- 予算区分
- AF 奨励
- 研究課題コード
- 0711AF303
- 開始/終了年度
- 2007~2011年
- キーワード(日本語)
- 東京湾,環境変化,水域汚染,サメ類,生活史特性
- キーワード(英語)
- TOKYO BAY, ENVIRONMENTAL CHANGES, WATER POLLUTION, SHARKS, LIFE HISTORY TRAITS
研究概要
1977-1995年(東京大学水産資源学研究室)並びに2002-2006年(国立環境研究所)の調査により、近年の東京湾では、80年代の優占種減少と、サメ類など大型種増加が著しいことが判明し、世界的に稀有な知見となった。生態系を構成する生物群集の時系列変化を知り、人間活動との関連を解析するためには、長期観測が必須である。一方、サメ類は、近年増加しているものの、肝重量指数が減少し、栄養状態の悪化が疑われる。東京湾の環境保全に向けて、底魚群集と共にサメ類資源の動向を長期に追跡してその要因を調べる。
研究の性格
- 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
東京湾の20定点での年2〜4回の環境及び試験底曳き調査(試験底曳きは各定点で10分間実施)とともに、毎月のホシザメ試料採集を行う。水温、塩分、溶存酸素量、栄養塩類などを測定し、水平・鉛直分布や季節変化を解析する。底棲魚介類試料は、魚類、甲殻類、軟体動物及びウニ類を対象に種組成と現存量について解析し、経年変化を示す。特に、サメ類のほか、エイ類、スズキなどの大型種の経年推移を解析する。サメ類漁獲の聞き取り調査も行う。また、溶存酸素量などの環境要因との関係を解析する。一方、サメ類の分布、年齢と成長(脊椎骨による年齢査定)、食性(胃内容物解析、安定同位体比分析)、性成熟(交尾器、生殖腺等組織検査、胎仔数算定)を解析し、近年の東京湾におけるサメ類の個体群動態と生活史特性を明らかにする。また、過去の東京湾産サメ類の生活史特性と比較し、生活史のどの点が変化したのかを明らかにして、個体群動態や貧酸素水塊等の環境要因との関連で解析する。必要に応じて、サメ類試料中の重金属や化学物質の濃度を定量し、体内濃度と生活史特性変化との関連性を検討する。また、餌生物の分布や動態、餌生物や繁殖場所を巡る競合等の種間関係についても解析する。こうして、近年の東京湾で観察されるサメ類資源の増大傾向を追跡すると共に、その要因を物理・化学及び生物学的観点から調べ、近年の東京湾におけるサメ類の個体群動態と生活史特性変化の要因を探る。
今年度の研究概要
東京湾の20定点で環境及び試験底曳き調査を実施する。水温、塩分、溶存酸素量、栄養塩類等の測定も行う。底棲魚介類試料について、サメ類を含む魚類、甲殻類、軟体動物及びウニ類の種組成と現存量(個体数及び重量)を調べ、経年変化を解析する。また、2007〜2008年度に採集したホシザメ試料について、成熟体長の低下、産仔数の減少や未発生の受精卵と思われるものの存在などが観察されたことから、新たにサンプリング調査を行い、近年の東京湾産ホシザメの生殖を巡る異常について詳細な解析を進める。また、個体群動態と貧酸素水塊などの環境要因との関連で解析を試みる。
備考
山口敦子(長崎大学水産学部)
- 関連する研究課題
- 0 : 環境リスク研究センターにおける研究活動