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高CO2環境下で光合成誘導反応の解明と物質生産への影響評価(平成 23年度)
Photosynthetic induction response and its effects on carbon gain under high CO2 environments

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1011CD006
開始/終了年度
2010~2011年
キーワード(日本語)
光合成,高CO2環境,サンフレックス,誘導反応,気孔
キーワード(英語)
photosynthesis, high CO2 environment, sunflecks, induction response, stomata

研究概要

高CO2環境下で植物の光合成誘導反応を把握するため、光合成誘導反応の主なプロセスに関する理解が必要である。高CO2濃度環境下では、Rubisco総量や最大気孔コンダクタンスの低下は一般的である。したがって、もしRubiscoの光活性化速度と気孔の開放速度が変化しない場合、Rubiscoの完全活性化と最大気孔コンダクタンスに到達する時間が短く、光合成誘導反応過程も短くなり、誘導反応の制限による光合成生産量の低下が相対的に少なくなる【仮説1】。しかし、高CO2環境下でRubiscoの光活性化速度と気孔コンダクタンスの開放速度は低下する可能性がある。そうなる場合、光合成誘導反応時間はRubiscoと気孔コンダクタンスの低下量、Rubiscoの活性化速度と開放速度の低下量のバランスによって決められるだろう【仮説2】。本研究はこれらの仮説を検証する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:行政支援調査・研究

全体計画

上記の仮説を検証するため、本研究では、高CO2環境下で異なる種の植物を栽培し、栽培条件下で、光合成誘導反応とそれに関する生化学的測定を行い、光合成誘導反応に関する諸パラメーターを獲得し、一部の植物種について光合成誘導反応速度に及ぼす(A)Rubiscoの量;(B)Rubiscoの光活性化速度;(C)最大気孔コンダクタンスと(D)気孔開放速度の影響を評価する。

今年度の研究概要

1,実験測定
実験植物の栽培:昨年度の継続研究として以下の植物を栽培し、光合成誘導反応の測定を行う。
  クワズイモAlocasia odora 
  ポプラ一種Populus koreana ×trichocarpa cv. Peace (a hybrid clone)
  テヅカチョウチンゴケPlagiomnium tezukae:
栽培条件:国立環境研究所の人工光室を利用し、以下の設定で植物を栽培する。また、6種類の植物を2回に分けて栽培する。種子や芋の場合、発芽する前の重量(乾燥重量との回帰式を求める測定も)を測定、稚樹や挿し木の場合は栽培する前にも生重量を測定する(生重量と乾燥重量の回帰式を求める測定も同時に行う)。
(1) 温度と湿度:各種の生育環境に近い温度と湿度条件を設定する。
(2) 光強度:800µmol m-2s-1;CO2濃度:700µmol mol-1と385µmol mol-1
(3) 培養土:バーミキュライト+栄養塩類
測定項目:
(1) LI6400で以下の測定を行う。1) 定常光条件で光-光合成の特性;2) A/Ci反応曲線;3) 光合成誘導反応(弱光誘導:50µmol mol-1;強光:500µmol mol-1)。
(2) Rubisco量と活性の測定:光合成測定終了後、異なる光強度条件下で葉のRubiscoの活性を分光光度計法で測定し、SDS-PAGE利用しRubiscoを定量する。
(3) すべての生理生化学的な測定を終了し、栽培した植物について、葉の葉面積と各部の乾燥重量などを測定する。
データ解析:上記の測定結果を利用し、それぞれの植物種の光合成誘導反応に関連する生理的パラメーターを求め、本研究の仮説を検証し、その結果を論文にする。
2,モデル研究
上記の実験測定に加え、今年度では実測して光環境と光合成誘導反応のデータを利用し、高CO2環境下でサンフレックスによる光合成誘導反応の影響をシミュレーションモデルで評価する。

外部との連携

坂田 剛(北里大・一般教養)

関連する研究課題

課題代表者

唐 艶鴻