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騒音と不眠

環境問題豆知識

影山 隆之

 環境騒音による心身影響には聴力障害,睡眠影響,聴取妨害などさまざまの様相がある。このうち睡眠妨害は,一般にもっとも低レベルの騒音で発生する。このため騒音に関する夜間屋外の環境基準は,室内で生活する人の睡眠保全を主目的として設定されている。

 不眠はさまざまの原因で起こる。このうち騒音による不眠や昼間の過剰な眠気は,暑さ・寒さなどによる不眠と同様,環境因性睡眠障害(環境要因がなくなれば改善する不眠)と呼ばれる。筆者らの研究では標準的な精神科診断基準や国際疾病分類を参考にして,不眠の中でも特に「入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠困難のうち一つ以上の症状が,週1日以上の頻度で1カ月以上続けて発生し,そのための過剰な眠気等によって日中の活動に支障があり,本人が困っている場合」を不眠症と定義している。一般の成人女性では1割強がこれに該当するが,交通量が非常に多い道路の沿道(騒音レベルは環境基準を大幅に超過)ではもっと多くの人が該当する。これは睡眠に影響する他の個人的要因(病気を持つ人の割合など)によっては説明されず,道路交通騒音の影響であると考えられる。

 騒音と睡眠影響との関係についての研究は,非日常的な実験室におけるものが多く,日常生活場面での研究は遅れている。実験的には,騒音レベルがほぼ一定の場合,等価騒音レベルという評価尺度でおよそ35デシベル以上になると,睡眠への影響がみられ始める。平均的な騒音レベルが同じならば,定常的な騒音よりも騒音レベルが間欠的に大きく変動する場合の方が,睡眠への影響は大きい(背景騒音が低レベルの地域で,ときどき大型車両や列車が通過するような場合)。ただし,人の話し声など「意味のある音」は,騒音レベルがごく低くても不眠をきたす場合がある。一方,人間側の条件によっても不眠の発生のしかたは異なる。たとえば高齢者や病気の人の睡眠は,もともと浅いためか,騒音による影響を受けやすいといわれる。

(かげやま たかゆき,地域環境研究グループ 都市環境影響評価研究チーム)