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講演3「循環型社会に向けた「技術」と「ライフスタイル」-五つの問いかけ-」

東京・京都会場でのアンケートに寄せられた質問に、講演者(大迫政浩)が回答します。
多数のご質問をいただきましたが、似た内容の質問をまとめるなど主催者側で整理しましたことをご了承ください。

Q1: 最終処分場の跡地は土地として利用できるのでしょうか?最終処分場には、プラスチック・金属も埋立てられていますが、これらの物質は長い年月の後にどうなるのですか?最後まで分解されないのではないですか?

A1: 最終処分場も跡地利用が行える有用な土地資源です。しかし、廃棄物が十分安定化しない状態で利用する場合には注意が必要です。地盤が沈下したり、引火性や臭気をもつガスが発生したりしている状況では利用できません。 また、外見的には安定化していても、地下に有害な化学物質を含むような廃棄物が埋め立てられている場合には、注意が必要です。一般的には、地表面の利用に限られ、公園などとして利用されるケースが多いです。 一方で、廃棄物が埋まっているところまで杭を打ち込んだりして建物を建てたりする行為はできるだけ避けなければなりません。そのために、将来に渡ってそこが最終処分場であったことの履歴を台帳に記録し、都道府県が保存管理することになっています。
 最終処分の目的は、本来は自然と変わらない土地に還すことですが、埋め立てる廃棄物には様々な不安定な物質が含まれ、普通の土地として利用するには長い年月がかかる場合があります。また、どのくらいの期間で安心して土地利用が出来るようになるかを推定すること自体が科学的に難しい状況です。 逆に、プラスチックや金属は長期的に極めて安定した物質(但し、プラスチックによっては添加剤の問題**には注意が必要)であり、そのような廃棄物だけが埋め立てられる「安定型処分場」は、比較的早期に跡地利用が可能です(プラスチックばかり埋め立てるとふかふかの処分場になって使いにくい場合もあり、地盤の安定性が必要です)。

* 「安定化」とは、含まれる有機物などの分解が十分進み、有害物質も分解されたり固定化されたりして、地盤沈下やガス発生、汚水発生等の可能性がない安定した地盤になることを言います。

** プラスチックの種類によっては、可塑剤や難燃剤として有害性が疑われている成分が添加されており、埋立地からの浸出水中に含まれるケースがあります。現在、それらの実態を把握し、問題となるレベルかどうかを評価するための研究を進めているところです。


Q2: 現在日本の不法投棄物の未処理残存量は1千万トンあるとのことですが、放置されたままで、月日を経て変化して、土壌生物など周辺の生態系を壊すことはないのですか?さらに、身近なところに散乱している空き缶やビニールのゴミなどは、どうなるのでしょうか?

A2: 過去の投棄事件の中には、豊島(てしま)での事例のように、自動車のシュレッダーダスト(破砕物)などが多量に投棄され、一部有害物質が含まれ大きな問題になったケースもありますが、日本で不法投棄されているものの多くは、主に建築物を解体した後の建設廃棄物であり、木屑や廃プラスチック、金属がらなど有害なものばかりではありません。 もちろん、有害な化学物質等を含んでいる可能性もありますので、都道府県などでは速やかにどのような廃棄物が投棄されているか、また周辺環境に影響を及ぼしていないか、あるいは将来影響を及ぼす可能性がないかを調査しています。 もし、環境影響の恐れがある場合には、緊急的に投棄物の撤去など行っています。 原因者(犯人)が分からない場合は、国や都道府県などの予算によって行政が代わりに撤去処理を行っています(行政代執行と言います)。
 身近にある空き缶やビニールのゴミなどの投棄は、環境に大きな影響を及ぼすとは考えられませんが、景観上問題があると言えます(河川や海岸などへのポイ捨ては、景観だけでなく大型の海洋生物などへの影響も見られるケースがあります)。 また、ゴミが捨てられている地域では、地域としてのモラルや住民の監視の眼が十分でなく、さらに安易にゴミが捨てられ続けるケースが多いようです。「ポイ捨て禁止条例」などによりこのような行為を無くす努力をしている自治体も多くなっています。


Q3: 昔と今の日本のゴミの排出量を比較していましたが、時代によってゴミの定義や分類に違いはないのですか? また他国の定義はどうですか?

A3: 汚物掃除法ができた明治までさかのぼれば、昔はし尿を除いて収集が進んでいなかったため、道路の清掃で出るごみが主であったと考えられます(実態は家庭ごみでしょう)。 また、統計値は全国値ではなく、主な都市(今の政令都市)のデータです。現在のごみの定義ができたのは昭和46年の廃棄物処理法からで、それまでは、産業廃棄物というものは定義されていませんでしたから、それ以前のデータには町工場や建設解体から生ずる産業廃棄物も含まれていたでしょう。
 先進国においては、一般廃棄物と都市ごみ(MSW:Municipal Solid Waste)の定義(実態)は、細かいところを除けば、ほぼ一緒ではないかと思いますが、例えば、小規模のレストランや各種の小売店などから排出される事業系一般廃棄物の取り扱いは、日本の市町村によっても取り扱いに少なからず違いがあり、排出量の数値に影響しますし、これは国によっても異なる可能性があります。 また、市町村が集めるゴミは、集団回収やコンポスト化などによる自己処理後のごみであり、市町村が収集前に回収されたり処理されたりする量をどのようにカウントするかでも、数値は異なってきます。時代による変化や国による違いを比較する場合には、このような定義や分類の違いに留意する必要があります。


Q4: 廃棄物の発生抑制が1番の対策だと思いました。廃棄物の発生を抑制するための行動指針を、国民の生活モデルとして示すことはできますか?

A4: 循環型社会形成のために最も優先順位の高い手だてが、3Rの中のReduce「発生抑制」であることは言うまでもありません。製造者側も製品の軽量化や長寿命化などにも努力していますが、やはり最も重要なのはゴミを出す消費者自身の意識や行動・ライフスタイルの転換です。 また、意識やライフスタイルの問題だからこそ、直ちに変革することは難しいとも言えます。国や自治体、NPOなどの様々なレベルで、発生抑制のためのメニュー、生活モデルの類は紹介されていると思いますが、それらが国民一人ひとりの問題として理解され、実行されるためには、今後も関係する様々な主体が様々な工夫をねばり強く行っていくことが肝要であると言えます。


Q5: ペットボトルをリサイクルする際、新しいペットボトルを生産する時よりもコストがかかると聞いたことがありますが、コストを下げる方法はありますか? ペットボトルからガラス瓶を使用する方向にシフトしていくべきなのですか? また、ビンなどのガラス類はリサイクル可能ですか?

A5: ペット(PET)ボトルに限らず、リサイクルが進むかどうかは、原料を外国などから持ってきて精製するコストと、ごみを集めて、選別して、再資源化するコストのどちらが安いかにかかっています。 ガラスや紙、金属類は昔から集めて精製するほうが安いのでリサイクルされています。ただし、これら素材でも市況により、海外から入ってくるリサイクル材や素材のほうが安くなる場合もあります。 プラスチック等の石油化学製品は、これまでは原油価格が安く、原油から製造する方がリサイクルして製造するよりもはるかに安いので、実は経済的にはリサイクルに不利な素材です。 また、PET(ポリエチレンテレフタレート)だけでなく、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)、PS(ポリスチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)など、様々な素材が存在し、混じり合っているので、素材として使うには選別するのにコストがかかります。 ペットボトルの場合は、同じ材質のものが集まりやすいので有利な方ですが、分別・収集にやはりコストがかかりますし、再びペットボトルに戻す方法にはさらに多くのコストがかかるため、ほとんどは素材(すなわちPET樹脂)としてペットボトル以外の他の用途に利用されているのが現状です。
 ペットからガラスへと容器をシフトさせる件については、まず理解しなければならないのは、ガラス瓶の大半がカレット利用(砕かれた状態になってから様々な用途に利用)であり、リターナブル瓶としてリサイクルが減少していることです。 もちろんリターナブル(再使用)であれば環境(LCA)的には確かにベターですが、事業者とともに再使用する仕組みづくりに積極的に協力していかなければなりません。 また、重量が増し、割れることによる輸送コストの増大と重い容器を持ち歩く不利便性を社会が受け入れるかどうかも問題です。


Q6: ごみ処理には私たちの税金が使われていると思いますが、それは家庭系ごみと事業系ごみの両方についてですか?事業者はごみ処理のための税金を負担していますか?

A6: 事業系ごみについては、自治体が処理する場合には原則として有料になっています。清掃工場(焼却施設)に持ち込まれたり、自治体が集める場合には、量に応じた一定の料金が徴収されます。 しかし、規模の小さい事業者については、ある一定の排出量以下の場合には、家庭系ごみと同様に扱い料金を徴収しない場合もあったり、また、家庭系ごみの集積場に捨てられていると区別がつかない場合もあるようです。 また、料金の設定についても、事業系ごみの処理にかかる費用に等しい価格設定になっているわけでもないようです。事業者も、もちろん自治体に税金は払っていますが、ごみ処理だけのために払っているわけではありません。 とはいえ、事業者が街に存在することは、街の経済活動を支えており、そのための利便性を公共がどこまで提供するかの是非や、排出抑制への努力の動機付けをどのように与えるか、など、各市町村においても頭を悩ましているところです。


Q7: ゴミのコンポスト化というのは、どういう処理方法ですか?どうして、循環型社会に有効なのですか?

A7: コンポスト化とは、残飯や野菜屑などの生ごみを微生物の働きで有機性の堆肥(コンポスト)肥料にする方法です。熱が逃げないような容器などに生ごみを入れて、ある程度の水分と空気を与えておくと、微生物による分解が始まり発熱して高温になって1〜2か月で完熟したコンポストが出来上がります。 また、生ごみを分別収集して大型の堆肥化プラントで堆肥製造する場合もあります。 一般の家庭で庭があるところでは、「コンポスター」と呼ばれるプラスチック容器を庭の土の上に設置し、そこに生ごみを投入していきます。最近では「生ごみ処理機」が市販されており、電気の力で温度を高く維持したり脱臭したりしながら、生ごみを短時間で発酵させる機械(但し、発酵物はさらに1か月ほどの完熟期間が必要である場合が多い)もあります。 コンポストを有機肥料として使うと、ごみの減量化に繋がり、また、化学肥料を節約できる場合もあり、私達が実践できる循環型社会づくりのための一つの工夫だと言えます。しかし、家庭菜園など自家で利用する場合を除いては、市町村等の大型施設で堆肥を製造しても、十分な値段で購入し使ってくれるような利用先はなかなかないのが現状です。 その他、例えば生ごみ処理機を使用する場合、電気エネルギーなどをかえって過剰に使い、必ずしも環境に優しいとは言えないケースもありますので、注意が必要です。


Q8: ヨーロッパ諸国でのゴミ処理で、焼却は少なく、埋め立てが多いことが意外でした。国土が狭い国では、埋め立てに関する問題はないのですか?埋め立ての制度に関して、日本と外国で何か違いはありますか?

A8: ヨーロッパ諸国はそれぞれの国の面積は日本と同様に狭いですが、ごみの処理の方法としては、意外に埋立の割合が多くなっている国も多いです。いろいろな歴史的なこともあり明確な理由はわかりませんが、日本は山地がほとんどで平地が極めて少ないのに対してヨーロッパでは国土面積の割に平地が多いこと、日本は降雨量が多く地下水位も高い地域が多く埋立地の立地に本来適さないのに対して、ヨーロッパは降雨量が少ないこと、焼却によるダイオキシン類発生など有害物質問題が日本より10年程度先に注目され焼却処理に忌避感が強かったこと、焼却に比べて埋立のコストが安くコスト重視の判断がなされたこと、などの可能性が考えられますが、推測の域を越えません。
 当然、ヨーロッパでも埋立処分場立地は地下水汚染などへの懸念による住民からの強い反発が大きな問題になっており、欧州埋立指令が2006年からスタートし、原則的に有機物を多く含む廃棄物は埋め立てられなくなることから、現在は駆け込みでコストの安い埋立のほうに流れているという話も聴きます。しかし今後は、焼却処理の割合が増加していくことが予想されています。埋立の制度については、受け入れ基準や管理基準、埋立構造など、少なからず違いがありますが、研究者同士相互に情報交換し合って、それぞれの国に応じた制度、技術の在り方が模索されているところです。


Q9: リユースやリターナブルにかかる補修や洗浄などのプロセスは環境負荷を減らす方法なのでしょうか?あまり進まない理由も合わせて教えて下さい。 リサイクルされた製品の質の劣化を考慮した仕組みにはどのようなものがあるでしょうか?

A9: 環境(LCA)的に見れば、衣服や自転車、家具等のリユースは、新製品や素材リサイクルと比べて有利な方法です。ビン等のリターナブルについても、繰り返し使用の頻度が十分多ければ、環境的に有利な方法であると言えます。 これらが進まない原因には、集めて、運んで、ストックして、修理や洗浄する人件費を含むコストが新製品にかなわないこと、流行や新たな利便性が加えられた製品が次々と売り出されること、中古品の品質保証を誰が担うのかはっきりしていないこと、よって、他人が使ったという古来からの忌避感と相まって中古品を使いたがらない人が多いことなどが考えられます。 ただし、最近のフリーマーケットなどの動きは中古品に付加価値を付けてリユースを進める活動として注目されます。
 リサイクルすると製品の質が劣化することを考慮した仕組み作りについては、多少コストが高くても変な色がついていても、機能的に問題がなければ公共が率先して購入するなどして、そのような動きを世の中に普及させていくようなグリーン購入の制度などが有効であると考えられます。


Q10: ゴミの焼却処理について、今後は、自区内処理ではなく、効率的な広域処理を目指すべきだと思いますが? 産業廃棄物の合わせ処理も効率的に行うべきと考えます。

A10: 日本のごみ処理の「自区内処理の原則」は1960年代の東京ゴミ戦争のときに、江東区に東京のゴミが集中していた問題に対して、それぞれの区で焼却施設を持ち自分達の区のゴミは自分達の責任で処理していくべきとする基本的な考え方が打ち出されたことが発端だと言われています。 「区」という語の由来は東京23区のことだったわけですね。このように、区域内処理は法的に示された原則ではないので、本来は、技術的観点、社会経済的観点などいろいろな角度から最適なごみ処理システムをつくっていくことが重要です。 国では、1990年代半ばより、ごみの溶融技術適用のための地域ブロック化やダイオキシン類対策に伴う施設の広域的な集約化を進めています。また、産業廃棄物の処理は元々広域的に行われることを原則としています。 国は技術的観点や経済的観点で合理性があれば、広域的な処理は是としているわけです。
 一方で、一般廃棄物にしても産業廃棄物にしても、市町村や都道府県レベルでは、他地域からの廃棄物は受け入れない方向での流入規制的なハードルが設けられてきました。例えばこのような話があります。 一般廃棄物の焼却施設の建設時には、以前は余裕を持った設計が行われることが多く、減量化が進むと稼働率が低くなる施設も全国では多く、ある意味で過剰設計になっていました。 そのような状況で、ある市町村の規模の小さい施設が老朽化して施設更新の時期を迎え、国の施設集約化による広域的処理の指導もあり、他市町村の余裕のある施設でごみを受け入れてもらおうと計画しても、受け入れる側の施設周辺の住民は納得しないケースが間々あるそうです。 大局的に見れば、新たな施設の建設も必要なくなり、また受け入れ施設の稼働率が高くなって効率的な発電も出来るようになります。稼働率を上げるために、リサイクルをせずに燃やすごみをつくることは本末転倒ですが、地域間で連携し、他地域からのゴミを受け入れることは合理的な判断のように思えます。
 そのように考えれば、(ここからは一研究者の私見ですが)、他地域だけでなく、リサイクルや処理に困っている地場産業からの産業廃棄物を受け入れるなどの対応もあって良いかもしれません。しかしそこにもまた、一般廃棄物と産業廃棄物の区分、責任、費用負担の問題などがからんで、市町村の現場ではなかなか議論が進んでいないように思います。最近では、そのような問題を解消するために、民間自体が一般廃棄物、産業廃棄物区別無く廃棄物処理事業を行うPFI事業も多くなってきました。安全性を確保しながら効率的なシステムづくりを行っていくために、発想の転換が必要になってきているのかもしれません。


Q11: 今後、循環型社会を作るためには、人々がごみ処理やリサイクルに係わるリスクを把握することが大事ではないでしょうか?そのためには、何が必要でしょうか?

A11: もちろん、消費者一人ひとりが、リスクに対する正しい情報を理解することが大切ですし、生産する側も事なかれ主義で情報を隠すのではなく、出来るだけリスク情報を公開していくことが重要であると思います。また、研究者も含めて、消費者が正しく理解するために、科学的で難解なデータや情報を出来るだけわかりやすい形に加工することも必要でしょう。あともう一つ重要なことは、何か不測の事態が起こったときに、誰が責任をもつか、という点を明らかにしておくことが大切だと思います。国は、ベースとなる安全性の判断基準を積極的に示すべきであり、その部分については、責任主体を明確にしつつ国が責任を負うべきでしょう。


Q12: 溶融スラグについて、講演で「安全性の要求が一般的には高すぎる」とありましたが、ほんとうに安全なのでしょうか?不安です。また、地球温暖化など他の環境問題への面から問題はないのでしょうか?

A12: 安全・安心の問題は、平均的な議論が出来ない部分もあり、注意を要します。ごく希であっても安全上問題が生じ何らかの被害が発生したら取り返しがつきません。その意味では、スラグの安全性についても、出来るだけ正確なデータ、平均値のみでなく全体の性状分布の把握を踏まえて論じるべきであることは論を待ちません。
 一方、世の中の基準というものは、様々な仮定や安全側の判断、あるいは技術的達成可能性から総合的観点で設定されており、リサイクルの安全基準のベースとして利用されている土壌汚染対策法の指定基準もしかりです。 特に指定基準の中の含有量基準は、70年間摂取し続けた場合に慢性的な影響が生じる可能性が否定できないレベルであり、基準設定の際の考え方の中にも様々な安全側の仮定があります。そのように考えると、直ちにリサイクル基準に準用するとの考え方には飛躍があるように思われます。 また、溶出量基準においても、酸性雨の影響が頻繁に指摘されますが、そもそも緩衝能をもつスラグ材料が酸性雨と接触したとしても、酸性化は超長期的現象であり、その間に極少量ずつの溶出が進むのであって、一気に高濃度の溶出が起こる現象は、科学的には想定されません。
 そのような基準との比較においては、そもそも基準自体を超過すれば健康被害が即起こるという誤解が生じないようにしなければなりませんし、その基準のみをベースにして物事を決めようとする場合には、慎重に議論すべきであると思います。
 また、スラグ利用の是非は、資源やエネルギーの消費やそれに伴う温暖化ガスの排出、そしてコストの観点からも評価されるべきです。私達は現在、スラグの安全品質をさらに高めていった場合に、資源・エネルギー消費や温暖化ガス排出、コストがどのように変わるかの評価を行いつつあります。 そのような検討によって、安全・安心の観点も含めた社会が要求する再生品の「品質」について、何らかの答えを出そうとしています。より「安心」できるレベルのピュアな品質を目指すべきとの単純化した議論もありますが、バランスを欠いた議論の下で社会が過剰な投資に流される傾向に歯止めが利かなくなること自体に、「持続可能性」に対する危険性をはらんでいるような気がします。


Q13: ライフサイクルアセスメント(LCA)について、もう少し教えてください。

A13: LCA手法は、10年ほど前から注目を浴びるようになり、方法論については、ISO14000sでも標準規格化されました。しかし、実際にはデータの取得困難性や信憑性などが問題になることも良くあります。 しかし、温暖化問題、資源エネルギー問題が地球社会の持続可能性を論じる上で最重要課題となっている現状では、方法論や実施可能性に関する課題は依然として残っているにしても、今後物事を判断していく材料の一つとしては、LCAの結果は重要な情報になると思われます。
 現在、循環・廃棄物分野の様々なシステムに関するLCA評価の研究を進めており、成果は順次ご報告していきたいと思います。


Q14: 「その他プラスチック」を製鉄の原料にする場合は、なぜ、ケミカルリサイクルに相当するのでしょうか?また、LCAではどのように評価するのですか?

A14: 容器リサイクル法に基づくリサイクルの分類は、マテリアルから同様のマテリアルに再生する場合、すなわちプラスチックからプラスチックにリサイクル場合を材料リサイクル(マテリアルリサイクル)、他の異なる性質の原燃料に化学的にリサイクルする場合をケミカルリサイクルと分類しており、「その他プラスチック」を製鉄所で処理する場合、石炭やコークスの代替として原燃料として化学的な反応に供して利用するということでケミカルリサイクルに分類されています。海外では、むしろ原燃料としてリサイクルする場合はフィードストックリサイクルと呼ばれています。
 さて、紹介した「その他プラスチック」のLCAの結果の例では、容器包装リサイクル法の再商品化方法としての製鉄所で行っているリサイクル方法と、通常の発電付きの焼却施設での処理の方法とを、もちろん、収集運搬や処理後の残渣処理も含めて、また、提供している製品やサービスが同じになるように公平に比較した結果、製鉄所でのリサイクルのほうが化石資源等の消費や温暖化ガス排出が少ないというデータを示しました。 製鉄所ではたくさんの石炭やコークスを使っており、それらの天然系資源を採掘し運んでくる工程、あるいは生産する工程にも資源・エネルギーが必要です。プラスチックの利用によってこれらの天然系資源を大幅に節約することによって、環境的に大きな優位性が発揮されるのです。
 現在、通常のごみ処理の中で増加しつつあるガス化溶融技術や、再商品化方法の中のマテリアルリサイクル技術、ガス化技術なども含めて検討中であり、近い内にご報告できると考えています。

 *PETから再びPETにリサイクルする場合は、方法・原理からケミカルリサイクルに分類される。


Q15: 家庭用生ごみ処理機は、エネルギー消費量が多く、その他の方法に比べて悪い方法だ、と説明がありましたが、一方で、地方自治体によっては、生ごみ処理機を購入する家庭に対して補助金を出していますが、なぜでしょうか?

A15:  生ごみ処理機に対して補助を出している自治体がかなりの数に上ることは承知しています。自治体が補助を出している理由は、多少はごみ減量化に寄与すること、意識啓発の効果も期待できること、などがあると思われますが、やはりLCAの結果からは環境的に良い方法とは言えません。 なお、私達のLCAの成果の情報は十分伝わっていない点や、自治体に適切な判断を求めていく姿勢が我々研究者自身に欠けている点は反省すべきと考えています。
 自治体では、財政難の中で、いかに効率的・効果的な施策を展開して行くべきか、その判断に苦慮しているものと考えられます。現在、国立環境研究所では、環境省からの委託を受けて、自治体が最適なごみの分別や処理・資源化システムづくりを行っていくための指針づくりの検討を開始しました。 その中では、LCAなどの成果も活用される予定です。


Q16: 焼却処理は、良いところもあれば悪いところもあるように思えます。悪い点としては、二酸化炭素(CO2)の発生が、地球温暖化の面から心配です。良い点としては、エネルギーが作れるところでしょうか。しかし、燃やさなくてもエネルギーが作れるならば、もっと良いのにと思いますが?

A16: 焼却処理は、適正な規模で発電や熱供給を行うとエネルギー供給施設としても位置づけることが可能です。LCAの観点から、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが出来ないモノ、あるいはそれらのリサイクルを行うよりも資源エネルギー消費や環境負荷が小さければ、適切なリサイクル技術が開発されるまでの間は焼却によるサーマルリサイクルを行う方が合理的であると言えます。 焼却によってCO2が発生することが良く問題にされますが、焼却処理による発電によって火力発電所での化石燃料の燃焼を節約できれば、正味ではCO2削減に繋がる可能性があること、生ごみなどのバイオマスはカーボンニュートラルな物質としてカウントしなくても良いこと、焼却せずに埋め立てて数十倍の温室効果ポテンシャルをもつメタン(CH4)が分解過程で発生してしまうと、かえって問題があること、 などの点を総合的に考えれば、温暖化対策において焼却技術に必ずしもマイナスの評価は与えられないでしょう。法的にも、電力供給の一部をバイオマス由来などの新エネルギーで賄うことが電力会社に義務づけられ、ごみ焼却施設における電力が対象として取り引きされるようになりました。
 また最近では、生ごみや下水汚泥などのバイオマスを微生物学的にメタンガスに転換したり、あるいは熱的に水素に転換し、発電や天然ガスの原料などに利用したり、燃料電池への利用なども試みられています。
 このように、今後は、ごみの単なる処理の役割だけでなく、同時にエネルギーを創り出す技術システムへ進んでいく可能性が高く、私達もそのようなシステムづくりを支援する研究の展開を図ろうとしています。

 *バイオマスとしての植物については、成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素を燃焼過程で発生しているものであり、ライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素を増加させることにはならないと言われている。 このように、二酸化炭素の増減に影響を与えない性質のことをカーボンニュートラルと呼ぶ。カーボンとは炭素のこと。


Q17: 日本で排出した廃棄物が、有価物として輸出されていると聞いたことがあります。「国際的なリサイクル」として良いことなのでしょうか、悪いことなのでしょうか?

A17: 中国を中心とするアジアの国々での需要の高まりから、日本でなら「ゴミ」として処理されるものが、有価物としてアジアの国々に輸出されています。経済的合理性から言えば、地域レベルから国際的なレベルまで様々な循環スケールがあり、総合的な環境影響の観点からも合理性があれば、推進されるべきものでしょう。 しかし、有害廃棄物などの不適切な輸出が紛れて行われたり、環境保全対策が十分に進んでいない国々に闇雲に輸出するのには問題があると思われます。このような問題には、、アジア諸国が協調しながら、それぞれの国の環境と経済上の利益につながるような適正なシステムづくりが必要でしょう。
 本年4月末に行われた3Rイニシアティブ閣僚会合では、以上のような国際循環の問題が主に話し合われました。国立環境研究所でも、重要な研究課題として、まずは現在の実態把握に努めているところです。


Q18: 資源回収の具体的内容と実績を数字で示してください。

A18: 資源回収の状況を個別、具体的に説明することは誌面の関係上困難ですので、お許し頂きたいと思います。全体的に把握するためには、環境省のホームページの中の以下のURLにアクセスしてお調べになることをお薦めします。

 「環境統計集」 http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/index.html

 「循環型社会白書」 http://www.env.go.jp/doc/toukei/index.html

 関連の各業界団体のホームページからも詳細な情報は収集可能であると思われます。


Q19: 廃棄物処理法や各種リサイクル法、ごみの分別など、行政の取り組みは、私たちにとっては、どうも「無理に厳しく」「無駄に分りにくい」ように思えます。研究によって、こういった点を改善することはできるのでしょうか?

A19: 事業者や自治体の行政担当者の方々からは、廃棄物処理法を理解することは大変難しいと、良く耳にします。そもそも廃棄物処理法は、生活環境を保全するために不適切な廃棄物の取り扱いを取り締まっていこうという思想で出来ています。 多くの事業者は真面目にやっていても、経済原則で事業者の方々が動く世界において不適正な処理を無くすことは困難であり、大きな生活環境の支障につながる一部の行為に目を向けて取り締まっていかなくてはなりません。 しかし一方で、そのような規制が大局的に見れば様々な無駄や不合理を産んでいる点が指摘されています。そこで国では、個別のリサイクル法によってモノ毎に仕組みづくりをしていったり、、再生利用認定制度によって、規制緩和を行い有効利用促進を図っています。 他の環境法と異なり、廃棄物は固体や液体であるので多様で不均一、出所は様々だし、扱う主体、ルートも様々なので、細かい部分では共通のルールが作りにくい分野なのかもしれません。したがって、研究面からも法的に改善が望ましい点があれば、どんどん行政側に発信、指摘して行くべきだと思います。
 一研究者として、現在一番問題意識を持っている法的問題は、廃棄物の定義です。日本特有なのですが、モノが有償(売れる状況)か逆有償(逆に処理費を支払わなければならない状況)かで廃棄物かどうかで実際は判断されており、有償であれば、どんなに有害な性状をもっていても廃棄物処理法の範疇で裁けないことが多くあります。 事業者は、通常は廃棄物としてみなされるものであっても、極少額の値を付けて有償物と見なし取り引きしたり、自ら有価物と称して不法投棄まがいの不適切な保管をしたりしています。もちろん、技術的にはリサイクルできるものまで「廃棄物」として廃棄物処理法の下で判断すると、様々な規制を受けることになり、その煩わしさからわざわざリサイクルしなくなる現実もあり、かえってリサイクルを阻害しているとの指摘もあります。 以上のようなジレンマを解消するには、有償であれ逆有償であれ、すべてを「循環資源」と見なして、生活環境保全上問題がない形で可能な限り循環していくという基本思想の下に法的対処の骨格をつくっておき、拡大製造者責任(EPR)の原理の下でライフサイクル管理できるモノは個別のモノごとに個別リサイクル法ではずしていく、という考え方を模索すべきと思います。
 なお、分別区分の自治体毎の違いについては、各自治体のもつ技術システムが違えばそれに適した分別区分も異なる部分があると思われます。現在、環境省と国立環境研究所等との共同で、地域に応じた適切な分別区分の考え方について、指針づくりの検討を開始しました。


Q20: ゴミのリサイクルで「RDF」という方法に安全性の問題などがあると聞いたことがあります。どのような点の改善が必要なのでしょうか?

A20: RDFの技術は、ごみを燃料とみなして熱供給施設や発電施設で利用する技術です。RDF化が広がった一つの理由は、ダイオキシン類対策における広域的なシステムづくりの際に、小規模な自治体においてはRDF化のみを行ってそれを大型の発電付き焼却施設で適切なダイオキシン類対策の下に処理していく、という考え方からでした。保管、運搬時の容易さだけでなく、均一化されていることから燃焼管理にも有利です。しかし、三重県の事故で安全性に対する大きな疑問が投げかけられました。発酵性の生ごみを含むRDFの貯蔵時の管理に十分なノウハウが無かったからです。現在では安全対策に関するマニュアルも国等から示され、安全な技術として活用できるものと考えられますが、、RDFの製造時にも環境保全対策も含めて資源・エネルギー消費を伴い、コストはかかるわけですから、どのような地域条件のときに環境面でも経済的にも有利になるか、LCAによる適切な評価が望まれます。


Q21: 循環型社会形成の最大のネックは石油化学製品を利用していることにあると思います。しかし、石油の利用を一気に止めることは、多くの人々の生活を脅かすであろうとも思います。脱石油化学製品の社会をどう構築していけば良いのでしょうか?

A21: 私達の社会には今、脱温暖化と脱化石資源の両立を目指した循環型社会づくりが求められていると言えます。特に重要なのがご指摘の「石油化学製品」ですね。その中心が様々なプラスチック製品の利用であり、私達の生活の隅々まで浸透しています。 また、ガソリンや灯油、重油などの燃料、アスファルトなどの土木材料などの石油製品も私達の生活、社会を支える、無くてはならないものです。 このように考えると、現在のような石油などの化石資源に依存する技術社会から直ぐに脱却することは不可能ですが、バイオマス、風力などを含む太陽エネルギー起源の再生可能資源・エネルギーによって構築された技術社会に少しずつ転換していくことが今後の方向性になると思います。 そのために、私達がライフスタイル変革でどこまで対応できるのかが大事になります。原油価格が高騰して脱石油社会への転換がにわかに現実味を帯びてきたこの機会に、将来の社会に向けたシナリオを描き、そのためのロードマップをつくっていくことが重要です。

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