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公開シンポジウム報告

研究所行事紹介

黒河 佳香

 さる6月19日,港区芝公園の東京メルパルクホールにおいて恒例の国立環境研究所・公開シンポジウムが開催された。今回のシンポジウムでは初めて統一コンセプトがうちだされ,メインテーマとして「環境 温故知新」がかかげられた。過去4回の同シンポジウムが新世紀を迎える未来指向のスタンス上で企画されたことを受けて,今回は過去を見つめることの意義を問いなおす視線の転換が図られた。研究所のスタッフの発表のみに内容が統一されたのは,昨年と同様である。比較的地味なテーマであることや,会場の交通の便が良くないことなどから,当初は多くの方に来ていただけないのではないかと心配されたが,梅雨の合間の好天も幸いして,当日は1,000名以上の方の参加を仰ぐことになった。

 シンポジウムは理事長のあいさつ・講演で始まり,過去の経験からさまざまな教訓を引き出すことの重要性が講演の中で例示された。引き続き環境研の研究者6名による研究発表が行われた。午前の部では,過去の地球環境を探る3つの「温故」知新研究が紹介され,また午後の部では,過去の経験を土台とした新たな環境対策を探る3つの温故「知新」研究が紹介された。すべての講演が時間通りに進み,300インチ・スクリーンでのプレゼンテーションもほぼ適切になされ,また各講演の終了後には,司会者の進行のもとで学術シンポジウムにふさわしい質疑応答がなされた。

 また玄関口とホール内をつなぐロビー空間では16枚のポスター展示による発表が行われた。今回のロビーが展示場として手狭であったことは否めないが,持ち時間の2時間を通して,すべてのパネル前が活発な質疑応答の場となっていた。

 アンケートで寄せられた参加者の意見(回収率42%)を後日拝読すると,幸い,内容に関して好意的な意見が大半をしめていた。評価が定着しつつあるという手ごたえは感じられるが,マンネリを回避する工夫も今後は必要,というのが私の個人的な意見である。なお昨年と同様,講演およびポスターに用いた図表,ならびにアンケートで寄せられた質問に対しての回答を,ホームページ上に掲載している(国立環境研究所のホームページhttp://www.nies.go.jp/sympo/index.htmlから閲覧できます)。

(くろかわ よしか,セミナー委員会幹事,環境健康研究領域)

プログラム

10:00~10:30 開会挨拶「繰返すべきこと,繰返してはならぬこと」(合志陽一理事長)
10:30~12:30 第1セッション「地球環境の古きをたずねて」
司会:彼谷邦光(環境研究基盤技術ラボラトリー)
(1)バイカル湖-地球環境変動の歴史を映す魔鏡-(高松武次郎 水土壌圏環境研究領域)
(2)樹木が語る地球環境汚染史-数百年を生きた巨木の証言-(佐竹研一 大気圏環境研究領域)
(3)年代を測る-過去の環境変化の記録を求めて-(柴田康行 化学環境研究領域)
12:30~14:30 ポスターセッション(*)
14:30~16:30 第2セッション「人間社会の未来を拓く」
司会:森田恒幸(社会環境システム研究領域)
(1)国際的水環境の修復-バイオ・エコエンジニアリングという技術-(稲森悠平 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター)
(2)中国における大気汚染による健康影響-日本の経験をどう活かすか-(田村憲治 環境健康研究領域)
(3)現代文明最大のジレンマ-環境と経済の両立-(増井利彦 社会環境システム研究領域)
16:30~16:35 閉会挨拶(濱田康敬 理事)

(*)ポスターセッション

1.東アジアからの越境大気汚染-2つの大規模汚染パターン-
2.森林の炭素循環機能を観測する
3.地球温暖化研究棟:環境にやさしいオフィスビル
4.人工衛星と地理情報を用いて不法投棄を監視する
5.循環型社会をめざした高度処理浄化槽を開発する
6.ディーゼル排気微粒子は細菌による肺の傷害に影響を及ぼすか?
7.ダイオキシンの免疫抑制のメカニズムを解明する
8.ストレスと中枢神経傷害-有機スズを実験動物に投与してストレスモデルを作成する-
9.地域スケールでオオヨシキリの生育分布を探る
10.絶滅が危惧されている淡水産紅藻の系統保存
11.生物の絶滅と存続の境界線-生態系のシミュレーション-
12.浅海域での生物による水質浄化
13.DNAマイクロアレイ法で植物のストレス診断をする
14.卵を透して異変を察知する
15.自然からの贈り物“季節変化”-俳句季語に表れた植物-
16.わかりやすい環境情報の発信

講演会場の様子
ポスターセッションの様子
ご来場のお客様の様子
発表の様子