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熱中症の原因を探る
- 救急搬送データから見るその実態と将来予測

環境儀 NO.32

小野雅司
地球温暖化やヒートアイランド現象による影響が懸念される熱中症。熱中症の実態把握とリスク要因の解明並びにその予防策を探っています。

 地球温暖化に伴う健康影響は、今後人類社会にとって大きな問題となる可能性があります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によれば、地球温暖化による健康に対する影響は、直接的な影響、間接的な影響および社会、経済システムの崩壊による影響に分けて考えられています。具体的には、低栄養に起因する疾患の増加、熱波、洪水、暴風雨、火災や干ばつによる死亡、疾病の増加、下痢性疾患の増加、光化学オキシダント濃度の上昇による循環器・呼吸器系疾患の増加、そして動物媒介性感染症の増加などが指摘されています。

 熱帯、亜熱帯に位置する途上国においては、下痢性疾患の増加や動物媒介性感染症の増加が大きな問題となっています。一方、日本においては、熱ストレスと、その典型である熱中症、および光化学オキシダント濃度の上昇による循環器・呼吸器系疾患の増加が社会的な課題となっています。本号では、このうち、熱中症に関する研究を紹介します。

 国立環境研究所では、温暖化と熱中症リスクの関連性を研究するため、東京都と17政令指定都市の消防局の協力を得て、救急搬送された熱中症患者情報を収集し分析しています。これによって、性別、年齢階級別、発生場所別、日最高気温別などでの熱中症患者発生の特徴が明らかになっています。

 今号では、2000年以降収集してきた熱中症患者情報の分析結果と、そこから見えてきた熱中症患者の特徴を紹介すると共に、熱中症リスクを避けるための対応策や熱中症患者の将来予測などについても紹介します。