- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 0506CD958
- 開始/終了年度
- 2005~2006年
- キーワード(日本語)
- 大気汚染, 生活の質
- キーワード(英語)
- air pollution, quality of life
研究概要
大気汚染の健康影響については、死亡や疾患との関連について多くの研究がなされてきた。今日、公衆衛生において「生活の質」(QOL)の重要性が認識されてきており、大気汚染による健康影響をQOLにより評価する必要があることが指摘されている。アウトカムとして健康関連QOLを用いることにより、死亡や罹患では見えなかった大気汚染の健康影響を顕在化させる可能性がある。そこで、本研究では大気汚染と健康関連QOLとの関連を検討した。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:政策研究
全体計画
2005年度は健康関連QOLデータセットの整理ならびに、大気汚染データの整理を行い、解析データセットの作成を行う。可能であれば、1次解析を行い学会発表等を通じて、外部研究者との意見交換を行う。2006年度は、主たる研究論文の執筆ならびに、研究上の限界を考察し、主たる研究結果を補完する研究を行う。
今年度の研究概要
2002年10月に実施されたSF-36(健康関連QOLの代表的指標)の日本国民標準値を調査した際のデータベース(全国から4500人を無作為抽出し、10月中に回答した2896名)に、全国の一般環境大気測定局(約1700地点)で記録された浮遊粒子状物質(SPM)、NOxおよび光化学オキシダント(Ox)濃度のデータ(2002年9月、10月、および、9-10月の平均値)を市区町村単位でリンケージさせ、SF-36の「活力」および「心の健康」ドメインの得点を目的変数、各大気汚染濃度を説明変数として共分散分析を行った(大気汚染濃度は対象者数を4グループに均等に分けられるようにカットポイントを決め、カテゴリ変数とした)。調整因子は、性別、年齢、世帯年収、呼吸器系疾患の有無、居住地地域、都市人口、気温および湿度とした。調整前の解析では、9月および9-10月2ヶ月平均のOxの高濃度曝露群では「活力」が低い傾向がみられた(それぞれP=0.043および0.028)。この関連は、緒因子で調整してもみられた(それぞれP=0.047および0.033)。一方、SPMあるいはNOxと「活力」との関連は見られなかった。未知の交絡因子の存在は否定できないが、Ox濃度と「活力」との関連が示唆された。本研究の成果を第16回日本疫学会学術総会(2006年1月名古屋)にて発表した。また、Journal of Epidemiology and Community Health誌(2006年第60巻pp173-179)に掲載された。
課題代表者
山崎 新
- 環境リスク・健康領域
エコチル調査コアセンター - センター長
- 博士(社会健康医学)
- 医学