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情報交流センターを目指して

佐藤 雄也

カルチャー・ショック

 環境情報センター(以下センター)への私の異動を聞いた人から,センターにはワープロはないよ。皆パソコンだから。と冷やかされたものだが,まあなんとかなるさ,キーをたたくのにそんなに差はないはず。というわけでなんとかやっている。それより驚いたのは,パソコンがワープロとしてではなく,通信システムに威力を発揮しているのを目の当たりにしたことである。しかも,双方向の。これは私にとっては,文字通りカルチャー・ショックであった。それから3カ月がたった。

情報収集基地から情報交流基地へ

 従来,国の情報関連の組織は米国の中央情報局(CIA)を引き合いに出すまでもなく,国の政策遂行に必要な情報を収集するのが主目的で,情報の提供は従であったといえよう。センターの前身である環境情報部が国立公害研究所発足当初(1974年)から設置された数少ない部のひとつであったことは,環境研究にとって情報収集体制の構築が不可欠であるとの認識に立っていたことにほかならない。センターがこうした期待に応えるべく,学術情報の収集整備,情報検索システム及びデータベースの構築などに努めてきたことは,センターに来る前からある程度は知っていたつもりである。

 しかし,ここ数年で情報の扱われ方が著しく変わってきているようだ。パソコンによる情報交流の加速である。これが前述のカルチャー・ショックの所以である。各省庁が職員一人一人にパソコンを配置したり,ホームページ作りに邁進しているように,情報を収集するだけでは,今や世の中から相手にされなくなりつつある。もちろん情報提供だけでも不十分である。提供した情報に対する問い合わせへの対応が不可欠である。情報提供の本質的な意義は情報のやりとり(交流)にあるのではないか。こうした動きは環境基本法が目指す国民はじめ各界参加型の環境保全活動を支える情報の交流促進にとって歓迎すべきことである。センターは情報収集基地から情報交流基地へと,文字通り情報センターとなる段階に入っているといえよう。

情報交流の活性化に向けて

 幸いにして当研究所は既にホームページを開いている。パソコンも各人に行き渡っており,所内の情報システムは各省庁の中でも最先端をいっている。国の内外からの多種多様の問い合わせへの対応には,研究所の皆様にもご協力いただいている。

 さて,ここで思うのは,外部からの問い合わせに対応するだけでなく,外部に対して問いかけとか,なんらかの働きかけを行うことが大切ではないか,ということである。適切な例であるか心もとないが,例えば意識調査,情報照会など研究分野でも,もっと積極的に情報システムを活用できないものか。外部からの情報収集の成果を再び外部にフィードバックすれば,広く一般の環境保全活動への参加意識を呼び起こし,研究所の研究活動についての関心と理解が一層高まるのではないか。ひいては人的財源的リソースが得られやすくなり,日本の環境研究の中心として研究所のさらなる活性化につながるのではないか。この想いは,カルチャー・ショック以後,周りがだんだん見えるようになるにつれ,弱まるどころか,強くなる一方である。

 情報交流の活性化に向けてその機能の強化に努めることがセンターの使命ではないかと考えている。皆様のご協力をお願いします。

(さとう かつや,環境情報センター長)

執筆者プロフィール:

1973年環境庁入庁。以来,大気モニタリング,公害患者の補償制度,在米日本大使館環境担当書記官,国際関係業務,環境影響審査,先端産業の未規制物質対策,地球温暖化対策,広報などを担当して本年7月から現職。