低炭素研究プログラム(課題解決型研究プログラム)(平成28~令和2年度)
国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-142-2024
本報告書は、2016~2020年度の5年間にわたって国立環境研究所第4期中長期計画の課題解決型研究プログラムとして実施した「低炭素研究プログラム」の成果をとりまとめたものです。
2015年に国連気候変動枠組条約のCOP21においてパリ協定が採択されて以降、本研究プログラムの実施期間中に、気候変動をめぐる国際動向は目まぐるしく展開しました。2016年にパリ協定が発効、2017年には米国トランプ政権がパリ協定からの離脱を宣言、2020年には中国が2060年までの脱炭素化、日本が2050年までの脱炭素化を宣言、そして米国がバイデン政権となりパリ協定に復帰しました。
国内的にも、2019年に取りまとめられた「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」で2050年の温室効果ガス排出量80%削減と2050年以降できるだけ早期の脱炭素化を目指した段階から、2020年には2050年までの脱炭素化に目標が切り替わりました。いわば、「低炭素」から「脱炭素」への目標の転換が起きたといえるでしょう。
本研究プログラムも、名称は「低炭素」でスタートしましたが、「脱炭素」を強く意識して研究を進めて参りました。プロジェクト1では、温室効果ガス等の動態の現状把握と機構解明を、パリ協定のグローバル・ストックテイクへの貢献を目指して発展させました。プロジェクト2では、パリ協定の長期目標である産業化前からの世界平均気温上昇量2℃、1.5℃の理解につながる、総合的な気候変動リスク研究を行いました。プロジェクト3では、そのパリ協定の長期目標を実現するための、定量的な政策評価研究と、制度研究を行いました。いずれのプロジェクトの成果も、2021から2022年に公表される気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書に貢献できたと考えます。
2021年に開始された国立環境研究所第5期中長期計画では、これらの研究をさらに発展させ、気候変動・大気質研究プログラム、脱炭素・持続社会研究プログラムなどの複数の戦略的研究プログラムとして展開しています。さらに、気候危機対応研究イニシアティブとして、これらの気候変動関連研究を一体的に推進しています。