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重点2 循環型社会研究プログラム(平成 21年度)
Priority Program 2 [Sustainable Material Cycles]

研究課題コード
0610SP002
開始/終了年度
2006~2010年
キーワード(日本語)
循環型社会,廃棄物,資源
キーワード(英語)
SOUND MATERIAL-CYCLE SOCIETY, SOLID WASTE, RESOURCE

研究概要

[目的]
廃棄物の処理処分や資源の循環的利用が適切な管理手法のもとで国民の安全、安心への要求に応える形で行われることを担保しながら、科学技術立国を支える資源循環技術システムの開発と、国際社会と調和した3R(リデュース(発生抑制)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用))推進を支える政策手段の提案によって、循環型社会の近未来の具体的な姿を提示し、そこへの移行を支援する。
[目標]
我が国のみにとどまらず、国際的にも重要な課題である循環型社会の実現に向け、資源採取、生産、流通、消費、廃棄等の社会経済活動の全段階を通じて、資源やエネルギーの利用の面でより一層の効率化を図り、健全な物質循環をできる限り確保することによって、環境への負荷を少なくし、循環を基調とする社会経済システムを実現するための知見を提供する。

全体計画

今後の「循環型社会」を形成していくうえで達成目標を明らかにして集中的に取り組む必要のある目的指向型の研究課題として、重点研究プログラムのいわば顔となる「中核研究プロジェクト」(以下「中核PJ」)として、以下の4課題を編成した。
(1)近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価
(2)資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価
(3)廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発
(4)国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築
循環型社会・廃棄物研究センター以外の研究ユニットの研究者が主体となって実施する「関連プロジェクト」として、“循環型社会実現に資する経済的手法、制度的手法に関する研究”などの3課題を位置付けている。
また、中核PJ以外の研究活動として、廃棄物の適正な管理のための研究を着実に進めるため、「廃棄物管理の着実な実践のための調査・研究」という区分をプログラムに設け、“循環型社会に対応した安全・安心な適正処理・処分技術の確立”などの4課題を位置付けているほか、廃棄物管理分野の「基盤型な調査・研究」として、“廃棄アスベストのリスク管理に関する研究”等の研究課題にも取り組む。

今年度の研究概要

各研究課題について、相互の連携についても留意しつつ以下のとおり実施する。
1.中核研究プロジェクト
(1)近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価
近未来の社会条件の変化シナリオをもとに,主要な資源について近未来の物質フローの予測を行う。また,循環型社会ビジョンをワークショップ等通じて検討し試作する。ビジョン実現のために有効な対策を挙げて,資源消費削減効果,温室効果ガス排出削減効果等を予測する。
個別の対策について,その実効性に関する具体的な状況分析と評価を技術システムと社会経済システムの両面から行う。特に,近未来における個々の対策の導入可能性について検討を行い,シナリオ作成のベースとなる情報を構築する。
政策設計・評価に関しては,引き続きデポジット制度を中心にボトムアップ型の研究を行うとともに,前年度に取り組みを開始したトップダウン研究を進め,近未来における政策ビジョンを精査する。

(2)資源性・有害性をもつ物質の循環管理方策の立案と評価
化学物質の有害性・資源性管理について、これまでに調査しているケーススタディの成果から、製品を研究対象の単位として両側面を総合的に考察する。例えば、パソコン等の製品に着目して、製品ライフサイクルを通じたBFR等の有害物質の挙動や曝露に関するリスク関連情報と資源性物質(有価金属等)の含有量、資源価値、回収性に関する情報を同時に睨みつつ、化学物質の包括的管理方策の基本モデルを提案する。
再生製品の安全性確認制度(原料管理、情報伝達を含む)や利用時のリスク評価に関する研究の一環として、再生プラスチック製品の流通調査を実施する。
また、製品中化学物質の代替化に関して、難燃剤を対象として、代替物質(有機リン化合物)のリスク関連データの獲得とBFRとの得失評価について取り組みを行う。
産業用製品について、使用済み製品発生量や製品金属量,処理・処分実態の把握を行う。

(3)廃棄物系バイオマスのWin-Win型資源循環技術の開発
改質触媒の性能(活性)向上を図るため触媒の開発を引き続き行いつつ、実用化を目的としたスケールアップに関する検討を行う。また、実際の廃棄物系バイオマス排出源の規模等を勘案したシステム最適設計を行い、経済性を具備したシステム案を提示する。
水素・メタン二段発酵システムについては、ガス回収率の向上を図ると同時に、脱離液処理における栄養塩類除去技術の効率化を進め、対象廃棄物に応じた水素発酵特性を踏まえたシステム化を図る。
近未来(2030年頃)のバイオマス循環システムのビジョン実現に向けて、首都圏等を対象とした事例研究を、新たに汚泥、家畜糞尿などを含めて検討する。また、プロジェクト内の他の技術開発研究における要素技術の適用をシナリオに反映させ評価する。
バイオディーゼル燃料(BDF)製造技術開発については、第一世代BDFについては品質向上等に向けた技術開発を引き続き行う。また、第二世代BDFの製造技術の開発についても検討する。さらに、廃油脂類を原料としたベンチスケールの小規模実証へ向けた体制を整える。

(4)国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築
家電・パソコンについては、レアメタルを含む物質ごとのサブスタンスフロー分析を進めるとともに、有害性・資源性の観点から海外流出の評価、回収技術導入の可能性を検討する。特に、定量的な物質フロー分析をもとに、国際資源循環の政策提案を行うよう努める。
また、アジア途上国におけるE-wasteの循環・廃棄過程における作業環境曝露、環境排出調査例数を増加させ、曝露、排出を低減するための対策技術と、モニタリングを通じた効果検証のスキームを検討する。
さらに、アジアの都市における液状および固形廃棄物の組成ごとのフローを統合的に捉える手法の提示を、ベトナム等を事例として進める。また、気候帯を考慮した埋立地からの温室効果ガス排出係数を求めるとともに、排出源分別等の削減対策の導入因子などを明らかにする。アジア諸国における処理技術の現地適合化における制約条件の整理および小規模分散型の人工湿地システム等に関する検討を実施する。

2.関連研究プロジェクト
(1)循環型社会実現に資する経済的手法、制度的手法に関する研究
循環型社会実現のための政策手法、特に経済的手法、制度的手法に関する研究を実施する。具体的には、家計からのごみ排出を対象にごみ処理手数料有料化やごみ(可燃、不燃、資源ごみ)収集サービスのあり方(収集頻度、分別数など)が、家計のごみ排出行動やリサイクル行動に及ぼす影響を分析し、その有効性を検証する。このため、家計のごみ排出行動をモデル化し、収集したデータを用いて、モデルのパラメータ推計を行う。そのモデルを用いて、ごみ処理手数料の有料化やごみ処理事業(分別数、回収頻度など)がごみ排出行動に及ぼす影響について分析する。また、事業所の廃棄物事業の費用を分析し、その非効率性を推計するためのフレームワークを検討する。

(2)特定地域における産業間連携・地域資源活用によるエネルギー・資源の有効利用の実証
高効率の有機資源の転換技術等についての調査を進め、定量的なインベントリを蓄積する。特に食品廃棄物の飼料化について、廃棄物の発生から転換、消費までのサイクルでの統合的なインベントリデータの調査を行い、プロセスの評価を構築する。また、飼料を利用して飼育した家畜を対象に、消費者の支払い意思額などを調査して、新たな付加価値の評価を行う。
さらに、エネルギーリサイクルなど代替的な技術群との比較に向けての評価システムも準備する。循環事業による事業効果、環境政策効果の定量的評価システムのプロトタイプの構築と、政策シミュレーションを行う。その際、循環資源の地域集積・処理拠点の形成と、これを起点とする地域循環圏におけるマテリアルリサイクル及び、主として動脈産業を活用した広域循環圏における高効率ケミカルリサイクル、エネルギー回収から成る資源循環システムについて、その有効性を検討する。また、廃棄物発生、受入情報や処理情報を入力したGISシステムを構築する。

(3)資源作物由来液状廃棄物のコベネフィット型処理システムの開発
アジアの温暖地域で生産が活発な資源作物(サトウキビ、アブラヤシ等)由来液状廃棄物(廃液)の適正処理法の開発を行い、温室効果ガス発生抑制、エネルギー回収等を達成するコベネフィット型処理技術の確立を目指す。
本年度は、高有機物濃度対応型のメタン発酵槽による糖蜜系廃液の処理試験を行い、流入有機物濃度や生成する硫化物濃度の変化が、廃液処理性能や保持汚泥の性状に及ぼす影響を評価する。また、資源作物由来廃液の排出・処理状況に関する調査を進める。

3.廃棄物管理の着実な実践のための調査・研究
(1)循環型社会に対応した安全・安心な適正処理・処分技術の確立
新規埋立類型に必要な技術的な要件を特定するために、マテリアルフロー解析、カラム、ライシメータ等の実験系、数値埋立モデル研究を進める。併せて、技術・社会・経済的なフィージビリティを、大学や民間企業等との連携において確認していく。埋立廃棄物ならびに保有水(浸出水)の環境安全性を生物試験等を用いて評価し、破砕選別技術や膜処理技術等によって、入口と出口で制御する技術開発を進める。埋立跡地利用の促進のため、現場において埋設廃棄物の空間配置や安定化の状態を把握し、不適切な状態を改善する手法の検討を地方環境研究所との連携で進めていく。さらに、海面埋立処分場の廃止基準適合評価と維持管理手法について、科学的な検証を実施する。焼却処理施設適正管理手法の構築に関しては、OXs測定方法の改良を果たし、この指標による排ガス及びばいじんを含めたDXNs制御手法を確立する。また、発電を中心とするエネルギー回収効率を含めた施設の総合的な管理のための要素技法を整備する。

(2)循環資源・廃棄物の試験評価・モニタリング手法の高度化・体系化
POPsとして追加規制予定の有機フッ素化合物のPFOS及び関連物質について、廃棄物処理過程(焼却)における発生・分解挙動を把握し、それらの制御方策を整理する。ダイオキシン類・PCBのバイオアッセイにおいて、規制値を超過を判断するスクリーニング法適用に向けた方法が政策的に求められており、低濃度PCB汚染油のバイオアッセイによるスクリーニング適用をケーススタディとした検討を進める。また、ヒ素のオンサイト分析法としてのカートリッジ式ボルタンメトリー装置を実施設内で使用し、その有用性を確認するとともに、スクリーニング法として使用されている蛍光X線分析装置について、化学分析と比較し、その精度を確認する。

(3)液状・有機性廃棄物の適正処理技術の高度化
前年度の研究をさらに推進すると同時に、生活排水、汚泥、生ごみ等の液状廃棄物処理フロー全体の最適化を考慮し、適正処理技術の高度化技術開発を進める。また、汚泥発生量の低減や汚泥減容化については、生物学的・物理化学的手法の開発を進め、高度処理と汚泥減容化および資源化を達成する環境低負荷技術システムの開発を進める。温室効果ガスについては、排出係数の精緻化およびインベントリ解析による検討を踏まえ、液状廃棄物処理システム全体での温室効果ガス最小化システムを検討する。単独処理浄化槽の合併化については、現場での制約条件や技術上の要件を明らかとし、変則合併システムによる適正処理技術の開発を行う。また、これらの要素技術開発と同時に、今後の社会条件の変化に対応した長期的視野に立った汚水処理施設整備の在り方について検討を開始する。

(4)廃棄物の不適正管理に伴う負の遺産対策
堆積廃棄物現場の火災を未然に防ぎ、沈静化させるための予備調査手法の確立を目指して、現場観測データから火災発生までのメカニズムの評価を行う。また、全国の火災発生状況ならびに消火技術に関するアンケート調査を実施する。無許可輸入されたPCN原体は保管中であり、ジオメルト法による分解実証試験を行い、実処理への適用性を評価する。微量PCB混入廃電気機器中の絶縁油のPCB測定法について、簡易定量法及び迅速判定法の評価を行う。

4.基盤型な調査・研究の推進
(1)廃棄アスベストのリスク管理に関する研究
石綿含有廃棄物の無害化処理における各媒体、処理過程に適用可能な電子顕微鏡と光学顕微鏡を併用した分析法を確立する。建材や廃棄物等の固体試料中の石綿測定法に関して、偏光顕微鏡と位相差顕微鏡を併用した測定法の検討を行う。石綿分析の精度管理に関して、リロケータブルスライドを用いたクロスチェックを実施する。建材系廃棄物及び一般廃棄物の処理・再資源化施設において、石綿飛散実態調査を行う。

(2)資源循環に係る基盤的技術の開発
将来的に有望と見込まれる新規資源化技術等の調査研究に関し、研究会組織を継続して実施することに加え、国内外全体に範囲を広げて、優れた研究開発を行っている機関との連携を模索する。また、高周波誘導加熱による金属・樹脂複合材料からの金属分離・回収技術について、流動化による金属の分離挙動についてさらに検討し、高周波照射時に発生する分解生成物の定性・定量を併せて行う。

5.資源循環・廃棄物処理に関するデータベース等の作成
引き続きデータベース構築の作業を実施し、適宜公開を行っていく。そのなかから,2005年産業連関表対応環境負荷データベース,一般廃棄物実態調査アーカイブ,産業廃棄物・建設系再生製品のデータ,製品・ストックの使用年数・寿命データベースを公開することを今年度の優先事項として実施する。また,翌年度以降のデータベース公開を目指し,土石系資源の循環技術データ,石油化学製品等のフローデータ,有機性廃棄物データ,アジアの廃棄物データの収集を進める。

課題代表者

森口 祐一