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2020年10月30日

人口減少・高齢化社会における
ごみ処理事業の将来展望

特集 維持可能な循環型社会への転換方策の提案

河井 紘輔

 日本は世界に先駆けて、人口減少・高齢化社会に突入した国です。これまで人口は右肩上がりでしたが、2008年の1億2,808万人をピークに減少し始めました。年少(0~14歳)人口及び生産年齢(15~64歳)人口が減少していることが人口減少の主な要因ですが、その一方で老年(65歳以上)人口は増加しています。2015年に実施された平成27年国勢調査によると、日本の高齢化率(総人口に占める老年人口の割合)は26.6%と報告されています。国立社会保障・人口問題研究所によると、老年人口は2042年までは引き続き増加し、2043年以降は年少人口、生産年齢人口、老年人口のすべてが減少しますが、高齢化率は36~38%で推移すると予測されています。これらは全国の状況を示したものですが、地域によってはすでに人口減少・高齢化が進行していて、2015年の時点で1747のうち221の自治体(本特集では「市区町村」を意味します)において高齢化率が40%を超えています。

 人口減少・高齢化が進むと、ごみ処理事業にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを考えてみます。なお、ここでの「ごみ」とは、産業廃棄物ではなく一般廃棄物(家庭などから排出される廃棄物)を意味します。高齢者にとって重いごみを集積所(ステーション)まで運ぶことは大きな負担になりますが、高齢化の進行によって高齢者世帯からごみを適切に収集できなくなる可能性があります。また、人口減少に伴って居住地が分散化し、廃棄物の収集運搬効率が低下する可能性があります。さらに、人口減少に伴ってごみの発生量が減少しますが、処理施設の稼働率(処理能力に対するごみ処理量の比率)が低下し、非効率な運転となったり、無駄なエネルギーを消費する可能性があります。一方、生産年齢人口(労働力人口)の減少に伴って税収が減少し、自治体の財政力が低下する可能性があります。自治体の財政がひっ迫すると新規雇用を抑制することによって人材不足に陥り、ごみ行政に支障をきたす可能性があります。さらに財政がひっ迫すると、ごみ処理事業に不可欠な収集運搬車両や処理施設を更新(買い替えや建て替え)できなくなる可能性があります。

 自治体がごみ処理事業の主体であることは今後も変わらないと思われます。しかし、人口減少・高齢化社会においては、ごみ処理事業に必要なヒト・モノ・カネを自治体が単独で調達できなくなることも考えられます。人口減少・高齢化が進行する地域では、当該自治体だけでごみ処理事業を抱え込むのではなく、外部の主体と連携し、ヒト・モノ・カネを調達することが有効です。例えば、複数の自治体で処理施設を共同運営することも一手です。あるいは、民間の事業スキームを用いて、自治体にはない技術やノウハウを活用することも近年着目されている方策です。

 これまでは、(資源化も含めた)ごみ処理を適正に実行することを唯一の目的として、各々の自治体によってごみ処理事業が運営されていました。人口減少・高齢化社会では、様々な主体がごみ処理事業の運営に参画することにより各主体が有するヒト・モノ・カネが有機的に活用され、ごみ処理事業は多様化すると考えられます。人口減少・高齢化社会においては、ごみ処理事業が脆弱になるといったピンチを、地域に新たな価値を創造するといったチャンスに変える絶好の機会とも言えます。

 以上、人口減少・高齢化社会におけるごみ処理事業の将来展望を大胆に述べてみましたが、本特集では資源循環研究プログラムのプロジェクト3で着実に実施している人口減少・高齢化に関連する調査研究を紹介します。まず「研究プログラムの紹介」では、人口減少などの社会変化が見込まれる将来について、現状と同じ対策を講じるシナリオと、追加的な対策を講じるシナリオを設定し、ごみフローの変化や対策の効果を推計した研究を紹介します。次に「研究ノート」では、高齢化がごみ処理に与える影響、高齢者によるごみ出し問題の構造、ごみ出し支援(ふれあい収集)の実態を整理しています。最後に「環境問題基礎知識」では、高齢化社会への対応のために行った調査結果をもとに、日本のごみ収集方式の特徴と今後の課題について示します。

(かわい こうすけ、資源循環・廃棄物研究センター 循環型社会システム研究室 主任研究員)

執筆者プロフィール:

筆者の河井 紘輔の写真

ポストコロナ社会(新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後の社会あるいは新型コロナウイルスと共存する社会)のライフスタイルやごみの発生状況はこれまでと比べてどう変化するのか、気になる日々です。