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行動意思決定の個体差が、ツキノワグマ個体群の存続可能性と時空間パターンに与える影響の解明(平成 25年度)
Effect of individual heterogeneity in behavioral decision making on the viability and spatio-temporal pattern of black bear population

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1315CD006
開始/終了年度
2013~2015年
キーワード(日本語)
ツキノワグマ,空間構造を持つ個体群動態,行動意思決定
キーワード(英語)
Asian black bear, Spatially-structured population dynamics, Behavioral decision making

研究概要

近年、大型哺乳類が人間の生活の場に侵入し、それに伴う人間社会との軋轢が社会的な課題となっている。特に、ツキノワグマは堅果の凶作年には里地に大量出没して農作物被害や人身被害を引き起こしている。問題個体の防除においては、クマ個体群の存続のために多くの自治体で捕獲上限を設定しているが、大量出没年にはそれを上回る数のクマが里地に出現し、捕獲上限が実質的に機能しなかった例も多く報告されている。地域社会の安全とクマ個体群の存続の両立を図ることは、日本各地で重要な課題となっている。
 ツキノワグマの大量出没には、個体数の増加だけではなく、その行動意思決定の高い状況依存性も大きな役割を果たしていると考えられる。それは堅果の豊凶などの資源状態だけでなく、性別や個体のコンディションなど、内的な要因によっても左右されると考えられる。特に、ほかの場所へ移動するか、同じ場所にとどまるかの判断にかかわる要因と、その個体レベルの不均一さを明らかにすることは、里地周辺など個体群の辺縁部における捕獲圧が個体群全体に波及しうるかを明らかにすることにつながる。もし、移動のコストが大きく、奥山の個体がその場にとどまる傾向がみられるなら、里での捕獲圧が奥山の個体群に与える影響は限定的であることになる。その場合、捕獲上限に基づく管理よりも、保護区の設置によるゾーニングに基づく管理の方が実効性が高いことになると考えられるが、それを検証する研究はこれまでなされていない。
 本研究では、奥山から里地にかけて設置した多数の自動撮影カメラによりツキノワグマの個体識別を行い、多個体の景観スケールでの移動軌跡を明らかにする。そして、移動軌跡と環境条件や個体の状態を関連付け、行動意思決定のモデル化を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

調査は富山県東部地域の4市町(富山市、魚津市、上市町、立山町)において実施する。2013年度においては、調査に関してカメラ設置範囲に含まれる県、市町村、地権者などとの合意形成を図り、調査許可を得るとともに有害駆除個体の個体識別のための撮影を依頼する。その後、自動撮影カメラを調査地域全体に約100台設置し、月一回メモリ交換などのメンテナンス作業を行う。以降の年度も同様の調査を実施し、その中で得られたデータをモデル化する。2014年度においては、自動撮影カメラによる撮影データと有害駆除個体の個体識別データを組み合わせ、捕獲圧の空間的な分布を明らかにし、クマ管理における保護区設置の有効性を評価する。2015年度においては、複数年継続して得られた行動軌跡データと景観情報や個体の情報を関連付け、行動意思決定のモデル化を行う。

今年度の研究概要

2013年度は、調査に関してカメラ設置範囲に含まれる県、市町村、地権者などとの合意形成を図り、調査許可を得るとともに有害駆除個体の個体識別のための撮影を依頼するなど、調査体制の確立を行う。その後、自動撮影カメラを調査地域全体に約100台設置し、月一回メモリ交換などのメンテナンス作業を行う。この作業はツキノワグマ冬眠前の10月末まで継続する。有害駆除個体の撮影データは適宜県庁から提供を受ける。これらの写真、動画データは目視により個体識別を行い、個体番号を付与してデータ化する。

外部との連携

本研究の研究代表者は早稲田大学人間科学学術院の東出大志氏である。

関連する研究課題
  • 0 : 生物・生態系環境研究分野における研究課題

課題代表者

深澤 圭太

  • 生物多様性領域
    生物多様性評価・予測研究室
  • 主任研究員
  • 博士(学術)
  • 生物学,地理学,林学
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