研究の背景
近年、少子高齢化、グローバル化などの社会変化や、女性の社会進出、晩婚化・非婚化などの社会の価値観・規範の変化により、私たちのライフスタイル・消費は多様化しています。国立環境研究所においても、シナリオアプローチを適用した将来シナリオに関する研究が過去に行われてきました(例えば、脱温暖化2050プロジェクトや近未来の循環型社会シナリオなど)が、個人のライフスタイル・消費の多様性や重層性を十分に考慮したものではありませんでした。
本プロジェクトでは、2030年の日本のライフスタイルがどのようになるかについて重層的なシナリオを記述し、持続可能なライフスタイルと消費へ転換していくための方策を提言することを目的としています。
(参考文献)青柳みどり「持続可能なライフスタイルの実現に向けて」(国環研ニュース32巻6号「特集 持続可能な社会への転換方策」)、2014年2月
持続可能なライフスタイル・消費とは?
「持続可能なライフスタイルとは、基本的欲求を満たし、より良い生活の質を提供し、ライフサイクルを通じて自然資源の使用と廃棄物や有害物質の排出を最小限にしたうえで将来世代の必要を脅かさないような行動と消費のパターンであり、人々はこれを自分と他人と仲間意識の醸成や確認、または差別化に使う。持続可能なライフスタイルは、さまざまな社会の文化、自然、経済や社会的な遺産を反映させていなくてはならない。
持続可能な消費は、モノやサービスを購入したり消費したり廃棄する過程に関連する一方で、持続可能なライフスタイルは、もう少し広い活動、例えばコミュニケーション、娯楽、スポーツ、教育などをセットで含むものである。」
(参考文献)Report.PDF: Marrakech Task Force on Sustainable Lifestyles
UNEP Marrakech Process on SCP (Sustainable Consumption and Production) website: http://www.unep.fr/scp/marrakech/taskforces/lifestyles.htm
研究の方法
まず既存文献や先行研究などからライフスタイルの変化要因と将来メジャー化(主流化)するライフスタイル変化の主要トレンドを明らかにします。続いて、「16のライフスタイル変化」をもとに、2030年の未来像を考える上で検討すべき論点を整理しました。その後、博報堂の開発した未来洞察手法を用いて、未来イシュー仮説を設定し、突発的な将来の変化を捉えた未来のライフスタイル・シナリオのアイディアを発想します。ワークショップを通じて浮かび上がったアイディア案について、多様なライフスタイルが描かれているか、整合性がとれているかといったさまざまな観点から考察してシナリオの細部を設定し、未来シナリオを作成します。
未来洞察手法について
博報堂のフューチャーダイナミクス©による未来洞察手法の基本構造は、未来イシューと呼ぶ「生活者の主要トレンド」と、スキャニングによる「不連続な生活変化の洞察」との交点を、ワークショップ形式で議論(強制発想)し、未来シナリオを創発するものです。この手法では、「あるべき未来」「ありたい未来」ではなく、「ありうる未来」を客観的に想定しながら未来像を描くことができます。