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最終処分場

環境問題基礎知識

山田 正人

 家庭や事業所,工場等で営まれる経済活動に伴って生ずる廃棄物は,資源回収や,減容・減量化,無害化のために破砕,選別,脱水や焼却などの中間処理を経由した後に,陸地や海面に埋め立てられます。廃棄物を衛生的にかつ生活環境を保全しながら埋め立て,自然へと還元する,すなわち最終処分するために設けられた施設のことを最終処分場といいます。我が国では平成12年度に発生した一般廃棄物5,236万トン(約5千万トン),産業廃棄物40,600万トン(約4億トン)のうち,それぞれ1,051万トン(20.2%),4,500万トン(11%)が最終処分されています。

 最終処分場には埋め立てられる廃棄物の種類によって構造が異なる3つのタイプがあります。まず,有害な燃えがら,ばいじん,汚泥,鉱さい等の政令で定められた廃棄物は,天蓋を設けて雨水の浸入を防ぎ,コンクリート枠で廃棄物が外部と完全に隔離された「遮断型」最終処分場に処分されます。次に,廃プラスチック(シュレッダーダスト等を除く),ゴムくず,ガラスおよび陶磁器くず,金属くず,がれき類(紙が付着した石膏ボードを除く)の不活性で,ガスや汚濁した排水(浸出水)が発生する恐れがない産業廃棄物(安定5品目)は,土地の造成のように崩壊を防止する擁壁やえん堤を設けた「安定型」最終処分場に埋め立てられます。最後に,安定5品目を含めた有害ではない産業廃棄物と,家庭や小規模事業所から発生する一般廃棄物は,先の安定型の構造に加えて,浸出水が底部や側部から周辺地盤や地下水へ漏出するのを防ぐ二重シート等の遮水工と,浸出水を集める集水管,集めた浸出水を周辺水域に影響を与えない性状まで処理する浸出水処理施設を設けた「管理型」最終処分場に埋め立てられます。このタイプの処分場では,有機物が分解して発生する埋立地ガス(主に二酸化炭素やメタン)を,火災や爆発等の危険が無いように,速やかに大気へ放散させるためのガス抜き管(または臭突)を設けています。また,最終処分場には設置される場所(地形)によって,平地,山間ならびに海面最終処分場という分類もされます。なお,我が国では,平成11年度末で,一般廃棄物最終処分場が2,065施設,産業廃棄物最終処分場が2,751(うち,遮断型42,安定型1,664,管理型1,045)施設稼働しています。

 廃棄物の埋立方式は歴史的に変遷してきました。我が国では江戸時代に都市に人口が集中するようになり,最初のうちはごみを屋敷内や空き地,川や堀に捨てていましたが,悪臭・害虫発生の苦情や水路の通行への支障のため,お上によりごみ(ちりあくた)を集中的に投棄する場所が指定されるようになりました(江戸では明暦元年[1655年]の深川永代浦が最初といわれています)。これが最終処分場の始まりといえますが,この時点では,ごみをただ空き地に野積みにしたり,土地造成のため海面やくぼ地,湿地に投げ込むだけのものでした。この埋立方式は「オープンダンピング」や単純な「嫌気性埋立」と呼ばれ,相変わらず悪臭や害虫の発生,廃棄物の飛散,発生ガス等による火災,また汚濁の激しい汚水の発生が問題でした。なお,開発途上国の多くの国では未だこの状態にあり,我が国でも長い間続きました。

 1930年代になると,悪臭や害虫の発生や火災,廃棄物の飛散を防ぐために,埋め立てた廃棄物に覆土を施す「衛生埋立」が行われるようになり,清掃法が制定された1950年代に一般的となりました。また1970年に廃棄物処理法が制定されると,先に説明した廃棄物と最終処分場の種類の対応が定められると共に,浸出水による公共水域や地下水の汚染を防ぐため,集水管を入れて浸出水を集める構造と処理する施設を併設するようになりました(改良型衛生埋立)。これら埋立方式では依然として廃棄物層に大気が浸透しにくいため,内部が嫌気(酸素が少ない,または無い)状態であり,有機物の分解が緩慢です。したがって,可燃性の埋立地ガス(すなわちメタン)と汚濁した浸出水の発生が収まり,土地として利用できるまで安定するのに大変長い時間を要します。なお,比較的広い用地があり,埋立が大規模な欧米ではこの方式が一般的であり,むしろ積極的に嫌気状態を保ち,メタンを発生・回収してエネルギー源として利用する処分場もあります。最後に,現在の埋立方式のように遮水工の設置が一般化したのは,おそらく,最終処分場の技術的な基準が定められた1980年代中頃からです。

 以上のように,最終処分場では生活衛生や環境汚染対策を中心に技術が投入されてきました。しかし,従前の廃棄物層が嫌気的となる方式では,安定化が長引き,浸出水を処理し続けなければならないために,管理の費用がかさむという問題が残されています。これは,公共が管理している一般廃棄物最終処分場のみならず,民間が運営する産業廃棄物最終処分場では,同時に跡地利用による利益を損なわせる大問題です。そこで,埋め立てた廃棄物層をできるだけ好気(酸素がある)状態にして,安定化を促進し,浸出水の長期的な水質悪化を防ごうとする試みが行われています。1975年頃から福岡市を発端に採用され始めた「準好気性埋立」は,浸出水集水管とガス抜き管を利用し,大気を埋立廃棄物層に受動的に送り込もうとする方式です。さらに,ブロワやコンプレッサー等を用いてより能動的に大気を廃棄物層に送り込む「好気性埋立」も,処分場が主に民営で,安定化の遅延による経営悪化が深刻となりつつある欧米を中心に,実用化に向けた検討が進められています。これらの方式は処分場の安定化を促進するだけではなく,温室効果ガスであるメタンの発生を抑制するという利点もあります。

 また,ダイオキシン類を始めとする有害化学物質に対する意識の高まりは,施設の維持管理だけではなく,浸出水や周囲環境のモニタリングのための費用を高騰させています。ドイツでは,より根本的な解決策として,限られた時間(約30年間を想定)で安定化しないような廃棄物は埋立処分できないように,2005年より埋立廃棄物に含まれる有機物の含有量を(熱灼減量1 が最大5%以下に)規制する予定です。この場合,有機物を含む廃棄物を埋め立てようとする場合には,必然的に選別や好気性発酵(併せてMBT[Mechanical Biological Treatment]といいます),熱処理等の前処理が必要になります。なお,我が国では埋立前処理または資源化の方法として,塩分含量が高い焼却灰を洗浄する方法や,高温溶融(スラグ化)でダイオキシン類などの有機物をほぼ完全に分解する方法が検討あるいは実用化されています。

 現在,我が国や欧州では,最終処分しなければならないような廃棄物ができるだけ発生せず,環境への影響が少なく,かつ経済的に持続性がある循環型社会を目指して,各種リサイクル法が整備され,一度使用した製品や資源をできるだけ再利用しようとする様々な取り組みが行われています。政府は平成22年度までに平成8年度の最終処分量を半減させる目標を設定し,埋め立てられる廃棄物量は確実に減少していますが,依然として相当量の廃棄物が最終処分されています。したがって最終処分場は当分の間,経済社会に必須な基盤施設であり続けると考えられます。これまで述べてきたように,最終処分に関連する技術はごく最近になって発達したものばかりであり,人々がより安心できかつ持続的に運営される施設づくりに向けて,技術開発を今後も続けてゆく必要があります。

 1 強熱減量また灼熱減量ともいいます。乾燥した固形物を650℃で1時間程度(試験法によってこの条件は変わります)強熱して減少した重量を,元の乾燥重量に対する割合(パーセント)で表したものです。この減少分は主に燃焼して気化した有機物に由来すると仮定し,有機物含量の指標として用います。

 (やまだ まさと,循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)

執筆者プロフィール

 もともとは美しく科学的な湖沼の研究者を志望していましたが,就職先の関係でいつの間にやら汚く人間臭いごみの世界にはまり込み,いまでは面白くて抜けられなくなりました。でもいつかはこの世界を美しい科学にしたいなぁ。