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ヒ素の体内動態に関する分析毒性学的研究(平成 22年度)
A study on analytical toxicology of metatolism of arsenic.

予算区分
CD 文科-科研費
研究課題コード
0810CD004
開始/終了年度
2008~2010年
キーワード(日本語)
ヒ素,代謝,解毒,酸化還元,メチル化
キーワード(英語)
arsenic, metabolism, detoxification, redox, methylation

研究概要

ヒ素はその化学形によって、細胞内への取り込み、排泄、毒性などが大きく異なる。ヒ素の毒性発現および解毒機構を明らかにするためには、ヒ素代謝物の化学形を出来るだけ正確に分析し、出発物質のみならず、代謝物も含めた毒性評価を行う分析毒性学的研究が必要不可欠となる。ヒ素に関する研究において、その代謝と体内動態を明らかにすることは、ヒ素の毒性発現機構を推定し、その毒性を軽減するための重要な情報を与えるものと考える。当該研究は、ヒ素の代謝と体内動態を分析学的、毒性学的手法を用いて明らかにし、ヒ素の毒性軽減および毒性発現機構について、生体内におけるヒ素の酸化還元状態とメチル化という観点から解明することを目的としている。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

1)ヒ素化合物とグルタチオンの同時測定の検討とLC MSとの比較
2)ヒ素−グルタチオン(As-GSH)抱合体の分解および酸化におけるGGTの影響
3)腸管から再吸収された後のヒ素の動態。
4)生体内におけるヒ素の化学形と代謝に関わるトランスポーターの発現の有無
5)得られた結果から、環境汚染物質であるヒ素化合物の代謝マップを完成し、代謝に伴う毒性軽減および毒性発現機構を解明する。

今年度の研究概要

(1) GGTの阻害剤を投与した際、ラットの尿中にヒ素−グルタチオン抱合体が検出された。そこで、各ヒ素−グルタチオン抱合体の赤血球への取り込みについて以下の実験を計画した。TBS bufferで20%赤血球懸濁液を調整し、最終濃度1 ppmになるようにヒ素−グルタチオン抱合体を添加する。37℃で0(添加直後), 30秒, 1, 2, 5, 10, 30, 60, 120, 180分加温し、遠心した後、buffer上清中のヒ素濃度を測定する。最終濃度5 mMになるようにGSHを添加し同様の実験を行って比較する。また、20%赤血球懸濁液にヒ素−グルタチオン抱合体、ヒ素−グルタチオン抱合体+GSHを添加して37℃で1時間反応させ、ゲルろ過カラムを装着したHPLC-ICP-MSによりヒ素の化学形態を測定する。

(2) ラットにヒ素を投与すると、MRP2/cMOATを介して胆汁中に As-GSH抱合体が排泄されることが報告されている。現在までに、胆汁中へのヒ素の排泄量を化学形態別に調べている研究は行われているが、ヒ素の排泄に関与するトランスポーターの発現量も併せた研究は行われていない。そこで、当該研究において以下の実験を計画した。ラットに0.2 mg As/kgまたは2.0 mg As/kgの亜ヒ酸(対照群には生理食塩水)を投与した後、経時的に解剖する。解剖の15分前に胆汁を採取し、その後血液、肝臓を採取する。24時間の個体については、代謝ケージを用いて尿および糞も採取する。採取した試料中の総ヒ素濃度、グルタチオン濃度、過酸化水素濃度、ヒ素のspeciationを行う。また、腎臓および肝臓の毒性の指標となる酵素とグルタチオンの合成に関与する酵素(γ-GTP、GST、γ-GCS、ビリルビン等)についても測定を行う。さらに、ヒ素の排泄に関与していると考えられるトランスポーター(MRP1およびMRP2)について、mRNAと蛋白の発現を調べる。 

関連する研究課題
  • 0 : その他の研究活動

課題代表者

小林 弥生

  • 環境リスク・健康領域
    曝露動態研究室
  • 主幹研究員
  • 博士(薬学)
  • 薬学,化学
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