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吸収線形の隔翼における振る舞いについて(平成 17年度)
Behavior in far-wing region of spectral line shape

予算区分
AF 奨励
研究課題コード
0505AF525
開始/終了年度
2005~2005年
キーワード(日本語)
リモートセンシング
キーワード(英語)
remote sensing

研究概要

吸収帯を表現する吸収線形には各吸収線を適切に再現することが求められる。しかし吸収線の中心から遠く隔たる領域(wing, far-wing, 隔翼等と呼ばれる。ここではfar-wingを用いる。)ではその表現は不完全である。CO2の吸収線のfar-wing部分での吸収はLorentz線形と比べると非常に吸収が小さいことが知られている。そこで吸収線のfar-wingでの吸収係数はLorentz線形にc-factor等を乗じて経験的に表現される。吸収帯によってはfar-wingの重ね合わせの効果が大きくfar-wingの研究が必要となっている。本研究提案ではfar-wingの効果が吸収にどのように寄与するか、またfar-wingの影響を取り込むことによる吸収スペクトルの変化について追求する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

本提案は吸収線のfar-wing領域での振る舞いを研究することが目的とする。そのためfar-wingの影響を測定することが容易なband-headが存在する吸収帯について測定を行う。far-wingでの吸収を探るには吸収する分子数、温度等が関係してくるため測定温度、圧力、光路長を変えて測定を行う必要がある。各測定スペクトルからfar-wingによる吸収をc-factorを導入して算出する。測定温度を180-300K程度まで変化させて測定を行い、c-factorの温度依存性を導出する。そのために5-10点の測定温度でデータを取得する必要がある。
解析結果から得られたc-factorの大気の吸収における影響を評価する。現在c-factorの温度依存性について放射伝達モデルLBLRTMでは考慮されていない。現行のLBLRTMのc-factorと温度依存性を考慮したc-factorを用いてCO2 n3帯の存在する4mm付近の大気スペクトルを再現しc-factorの効果を計る。

今年度の研究概要

測定にはフーリエ変換赤外分光計を用いる。測定条件によってBruker IFS 125HR の測定器を使う。4.3mmの大気の窓領域におけるc-factorを求めるための測定は測定領域、試料ガス、圧力、光路長、測定温度等の条件を考慮する必要がある。測定領域はCO2 n3 bandのR枝から帯頭より高波数領域 (2350-2500cm-1付近)、試料ガスはCO2の純ガス、またはCO2-N2の混合ガス、CO2-O2の混合ガスが考えられる。混合ガスの場合はその混合比についても考慮が必要である。純ガスの測定ではself broadeningによる圧力広がりが、また混合ガスの測定からはN2,O2 broadeningによる圧力広がりがそれぞれそれぞれ求まる。低圧での測定ではfar-wingの影響は非常に小さいため光路長を長くする必要があるが、温度条件によっては測定セルの制約から光路長が決まっているため圧力を高くする必要がある。また高圧での測定では吸収は大きくなり圧力広がりの影響を考慮せねばならないが、far-wingの吸収自体も大きくなる。測定データについて非線形最小自乗法を用いたフィッティングからc-factorを求める。提案者はこれまで吸収線形にVoigt関数を用いて解析を行ってきたが、本研究提案では様々な吸収線形をフィッティングに用いる予定である。Lorentz関数からsub-Lorentz, Voigt関数などを吸収線形として用いる予定である。c-factorについてはいくつかの関数型が提案されているが、選択する吸収線形とも関連するので吸収線形とc-factorの関数型を選ぶ際は慎重に考察する。

課題代表者

田中 智章