第16回全国環境・公害研究所交流シンポジウム −PM2.5・DEP等大気中粒子の動態解明と環境リスク評価−
須賀 伸介
平成13年2月14~15日に,「PM2.5・DEP 等大気中粒子の動態解明と環境リスク評価」というテーマで,第16回全国環境・公害研究所交流シンポジウムを開催した。この交流シンポジウムでは,「環境研究に関する研究発表,意見交換を通じて地方公害研究所(以下,地公研)と国立環境研究所(以下,国環研)の研究者間の交流を図り,共同研究等の新たな展開に役立てるとともに,環境研究の一層の推進を図ることを目的とする(全国環境・公害研究所交流シンポジウム実施要領)」という趣旨で,第1回目の昭和61年以来,毎年第4四半期に開催している。
今年度も例年通り,当研究所大山記念ホールにおいて,国環研内に設置しているセミナー委員会の主催により開催した。
今回のシンポジウムのテーマの設定に際しては,地公研各機関の関心の高い問題を考慮したことはもちろんであるが,本テーマが独立行政法人化後に国環研が特に重点的に取り組む課題であること,複数の地公研と国環研との間で行われる共同研究(以下,C型共同研究)の課題と関連が深いことも考慮された。また,世論の関心が,浮遊粒子状物質やディーゼル排ガス等へ高まっているという点では時機をとらえたテーマであったとも言えよう。シンポジウムは2日間に地公研と国環研側から合計10件の研究発表と基調講演1題という構成で行われた。
初日は,国環研の大井所長,来賓としてお迎えした環境省の山田大臣官房審議官からの挨拶の後,まず基調講演として,国環研の地域環境研究グループ都市環境影響評価研究チームの新田総合研究官から「PM2.5/DEP の健康影響に関する疫学研究の動向」という演題で,今回のテーマに関連した研究の現状など包括的な話題提供があった。引き続き,測定法,局所動態把握,発生源把握に関係した6件の発表が行われた。
二日目は,先に述べた複数の地公研と国環研との間で行われるC型共同研究に関連したセッション「広域動態把握」が設けられた。まず最初に国環研の地域環境研究グループ都市大気保全研究チームの若松総合研究官からこの共同研究の紹介があり,引き続き4件の研究発表が行われた。最後に国環研の合志副所長から閉会の挨拶があった。
シンポジウム終了後には,例年通り国環研の施設見学会も開催し,シンポジウムに参加された地公研の一部の方々に所内の研究施設を御覧いただいた。シンポジウムには地公研関係者が106名,国環研から27名の合計133名の参加者があった。
プログラム
平成13年2月14日(水)
開会挨拶 国立環境研究所長 大井 玄
来賓挨拶 環境省大臣官房審議官 山田範保
1.基調講演,研究発表(第1セッション)測定法
座長:西川雅高(国立環境研究所)
(1)基調講演 PM2.5/DEPの健康影響に関する疫学研究の動向........新田裕史(国立環境研究所)
(2)TEOM,GRIMM,β線吸収式自動測定機とFRMによる環境大気中PM2.5濃度の測定比較........平野耕一郎(横浜市環境科学研究所)
(3)LV(またはFRM)によるPM2.5濃度測定の問題と課題 -使用フィルタの材質と測定値の違い,およびPM濃度測定へのガス状物質の影響について-........平野耕一郎(横浜市環境科学研究所)
2.研究発表(第2セッション)局地動態把握,発生源把握
座長:若松伸司(国立環境研究所)
(4)道路沿道の局地NOx高濃度汚染とその対策について........池澤 正(兵庫県立公害研究所)
(5)風洞実験による道路沿道の高濃度汚染気候に関する研究........上原 清(国立環境研究所)
(6)自動車用トンネルを利用した排出ガス調査法について........石井康一郎(東京都環境科学研究所)
(7)ディーゼル排出ガスに含まれる粒子状物質の特徴........秋山 薫(東京都環境科学研究所)
平成13年2月15日(木)
3.研究発表(第3セッション)広域動態把握1
座長:平野靖史郎(国立環境研究所)
(8)地公研と国環研とのC型共同研究の紹介........若松伸司(国立環境研究所)
(9)島根県における光化学オキシダント濃度の特徴........藤原 誠(島根県保健環境科学研究所)
(10)大気質モデルによる大陸スケールの物質動態の解析........菅田誠治(国立環境研究所)
4.研究発表(第4セッション)広域動態把握2
座長:平野靖史郎(国立環境研究所)
(11)大気常時監視システムの活用について........山川和彦(京都府保健環境研究所)
(12)環境リスク評価のための統合情報システムの構築と都市大気汚染問題への適用........森口祐一(国立環境研究所)
閉会挨拶........国立環境研究所副所長 合志陽一