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成層圏オゾン層の行方
- 3次元化学モデルで見るオゾン層回復予測

環境儀 NO.26

秋吉英治/永島達也
世界が直面した地球規模の環境問題、オゾン層の破壊とその保護それを検証する3次元化学モデルは、スーパーコンピュータ上に50年後のオゾン層の回復状態を予測しました。
(写真背景:北極で見られたPSC(極成層圏雲)。2005年1月31日、WMO(世界気象機関)のBraathen博士撮影。)

 1982年、世界で初めてオゾンホールが南極で観測されました。それから四半世紀が過ぎようとしています。この間、観測、理論、室内実験など多方面の研究が精力的に進められ、成層圏オゾン層破壊現象の詳細とそのメカニズムの解明が進みました。世界では1985年にオゾン層破壊物質を規制する「ウィーン条約」の採択、1989年にはフロンなど具体的なオゾン層破壊物質の規制措置を定めた「モントリオール議定書」の発効など、国際的な取り決めも行われています。

 一方、成層圏の大気変動を立体的に捉えオゾン層破壊のシミュレーションが可能な3次元化学モデルの開発が本格的に開始されたのは、世界的にも1990年代に入ってからでした。国立環境研究所では、東京大学気候システム研究センターと共同で3次元化学モデルを日本で初めて開発し、その研究成果は国連傘下の世界気象機関(WMO)が発行する「オゾン層破壊の科学的アセスメント」に掲載されるなど、世界的にも評価されています。

 本号では、3次元化学モデル(化学輸送モデル、化学気候モデル)を使った成層圏オゾン層モデリング研究の概要と成果を紹介します。