脳の発達・性分化に及ぼす揮発性有機化合物の影響と作用機序の解明（平成 20年度）
Effects of volatile organic compounds on the mechanisms for brain sexual differentiation

研究概要

成人と比べて化学物質の影響を受けやすい胎児・小児の脳は発達段階にあり、性分化する。室内空気の汚染物質とされる揮発性有機化合物が脳神経系に作用して影響を及ぼすことが知られているが、幼若個体への影響に関する知見は乏しい。時間軸における発達期や性別は化学物質の曝露影響の程度を左右する要因（感受性要因）となることから、本研究では、これらの要因を配慮した揮発性有機化合物の有害性評価を目的として、発達期曝露による脳の発達および性分化への影響を検討し、その作用機序を解析する。

研究の性格

• 主たるもの：基礎科学研究
• 従たるもの：応用科学研究

全体計画

性分化した脳内には神経核の大きさやニューロン数など形態学的な性差がみとめられる領域（性的二型核）が存在している。本研究では、性的二型核として知られる前腹側脳質周囲核（AVPV）、Sexually dimorphic nucleus of the preoptic area（SDN-POA）等を解析対象として、揮発性有機化合物の発達期曝露による脳の発達および性分化への影響を検証する。

今年度の研究概要

前年度研究から、周生期トルエン曝露が新生仔ラットのSDN-POAにおけるアポトーシスに影響を及ぼすことが示された。本年度は、成熟期のSDN-POAに対する周生期トルエン曝露の影響を調べ、トルエン曝露による細胞死の増加がSDN-POAの形成に対して影響を及ぼすか否かを検証する。