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ヒ素化合物の吸収および排泄に関する腸内細菌の役割(平成 23年度)
Role of intestinal microflora in absorption and excretion of arsenic compounds

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
1112CD004
開始/終了年度
2011~2012年
キーワード(日本語)
ヒ素,腸内細菌,代謝,HPLC-ICP-MS,LC-MS
キーワード(英語)
arsenic, intestinal microflora, metabolism, HPLC-ICP-MS, LC-MS

研究概要

中国、インド、バングラディッシュなどにおいて、高濃度のヒ素が地下水に混入し、それを生活用水として利用している住民に深刻な被害を与えているが、その毒性発現機構は未だに明らかにされていない。腸内細菌叢は、宿主の老化、アレルギー、免疫、感染や発癌に密接に関連していると言われていることから、哺乳類におけるヒ素化合物の代謝を考える際に、腸内細菌による代謝も考慮に入れる必要がある。本研究では、腸内細菌によるヒ素の代謝を化学形態別分析によって明らかにし、ヒ素化合物の吸収および排泄に関する腸内細菌の役割について明らかにすることを目的としている。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

当該研究においては、ヒ素の代謝と体内動態について分析毒性学的手法を用いて明らかにし、ヒ素化合物の吸収および排泄に関する腸内細菌の役割について解明することを目的として、in vitroとin vivoでの研究を遂行する。in vitroでの到達目標は、「ヒ素を安定かつ高感度に分析可能な分析条件の決定」「腸内細菌による各種ヒ素化合物の代謝の差異を明らかにする」「各種ヒ素化合物の腸管吸収を明らかにする」ことである。in vivoでの到達目標は、「腸内環境の変化によるヒ素の体内動態を明らかにする」ことである。in vitroとin vivoでの研究を同時に進めることにより、最終的にヒ素化合物の吸収および排泄に関する腸内細菌の役割を解明する。

今年度の研究概要

1. ヒ素の高感度一斉分析条件の検討
 ヒ素の体内動態を明らかにするためには、生体内におけるヒ素の化学形を安定かつ高感度に測定することが必要不可欠である。腸内細菌によるヒ素の代謝物には含流ヒ素化合物も含まれることから、代謝物の測定の際にはヒ素と硫黄との同時測定が必要となる。各ヒ素化合物を安定かつ迅速に測定可能なカラムや溶離液の検索を行い、高感度ヒ素化合物一斉分析を目指す。また、硫黄同時測定条件も検索する。ここで得られた結果を、以降のヒ素分析に用いる。

2. 抗生物質処理ラットにおけるヒ素の体内動態
 最近、合成したヒ素糖を用いたヒト体内での代謝に関する研究が報告され、ヒ素の排泄に関して大きな個体差があることが明らかとなっていることから、腸内細菌によるヒ素の代謝がヒ素の吸収および排泄に関与していると推定した。精製食で成育したラットに抗生物質を処理し、腸内細菌を低下させたラットと無処理ラットに対してジメチルアルシン酸を経口投与し、ヒ素の分布(血液、各臓器)と排泄(尿、糞)およびヒ素の化学形態別分析を行う。

課題代表者

小林 弥生

  • 環境リスク・健康領域
    曝露動態研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(薬学)
  • 薬学,化学
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