- 予算区分
- AH 地環研
- 研究課題コード
- 0406AH019
- 開始/終了年度
- 2004~2006年
- キーワード(日本語)
- 海産大型植物,海草,生態系機能,ベントス,環境修復
- キーワード(英語)
- marine macrophytes, seagrass, ecological functions, benthos, environmental restoration
研究概要
アマモ場生態系は、沿岸水から(1)栄養塩を吸収、(2)トラップした有機物を根圏へ供給、(3)根茎を発達させることで生じる地固め効果によって、攪乱の大きい沿岸域において魚類や底生生物の餌場および生息場として機能する。また干潟から浅海域への移行帯として、物質循環と生物多様性の維持にとっても重要な要素であり、近年NPOや自治体による自然再生の対象としてにわかに脚光を浴びている。日本におけるアマモ場の再生は、残り少ない現存植生の保護の観点から栄養株移植法ではなく、種子や実生を成熟させて移植するという繁殖子再生法が適している。しかし繁殖子を大量に奪われた個体群は年令構造を乱す危険性があり、同時に自然交雑とは異なる交雑を引き起こすリスクも発生する。また、一時的にアマモ類の導入に成功しても持続して定着している事例は少ない。本研究ではアマモ場再生が抱える問題点を解決すべく、(1)再生植物の適正な選定を行い、(2)残存するアマモ場と再生したアマモ場の生態系機能の比較を行い、(3)生態系機能によって海域生態系の再生を行うことを目的とする。
研究の性格
- 主たるもの:行政支援調査・研究
- 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備
全体計画
本研究では再生植物の適正な選定を行うために、(1)対象水域でのアマモ場に関する過去の分布情報を収集し、(2)現存および過去のアマモ場における生育環境項目を計測し、両者を総合して(3)再生対象地を選定する。同時に?現存アマモ場における遺伝子レベルの多様性に配慮して移植元のアマモ場を決定する。再生方法については、これまで提案されてきたいくつかの方法に加えて今回新たな手法も加え、定着率の比較を行う。再生しようとするアマモ場の生態系機能は水質、底質、競合生物の制御として機能するものに重点をおき比較を行う。本申請ではこれらの研究を自治体研究所(平成16年度は福岡市および鳥取県)と協力し、現地での実証試験を行うことで連携する。
今年度の研究概要
(1)中海をはじめとする全国の水域に残存する底生生物個体群、特にアマモおよびコアマモの生息地を中心とした各種の環境要因をまとめ、アマモ場構成種および競争種の生育に関する環境条件のデータベース化を進める。(2)根圏環境に注目した研究を進め、広島県等の協力を得て、根圏のとくに酸素環境の計測手法の開発、酸素供給手法の開発、酸素環境の改善が成育に及ぼす影響を評価する。
備考
共同研究機関:福岡市保健環境研究所(幹事),鳥取県衛生環境研究所,広島県保健環境センター,兵庫県立健康環境科学研究センター,三重県科学技術振興センター
- 関連する研究課題
- 0 : その他の研究活動(生物圏環境研究領域)
課題代表者
矢部 徹
- 生物多様性領域
生態系機能評価研究室 - 主任研究員
- 博士(理学)
- 生物学