慮してプロットの設置場所を決定する。プロットは1つ当たり30m x 40m (0.12ha)を考えており、20個設置を目指す。その場所に生育する樹木の種と個体数のリストの作成を行う。また樹木の胸高直径、高さからバイオマスを推定する。(種同定作業は、サラワク植物研究所の研究者と共同で行い、平成26年度中に完了予定。)

関連する研究課題
  • 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題

課題代表者

竹内 やよい

  • 生物多様性領域
    生物多様性評価・予測研究室
  • 主任研究員
  • 理学博士
  • 生物学,林学
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