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東アジアの温室ガス収支推定のための大気多成分観測データの診断モデル解析(平成 19年度)
Model Analysis of Observational Data on Atmospheric Tracers for the Greenhouse Gas Flux Estimation in East Asia

予算区分
BB 環境-地球一括
研究課題コード
0608BB931
開始/終了年度
2006~2008年
キーワード(日本語)
東アジア,温室効果ガス,大気輸送モデル,ラグラジアン型輸送モデル,グリッド型輸送モデル,インバースモデル,CO2フラックスデータベース
キーワード(英語)
EAST ASIA, GREENHOUSE GAS, TRACER TRANSPORT MODEL, LAGRANGIAN TRANSPORT MODEL, GRID TYPE TRANSPORT MODEL, INVERSE MODEL

研究概要

中国・東南アジアの各国の急速な経済発展は、大気汚染ガスや温室効果ガスの排出の急速な増加をもたらしている。人類の持続的な発展のためには、これらの国々の排出削減が必須である。
 しかしながら、東アジアでは欧米のような高密度の観測ネットワークを早急に形成できる見込みがない。本研究では、多成分の観測データで、多地点データの解析と同様な目的が達成できる点に着目した。多成分大気微量成分濃度には、たとえば、ハロカーボンは都市で、一酸化炭素は森林火災や自動車から、酸素/窒素比は海洋と陸域の分別など、発生源を区別する情報を含んでいる。これらの大気観測データを用いることにより、より信頼性の高い発生源分布の推定ができる。このような数は少ないが高度な観測から発生源分布の詳細を解明しようという研究の進め方は、多数の観測点を展開するという従来の発展方向と逆であるが、大きなポテンシャルを有している。
 本研究では、発生/吸収の空間分布を定量的に解析・導出することを目標とする。具体的には、グローバルな大気輸送モデルと地域的なラグラジアン型輸送モデルを使い、発生源・観測点の相関マトリックスを計算する。人為的な二酸化炭素やメタンの発生源に拘束を与えるには、地域や発生源タイプを区別する多くの大気微量成分濃度データを併用した、多成分ベイエシアンインバースモデルを使う。同時に、随伴モデルによる解析も視野に入れ、相互に比較し、新たな手法の開発にも挑戦する。
 多成分のモニタリングデータの総合的利用・解析方法が確立されることにより、東アジア・東南アジアの正確な排出インベントリの作成が可能となる。これにより、ポスト京都議定書の取り決めに有益な情報が提供され、東アジア・東南アジア諸国の排出削減の努力が促進される。

研究の性格

  • 主たるもの:応用科学研究
  • 従たるもの:技術開発・評価

全体計画

多成分長期連続観測データベース、フラックスインベントリ、気象・地理情報データベース、およびグリッド型とラグラジアン型を併用した輸送モデルを用いて、東アジアにおける人為起源温室効果ガスの発生源のタイプと空間分布を明らかにする。本研究は、データベース整備、輸送モデル開発、発生源の特定の3課題に細別される。(1)輸送モデル計算に必要なデータベースの整備  東アジア(特に中国)の生態系や活発な経済活動による人為的な排出源インベントリデータやフラックスデータベースを整備する。また、地域的な放出・吸収を正確に捉えるためには、その地域の気象・地理情報を考慮に入れる必要がある。そのためのデータベースも整備する。
(2)グリッド型とラグラジアン型を併用した輸送モデルの開発  全球規模の計算に対してはグリッド型輸送モデルを実行し、特に着目する地域に対してはラグラジアン型輸送モデルを実行するという、ハイブリッドモデルを開発する。ラグラジアン型モデルには、トレーサーのプルームをラグラジアン的に追跡することにより、トレーサーの輸送・拡散を疎なマトリックスを用いて計算できるトラジェクトリモデルを用いる。
(3)インバースモデルによる人為起源温室効果ガスの発生源の特定  多変量を扱うことが出来るインバースモデルを開発する。そのため国際会議等に出席し情報収集を行う。そして、波照間や落石等の多成分連続観測サイトで得られた観測データに対してインバースモデルを実行し、東アジアにおける人為起源の温室効果ガスの発生源の特定を行う。

今年度の研究概要

波照間や落石等で得られた観測データを収集・処理し、大陸起源の温室効果ガスだけでなく大気微量成分に関するデータも整備する。全球規模のグリッド型輸送モデルと結合された地域的なラグラジアン型輸送モデルを開発し、その計算結果をモニタリングサイトにおける観測データと比較する。どの程度の領域をラグラジアン型で計算すべきかに関しては、数値実験を繰り返すことにより最適値を試行錯誤により見出す必要がある。

関連する研究課題
  • 0 : 中核P1 温室効果ガスの長期的濃度変動メカニズムとその地域特性の解明

課題代表者

Shamil Maksyutov