ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

陸水中におけるカルシウムの化学形態が森林生態系の物質循環におよぼす影響(平成 23年度)
Speciation of calcium in terrestrial water and its role in element cycle in forested ecosystem

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1012CD009
開始/終了年度
2010~2012年
キーワード(日本語)
有機錯体カルシウム,環境分析
キーワード(英語)
organic complex of calcium, environmental analysis

研究概要

酸性降下物等により森林土壌からのカルシウム流出が増加すると、カルシウム欠乏が動植物の生育に悪影響をおよぼすことが懸念されている。本研究では、水に溶解しやすく土壌に保持されにくい有機錯体カルシウムの存在割合が高くなれば、カルシウム流出が加速される可能性に着目し、「森林土壌から渓流に流出する溶存態カルシウムは、カルシウムイオンとして存在するのか、それとも可溶性有機錯体として存在するのか」を、野外観測と室内実験に基づいて判定し、その結果の地球化学的意味を解明することを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

平成22年度は水溶液中のカルシウムイオンと有機錯体カルシウムの分離・定量法を確立する。平成23年度は、カルシウムの形態別分析を筑波山水系で行い、「森林土壌から渓流に流出する溶存態カルシウムは、Ca2+イオンとして存在するのか、それとも可溶性有機錯体として存在するのか」の判定を試みる。平成24年度は、土壌におけるカルシウムの保持・流出の再現実験を行い、カルシウムの有機錯体が生成しやすい条件、錯体の生成が流出を促進する効果、カルシウムの有機錯体の生成がアルミニウムの有機錯体の生成を妨げる効果の解明を試みる。

今年度の研究概要

昨年度までに実施した研究から,塩化カルシウム溶液にクエン酸を添加すると,カルシウムイオン選択性電極法(以下,電極法)で検出されるカルシウムイオン濃度が低下すること,すなわちクエン酸−カルシウム錯体が電極法で検出されないことが確認できた。しかし,電極法で定量したカルシウムイオン濃度は,平衡計算に基づいて予想した濃度より高い傾向が認められ,クエン酸−カルシウム錯体の一部が解離してカルシウムイオン計で検出される可能性が示唆された。本年度は,電極法と平衡計算の結果が一致しない理由を検討し,渓流水試料のカルシウム有機錯体の定量法を考案する。具体的には,(1)クエン酸−カルシウム錯体の解離の影響が小さいと予想される高濃度条件において,電極法と平衡計算を比較する。(2)高濃度試料で電極法と平衡計算が一致することが確認できた場合は,渓流水試料を凍結乾燥・濃縮することにより,カルシウム有機錯体を定量する方法を検討する。高濃度試料でも電極法と平衡計算が一致しない場合は,平衡計算における仮定を再検討する。

関連する研究課題
  • 0 : 地域環境研究分野における研究課題

課題代表者

越川 昌美

  • 地域環境保全領域
    土壌環境研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(人間・環境学)
  • 化学
portrait