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講演1「アジアを巡る私たちのごみ−日本とアジアで資源の循環を考える−」

東京・京都会場でのアンケートに寄せられた質問に、講演者(寺園  淳)が回答します。
多数のご質問をいただきましたが、似た内容の質問をまとめるなど主催者側で整理しましたことをご了承下さい。


Q1:  輸出された廃プラスチック、E-wasteはその後どうなっているのでしょうか?

A1:  私の調べた範囲では、廃プラスチックはマテリアルリサイクルされ、何からの繊維製品または樹脂製品に利用されています。もうしばらくは中国での材料需要の大きさに依存できそうですが、近年は価格面で折り合いがつかないことも増えているようです。
  E-wasteの中でも、基板やケーブルの不適正処理による環境汚染に私たちは注目しています。講演でも一部お見せしたような残渣の山があるほか、重金属・有機化学物質による環境汚染も指摘されています。ただし、健康影響との明確な関係まで解明できておらず、現地研究者などとの間で研究協力を続けている段階です。


Q2:  中古製品の輸出入フローの推計方法はどうなっていますか?

A2:   中古製品の輸出量の推計は大変難しいのですが、電気電子製品の場合は、他の国内流通量から消去法的に推計する方法(排出量から国内リサイクル・廃棄量を差し引く方法)、輸出統計から単価によって推計する方法などがあります。
  有害化学物質のフローの分析については、一部の難燃剤について私たちの共同研究者が解析を進めているところです。ただし、実験データがまだ不足しているのが現状です。


Q3:  有価物での輸出は国際条約違反にはならないのでしょうか?  地方自治体にごみの売買の権利が認められているのはなぜでしょうか?

A3:  有害廃棄物と家庭廃棄物の輸出入を規制しているバーゼル条約(及び国内のバーゼル法)では、ごみであれば、仮に有価物であっても規制対象となります。一方、一定の加工が施されて、資源(原料)とみなされれば規制の対象外となり、輸出は違反とはなりません。現実には、ごみか資源かにグレーな部分が多いことや、バーゼル条約や各国国内法との間に整合が十分ないことが問題となっています。これらの法規制の整合を取ることと、輸出されるモノはごみと解釈されないものに限ることが必要と考えます。
  自治体がペットボトルなどを(指定法人に委託せず)業者に売却することが増え始めています。市民が廃棄した後は自治体が所有権を認識して売買を行うことに大きな問題はないと思いますが、循環資源として輸出をする場合については、ごみと解釈される可能性も考慮しながら、自治体も責任を持って対処すべきと考えます。


Q4:  ISO14000シリーズなどを導入している企業、団体は廃プラスチックや中古製品の輸出に対してどのような見解を持っているのでしょうか?

A4:  循環資源の輸出と、ISO認証取得企業との関係はよくわかっていません。私の印象では、一部を除いて、ISOの有無によらず一般に自社関係の循環資源輸出は公にしたがらない傾向があります。
  ご質問の意図とは少し違いますが、中国では国内企業に比べて日系企業は循環資源への関心が低いとも聞きます。アジア諸国に展開されている日系企業におかれても、循環資源の活用を積極的に行えるような施策が必要に思えます。


Q5:  有価物の輸出入は今後どのようになるでしょうか?  電気用品安全法(PSE法)によって中古製品の輸出は増えるのでしょうか?  中国等での廃棄物の発生量が増えた場合、逆に日本が輸入することもあるでしょうか?

A5:  循環資源の輸出は、中国の需要増加によって、まだしばらくは伸び続けると思います。ただし、主に中国側の制度や経済の情勢変化次第で、不透明な部分も多いです。
  電気用品安全法によって中古製品の輸出は増えると考えられましたし、おそらくそうなっていると思いますが、製品数も多いために検証することが難しい状況です。
  有価の希少金属が含まれる一定の循環資源は、日本としても受入体制を整えているところですが、これは中国側も手放しません。誰にとっても不要な廃棄物だけが当該国に残りますので、循環型社会の構築はどの国にとっても重要な課題です。


Q6:  国内でリサイクルするにはなぜコストがかかるのでしょうか?  中国等のアジアの国々ではなぜコストがかからないのでしょうか?

A6:  国内では、収集や選別などの人件費がリサイクルコストの高さの要因になっているといえます。このほか、様々な意味で競争が働きにくかった分野であることも否定できませんし、新たな施設整備などの投資がコストを押し上げている場合もあると思います。
  中国でのリサイクルコストの安さには、人件費が大きな影響を与えていると考えてよいでしょう。農村地域からの労働力の供給が大きく、中国国内での貧富の格差の問題はしばしば報道もされています。環境対策の不備についてもコスト面の影響はあると思いますが、リサイクル産業に限った話ではないので注意が必要でしょう。


Q7:  廃プラスチック、古紙、金属くずなどの有価物は国内で循環させるべきなのでしょうか?  国際的に循環させるべきなのでしょうか?  国内で循環させるときにはどのような政策が必要となるでしょうか?  国際的に循環させるときにどのようなルールや政策が必要となるのでしょうか?

A7:  まず自国での循環を第一に考えつつも、輸出入にあたっては受入側のニーズと品質に適合した場合のみ認めることが肝要と考えます。理想論と経済原則のどちらも無視することはできませんので、「国内循環と国際循環のバランス」をよく考える必要があるでしょう。科学的に何が正しいかを決めることは難しい問題ですので、相互理解を深めながら考え方の原則を明らかにして、合意していく必要があると思われます。
  国内と国際の如何によらず、逆有償の場合の費用負担や、マニフェストを含む排出者責任などについては、今後さらに明確にする必要があるでしょう。
  国際循環の場合はさらに、中国など輸入国側との十分な協議に基づき、有効かつ現実的な、チェック体制の確立が望ましいでしょう。


Q8:  ごみの輸出は一時的な対策でしかないのではないでしょうか?  日本が自国の問題を解決する必要があるのではないでしょうか?

A8:  私も講演の中で、循環資源に対する海外の需要が持続可能かどうかについて、疑問を示しました。事業者であれ国であれ、排出者側において循環型社会の構築(3Rの促進)を進めるべきであるという意見に賛成です。


Q9:  現状は分かりましたが、私たちは何をすればよいのでしょうか?

A9:  講演の中では、「引き取ってもらえればよい」というだけの考え方は良くないことを申し上げました。市民が中古電化製品を市中の無料回収業者に引き渡す際も、自治体がペットボトルなどを業者に売却する際も、それがその後どうなるのかということには是非関心を持ってもらいたいと思います。
  ペットボトルの行方について、講演では市民の方々にもお住まいの市町村に対してぜひ関心をもって頂きたいことを申し上げました。これは、市町村を動かすためには、市民の関心と力が必要だとの思いからですので、ご理解下されば幸いです。


Q10:  液晶テレビ、プラズマテレビなどの処理は今後どうなるのでしょうか?

A10:  現在の家電リサイクル法改正議論の中でも、液晶やプラズマテレビを含む対象品目拡大の検討が進められていると理解しています。


Q11:  廃プラスチックの処理に関する国際的な動向はどうなっていますか?  EUの電子・電気機器の廃棄に関する指令(WEEE指令)や電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての指令(RoHS指令)などへの日本企業の対応はどうなっていますか?

A11:  廃プラスチックのリサイクルについては、日本や欧州ではマテリアルリサイクル(材料リサイクル)のほか、ケミカルリサイクル(高炉利用や油化など)や熱・発電回収が行われている場合があります。製品や技術によって制度や目標値が異なりますが、傾向としては多様化する方向にあると言っていいかもしれません。中国ではほとんどの場合、マテリアルリサイクルが行われています。
  WEEE指令やRoHS指令への日本企業の対応は概ね順調であると聞きますが、詳細は業界団体や個別企業にもご確認ください。また、有害物質規制の際、代替物質も含めたリスク評価やリサイクル対応は重要だと考えます。


Q12:  廃プラスチックやE-wasteの問題を資源の観点から見るとどのようなことが言えますか?

A12:  一般に、マテリアルリサイクル(材料リサイクル)や部品リユースなどは、廃棄物対策だけでなく、資源消費削減の観点からも有効であるといえます。ただ、プラスチックの難燃剤添加や電子部品の安全な利用のために注意すべきこともあるため、材料の情報やその活用は重要です。


Q13:  ペットボトルの発生抑制はできないでしょうか?  ペットボトルはマテリアルリサイクルよりサーマルリサイクルの方がよいという話を聞きましたが、お考えをお聞かせください。

A13:  ペットボトルについては現代社会の利便性の象徴でもあり、中国も含めて世界中で消費量が増えているといえます。講演で「むやみに使わない」と申し上げたのは正直な気持ちですが、そのような個人の努力だけで対処できる問題ではないことも感じています。これまでのリサイクルや減量化の延長では不十分であることが認識され、多くの国民による支持があれば、より強力な経済的手法やリユースなども導入できると思います。
  また、ペットボトルについては、発熱量が他のプラスチックよりも小さいこと、単一の種類の樹脂が集めやすくマテリアルリサイクルが相対的には行いやすいこと、の2つの理由から、他のプラスチックほどサーマルリサイクルは有利ではないと考えられます。


Q14:  資源循環を持続可能なものとするには経済的なインセンティヴをもたらす政策が必要ではないでしょうか?  企業の取り組みを促すその他の支援が必要ではないでしょうか?

A14:  国際的なルールづくりとともに、資源循環のための経済的なインセンティブをもたらす手法の有効性は認めます。一方で、世界的な貿易のルールのもとで、一次資源が世界各地から安価で供給されるのが現状であり、これを変えるのは容易ではありません。


Q15:  家電製品の処理費を払っているにもかかわらず、処理せず横流ししている業者がいるのは問題だと思います。このような業者を取り締まる制度はありますか?

A15:  家電リサイクル券が貼られた使用済み家電製品が横流しされる事件は2004年初頭に発生し、家電リサイクル法やシステムに対する信頼が当時問題となりました。現在は、業界団体は券の突合せなどで運用の改善を試み、経産省・環境省も検査体制を強化されていると聞きます。しかし、マニフェストの改善など、まだ可能な対策があるかもしれません。


Q16:  地域によってリサイクルの考え方に違いがあるのはなぜですか?

A16:  国内だけを見ても、地域によって輸送効率や処分場容量とともに行政担当者の意識にも差はあります。よって、リサイクルの考え方にある程度の差が生じるのも止むを得ない面はありますが、循環型社会の促進は全国的に図るべき課題です。
  海外を見るとさらに地域差があり、中国の場合は資源需要の意識が強いことが彼らの「循環経済」の考え方の基礎となっているようです。相互理解とともに、環境意識向上の支援も必要かと思います。


Q17:  製品の輸出入に伴う梱包材などはどのように処理されているのでしょうか?

A17:  フレコンバッグや重袋のような包装材は、使い回し(リユース)されているケースが多いようです。PPバンドなどの梱包材も、一定量を集めてマテリアルリサイクルされる事例もよく見かけます。しかし、どのくらいリサイクルもしくは処分されているかを示すデータはありません。


Q18:  ごみ袋の有料化について、ごみの排出量に比例して有料にするよりも一定量まで無料にした方がReduceの観点から有効な気がするのですが、どうお考えですか?

A18:  有料化の方法については何通りかあり、ご指摘のように一定量以上が有料という方法もあります。人は必ず一定量のごみを排出するという考え方にかなったものであり妥当なものと思いますが、無料対象の量の決め方や袋の配布方法などに課題があるかもしれません。効果を試しながら、その地域で望ましい有料化の方法を話し合って決められるのが望ましいように思います。