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2013年6月28日

化学物質の登録と管理:特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)

特集 環境汚染物質と先端化学計測
【環境問題基礎知識】

木之下 彩子

 豊かで便利な私たちの生活は、全て化学物質によって成り立っています。私たちの生活は物であふれ、お店に行けば便利なものが何でも手に入ります。お店で売られるこれらの商品は次から次へとメーカーで開発が進み、少しずつ改良されています。消費者の声を反映して改良される物もあれば、もしかしたら商品に使われていた物質に有害性が認められ、代替物質での商品変化になっているものもあるかもしれません。

 化学物質の中には、私たちの健康や生態系に有害性のあるものがあります。それらの有害な化学物質がどこで、どのくらい使用され排出されたのか、また廃棄物に含まれて事業所の外へどのくらい移動したのかなどのデータを集計し、公表する制度があります。それがPRTR(Pollutant Release and TransferRegister)法に基づく化学物質排出移動量届出制度であり、PRTR法は日本では1999年に制定されました。

 対象になる化学物質は、現在462物質が指定されています。さらにそのうち、発がん性などが認められる物質として15物質が指定されています。例えば、ガソリンやたばこの煙にも少量含まれるベンゼン、工業用洗剤などに含まれるノニルフェノール、クーラーの冷媒等に含まれるジクロロジフルオロメタンなどがあります。これらの化学物質を製造したり使用している事業者は年に1回、排出量や移動量を都道府県経由で国に届け出ます。届け出られた情報は、国でデータを集計し、それに併せて家庭や農地、自動車等からの排出量も推計して集計され、公表されます。集計結果の資料については、以下のホームページにて掲載されており、過去10年分が閲覧できます。

図
対象の事業者はPRTR対象化学物質の環境中への排出量、廃棄物に含まれての移動量を届出なければいけません。排出量は青字①~④に示したものに分けられ、移動量は橙色⑤~⑥に示したものに分けられます。(環境省発行ガイドブックより改編)

 このようにして、毎年どのような化学物質がどこで発生しどれだけ排出されているか、私たちが知ることができるようになっています。また、対象製品の中には、例外的に届け出の対象外とされている製品もあります。金属くずや空き缶などの再生資源、一般消費者用に製造されている製品など、事業者による取扱いの過程で対象化学物質が環境中に排出される可能性が低いと考えられるものは、事業者の負担を考慮して、例外的に把握の対象外とされています。

 日本では1999年に制度化されるまで個々の化学物質に対して規制がされてきましたが、行政や事業者、個人それぞれの立場で情報を共有し、協力して化学物質の排出削減に取り組むために、PRTR法が導入されました。PRTR法の先駆的なものが1970年代にオランダで導入され、1992年に開催された地球サミットで国際的に広く認められました。

 PRTR法によって、化学物質別の移動量や排出量が分かるようになりましたが、それだけでは私たちの健康や生態系にどのような影響があるかまでは判断ができません。PRTRのデータだけでなく、環境中にどのくらい有害化学物質が存在しているのか、それらはどのように分解されてどこへ行くのかなど様々な観点から判断していくことが必要になります。そのためにも、これらの化学物質を取り扱っている事業者は、化学物質の管理をきちんとした上で排出量や移動量について地域住民と情報を共有していく必要があるのです。

 PRTR法については、環境省から「PRTRを読み解くための市民ガイドブック」という一般向けガイドブックが毎年発行されています。さらにこれらのことは、先に紹介した環境省や経済産業省のホームページの「PRTRインフォメーション広場」や「化学物質排出把握管理促進法」というページにおいて分かりやすく説明されています。また、ホームページ上に「PRTR目安箱」という窓口が設置され、相談や意見等を受け付けていますので、興味を持っていただけたら、まずはアクセスしてみてはいかがでしょうか。

(きのした あやこ、環境計測研究センター)

執筆者プロフィール

木之下彩子の写真

趣味はトレイルラン、縦走登山、山頂での昼寝。国内の山標高ベスト100踏破に向けて日々山遊びに出かけています(1位3776M~100位2667M)。写真はスイスのアイガー山麓で一服中の私。

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