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携帯周波域の電磁界曝露による生体影響評価(平成 25年度)
Biological impact evaluation of exposure to electromagnetic fields emitted by mobile phones

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1315CD003
開始/終了年度
2013~2015年
キーワード(日本語)
携帯電話
キーワード(英語)
Mobile phone

研究概要

動物用曝露装置を作成し、マウスを用いて、成獣マウス曝露実験に加えて、種々の外来要因に対し非常に高感受性な時期である胎児期曝露を実施する。出産仔数への影響、外表奇形の有無などを観察した後、マウスの成長を確認し、4週齢および7週齢になった時点において1)各種遺伝子突然変異を含む変異原性試験を実施し磁界曝露の発がん作用の有無を検討する、2)発達期の中枢神経系への機能的な影響の有無を把握するために学習・記憶にかかわる遺伝子・蛋白発現等、脳機能への影響評価を実施する。なお、これらの一部をがん抑制遺伝子のp53をノックアウトしたマウスを使用し、野生型マウスより感受性高く影響評価を行う。これらの結果に基づき携帯周波電磁界曝露によるリスク評価を行う。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

電磁界曝露による生体影響については、社会的にも関心が高く懸念を抱く人も多い。携帯電話に使用される高周波電磁界への懸念も高く、平成23年5月31日に国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話などで使用する無線周波数電磁界を「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」(Group 2B)と評価する結果を発表した。 申請者らは、これまでに共同研究にて、低濃度化学物質をマウスに曝露した際の神経・免疫・内分泌ネットワークへの影響評価、およびIHクッキングに使用される中間周波電磁界の影響評価を幅広く進めてきた。これらの研究においては,妊娠時の胎児から成獣まで種々のタイミングで曝露を行い各発達ステージでの感受性の相違などについても検討してきた。これらの経験を生かし、携帯周波域電磁界の曝露装置を作成し、各発達ステージのマウスに電磁界曝露を行った際の生体影響評価について系統的に実施する。

今年度の研究概要

1.電磁界曝露(牛山が分担する)
本研究においては、動物用曝露装置を作成し使用する。工学系の専門家の設計のもとで、各種の交絡要因を排除し曝露できる曝露装置を別予算にて設計・作成し本院実験室に設置済みである。携帯電話で利用されているW-CDMA変調の2.1GHzの電波で全身平均SAR(人体の電力比吸収率:Specific Absorption Rate)で4W/kgのばく露が可能であり、一般公衆で0.08W/kgと定められているICNIRP国際ガイドライン及び総務省電波防護指針の50倍のばく露が可能である。これらの装置を用い、
(1)成獣マウスにおける1時間/日,5日/週,4週間曝露での影響評価を行う。
(2)加えて妊娠中の発達段階における胎児期曝露から各発達ステージの幼若時曝露での影響評価をターゲットとして、妊娠マウスを1回あたり1時間、妊娠期間中から出産後の各成長期の反復曝露を実施する。

2.変異原性試験を中心とした影響評価(欅田が主に分析担当する)
(1)酸化ストレスマーカー8-OHdGの測定:臨床的にも、動物実験においても広く評価されている代表的な酸化ストレスマーカーである尿中の8-hydroxydeoxy-guanosine (8-OHdG)をHPLC-ECD法で測定し、磁界曝露の影響を評価する。
(2)網状赤血球小核試験:in vivoにおける遺伝毒性試験として幅広く実施されている網状赤血球小核誘発についてフローサイトメーター(FACS)を用いることにより評価する。
(3)T細胞受容体(T cell receptor, TCR)遺伝子突然変異の解析:申請者らが開発した手法で、FACSを用い、TCR遺伝子突然変異を検出する。
(4)PigA遺伝子突然変異試験:上記TCR遺伝子突然変異試験同様にPigA遺伝子変異をFACSにて解析する。
 以上、種々の遺伝子変異頻度、染色体異常頻度等を観察することで電磁界曝露による変異原性の有無を検証する。

3.中枢神経系への影響評価(TinTinが分担する)
これまでに化学物質過敏症の動物モデル解析を実施し、その中で大脳辺縁系における過敏状態を探る研究を低濃度化学物質曝露を通して検索してきた。同様の手法を用いて磁界曝露により中枢神経系への影響評価を実施する。
(1)神経の成長・分化にかかわる神経栄養因子(NGF)の遺伝子発現および蛋白レベルを解析する。
(2)海馬における記憶に関連する遺伝子群であるNMDA受容体NR2AmRNA,CaMKIVmRNA,及びCREB1mRNA等についてリアルタイムPCRによるmRNA発現の相違を比較検討する。
(3)中枢神経系における各種サイトカイン・ケモカインの産生量および遺伝子発現に対する磁界曝露の影響をELISA法およびリアルタイムPCRにて比較検討する。

4.免疫系への影響評価(欅田およびTinTinが分担する)。
(1)免疫担当細胞分画の検索;磁界曝露によって免疫担当細胞であるBリンパ球、Tリンパ球およびそれらの分化度について細胞表面マーカーをFACSにて解析する。
(2)Th1/Th2バランスへの影響評価;血清中あるいは脾細胞培養上清中の各種サイトカイン・ケモカインの産生量をELISA法にて測定することで免疫系ネットワークおよびTh1/Th2バランスへの電磁界曝露の影響を評価する

以上の検討を成獣曝露(主として平成25年度実施)、および胎児期曝露(26年度実施)と曝露時期による感受性の相違を含め幅広く検討することで、電磁界曝露による生体影響の有無を変異原性試験を中心とした器質的変化と中枢神経系での機能遺伝子の発現修飾および免疫機能への影響など機能的変化の両面から検討し、影響を有する場合にはそのメカニズム解析を進め、電磁界曝露のリスク評価を行う。

外部との連携

研究代表者:欅田 尚樹(国立保健医療科学院・生活環境研究部・部長)、共同研究者:牛山 明(国立保健医療科学院・生活環境研究部・上席主任研究官)

課題代表者

TIN-TIN-WIN-SHWE

  • 環境リスク・健康領域
  • シニア研究員
  • M.D., Ph.D (Medical Science)
  • 医学,生理学,生化学
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