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湖沼における浮遊細菌を介した溶存有機物の動態解明に向けた新たな展開(平成 24年度)
The role of frshwater bacterioplankton in the uptake and transformation of dissolved organic carbon

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1112CD002
開始/終了年度
2011~2012年
キーワード(日本語)
浮遊細菌,溶存有機物,炭素循環
キーワード(英語)
bacterioplankton, dissolved organic carbon, carbon cycle

研究概要

湖沼の炭素循環において、浮遊細菌は溶存有機物の分解および新たな有機物の生産という点で重要な役割を果たしている。しかしながら、溶存有機物の何パーセントが浮遊細菌により取り込まれ、また新たな溶存有機物として排出されるのか、さらにはそれらの溶存有機物がどのような化学的特性を持つのかについては未解明である。本研究では、浮遊細菌を介した溶存有機物の流れおよび収支を純粋分離株を用いた室内実験系により解明し、併せて実際の現場における浮遊細菌の現存量を明らかにすることで、湖内炭素循環における浮遊細菌の寄与を見積る。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

本研究では、湖沼における浮遊細菌を介した溶存有機物の循環メカニズムおよび物質収支を明らかにすることを目的とし、以下の4つの項目について平成23年度から平成24年度の2年間で行うことを計画している。
1.浮遊細菌株の栄養要求性の解明(平成23年度、室内実験)
2.湖沼における有機酸の供給経路の解明(平成23年度、室内実験)
3.浮遊細菌による溶存有機物の取り込みと新たな溶存有機物の生成(平成24年度、室内実験)
4.浮遊細菌の湖内炭素循環への寄与推定(平成24年度、現場観測)

今年度の研究概要

 これまでの研究の中で、純粋分離された主要浮遊細菌群の多くが、炭素源として有機酸に強く依存していることを明らかにした。代謝される有機酸の種類は浮遊細菌間で類似しており、主要浮遊細菌群は、水圏環境中において厳しい栄養源を巡る競争をしているか、もしくは棲み分けをしていると推測された。日本の様々な湖沼から浮遊細菌の分離培養を行った実験結果より、2種の浮遊細菌間で、溶存有機物の質(自生性および他生性有機物の影響の強さの違い)により、湖沼型別に棲み分けがされている可能性が示唆された。また、ある種の浮遊細菌は、低水温期(5℃前後)に高頻度で培養法により検出されることが明らかとなり、低温環境へ適応していることが示唆された。主要浮遊細菌群は時として全細菌の50%以上を占めることもあり、湖内物質循環に重要な役割を果たしていると考えられることから、ヨーロッパを中心に培養過程を経ない分子生物学的手法による浮遊細菌の生態解明が、近年急速に進められている。しかしながら、培養法により明らかになったこれら主要浮遊細菌群の特徴は、これまで報告が無く新規性が高い。そこで今後の研究では、計画を一部変更し、主要浮遊細菌群間の棲み分けを培養法という新しい切り口で解明して行くこととした。

関連する研究課題
  • 0 : 地域環境研究分野における研究課題

課題代表者

渡邊 圭司