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講演2「地球温暖化−何が起こるか、どう防ぐか− 温暖化を防ぐ社会のあり方−脱温暖化社会に向けた3つの取り組み−」

東京・京都会場でのアンケートに寄せられた質問に、講演者(藤野純一)が回答します。
多数のご質問をいただきましたが、似た内容の質問をまとめるなど主催者側で整理しましたことをご了承ください。


Q1: 化石燃料の枯渇を考えると、2050年ではなくてもっと長期の将来像や、逆に、気候変動がすでに始まっていることを考えると、もっと近い時期の問題設定が必要ではありませんか? また、脱温暖化という名称は、脱化石燃料化とすべきではないでしょうか?

A1: 脱温暖化プロジェクトでは、大部分の社会インフラが変更しうる、自分たちの決断の責任が及びうるという観点から、2050年を対象時点に挙げていますが、時期設定は問題に応じて変更する必要があります。大幅な温室効果ガス排出量削減を実現するためには、将来の脱温暖化像をイメージしながら具体的な対策を今すぐにでも始める必要があると考えています。温室効果ガス排出の大部分は化石燃料起源であるため、脱石油や脱化石燃料の要素を含んでいますが、環境に調和したライフスタイルへの転換も含めた温暖化防止を強調する意味で脱温暖化という名称を用いています。


Q2: 気温上昇2度以内という目標では、サンゴを初め生態系に影響が出て、それが温暖化を促進すると聞いたことがありますが、2度という目標でいいのでしょうか? また生態系に対する対策は考えられているのでしょうか?

A2: ご指摘の通り、サンゴ礁などの脆弱な生態系への影響は1度以下の温度上昇でも起こると言われています。そのため、必ずしも2度という数値はベストな目標ではありませんが、水資源や農業、人の健康への影響、さらには気候の様相への変化などの大規模かつ不可逆なものまで含めると、なんとか2度までに抑えた方が温暖化による深刻な影響が避けられるのではないか、という意味で提示しています。人間活動に近い農業については、気温上昇や降水量変化に対応した作付けへの変更などの適応対策が考えられますが、自然生態系への対策は困難です。

Q3: CO2排出量=人口×活動量/人口×エネルギー/活動量×CO2/エネルギー の式を講演の中で示されましたが、これはどういう意味でしょうか? また、80%削減法とは具体的にどのようなものでしょうか? どのような取り組みが将来的にCO2削減に特に大きく寄与してくると考えられるのでしょうか? 炭素貯留、原子力はどのように扱われていますか?

A3: この式は、CO2排出量が、[人口]と[一人当たり活動量]、[活動量あたりエネルギー(エネルギー集約度)]、[エネルギーあたりCO2排出量(炭素集約度)]を掛け合わせることで求められます。1990年から2003年までの間の各要因の年変化率はそれぞれ、0.2%/年、1.1%/年、-0.4%/年、0.0%/年であり、CO2排出量は0.9%/年の割合で増加しています。
 対策の定量的効果については、現在分析を進めているところですが、[炭素集約度]ではCO2排出量の少ないエネルギー源(再生可能エネルギー)の開発および普及が重要です。原子力やCO2回収貯留技術、発電所など大規模施設で発生するCO2を分離回収し地中や海洋中に隔離する対策はCO2を排出しない一方、他の環境面への影響があるため十分な検討が必要です。 [エネルギー集約度]では、例えば、家庭部門では家電機器の効率向上、高断熱化やモニタリングシステムなどにより、得られるサービスを高めながらエネルギー投入量を少なくすることが肝要です。[一人当たり活動量]では、豊かさの質について一人ひとりが改めて考え行動することが大切でしょう。


Q4: 上の式によると人口が減ることはいいことになりますが、そう解釈していいのでしょうか? 将来の人口減少をどのように予測しているのでしょうか?

A4: 人口予測として基本的に国立社会保障・人口問題研究所の中位推計を用いています。それによると2006年を境に減少を続け、2050年には約1億人になります。最近の統計では、2005年に既に人口減少が始まっているとされています。他の要因が同じで人口が減少するとCO2排出量は減少します。一方、人口が減少することで、エネルギー効率改善や新エネルギー開発分野で働く人が減少し、エネルギー集約度や炭素集約度の改善が進まなければ、総合的に見てCO2排出量を減少する方向には向かわない恐れもあります。


Q5: 行動、制度、技術を変えるために、具体的に何をするのでしょうか? 産業界の対策としてはどんなことを考えておられますか?

A5: CO2排出量を削減する対策として、行動・制度・技術という3つのキーワードを挙げました。産業界で特に期待されるのは、より品質の高い製品・サービスをより少ないエネルギー投入・CO2排出量で生産することです。例えば、軽くて強度の高い鉄鋼製品[技術]を生産し、ハイブリッド自動車に適用できれば、安全性を維持向上しながら車体を軽量化し燃費を改善することができるでしょう。また、製造時・使用時・廃棄時の各段階におけるCO2排出量を総合的に勘案して製品を選択できるよう仕組み[制度]作りが大切です。購入価格が少々高くても、環境や省エネ性をトータルに考えて消費者が購入[行動]すれば、生産者は新たな価値観に基づいた生産活動を行うことになるでしょう。つまり、行動・制度・技術は密接に絡み合っており、有効に活用することで様々な対策を促進することができると考えています。


Q6: 自治体に対する具体的な提案はありますか?

A6: 脱温暖化社会は、国や企業など日本全体のトップダウン的な活動だけでなく、自治体や個人などローカルのボトムアップ的な活動がないと実現できません。脱温暖化2050研究プロジェクトでは都市に関する研究も進めているので、今後具体的な提案を行う予定です。


Q7: 英独仏と日本のモデルの主要な違いは何でしょうか?

A7: 図で示した英独仏のモデルでは2050年までに大幅削減を目指した分析を行っています。日本の既存モデルでも温室効果ガス削減対策の解析を進めていますが、1990年比50%以上の大幅な削減目標を前提にしたものはありません。脱温暖化2050研究プロジェクトでは、50%を超える大幅削減を実現しうる対策を評価するモデル構築を進めています。


Q8: 長期的な視点でモデル解析をする場合、科学技術の飛躍的発展、非連続性をどのように評価し、モデルに取り込んでいるのでしょうか?

A8: この研究では、まず脱温暖化した社会経済像を想定し、その中に様々な対策を組み込む、バックキャスティングの手法を試みています。そのプロセスで、例えば革新的な水素技術の役割が非常に大きいと想定された場合、将来から現在に向けて技術開発・導入・普及などの道筋を推計し、その実現可能性を検討することを考えています。


Q9: 2050年の社会像について、ドラえもん社会と、さつきとメイの家社会を述べていましたが、これはどのような社会でしょうか?

A9: 将来の望ましい社会像は多数あると思いますが、わかりやすくするために二つの社会像をキーワードで表現しました。「ドラえもん社会」は利便性・快適性により重きを置いた社会、「さつきとメイの家」は自然や文化的価値により重きを置いた社会です。今後、研究プロジェクトで具体的な記述を増やしていきますが、どのような社会がいいか考えてもらうきっかけになることを期待しています。


Q10: 排出量の少ない車への買い替えが促進されるように車の税制が変更されたと聞いたことがありますが、その効果は出ているのでしょうか? また古い車を大事に使う方が新車を買うよりもいいということはありませんか? 停車時にエンジンを切るアイドリングストップは効果があるのでしょうか?

A10: 税制面での優遇措置や環境意識によりハイブリッドカーの普及は進んでいますが、全体的には小型自動車より排出量の多い普通自動車の普及の方が進んでいます。古い車の買い替えについては、各自の利用方法、車の生産から廃棄に至るエネルギーやモノの消費を総合的に判断する必要があります(LCA:ライフサイクルアセスメントと呼ばれる手法)。アイドリングストップの効果は一概には言えないところがありますが、燃料消費の削減効果があります。


Q11: 都市交通の根本的解決は交通量を減らすことだと思うのですが、「望ましい都市の交通システム」をどうお考えですか?

A11: 交通欲求を満たしながらエネルギー負荷の低い交通サービスシステムに変換していくのが望ましいと思います。そこに住む人々がなぜ移動する必要があるのかという需要サイドの積上げからどうすれば排出の少ない交通手段の組合せがありうるか、検討することが大切だと思います。望ましい都市のシステムはその都市の特徴や外的な条件によって変わってくると思います。


Q12: 太陽光発電の計算には、物流や電池製造時は考慮されていますか?

A12: 今回の試算には含めていません。各種条件によって物流や電池製造時のエネルギー投入等の数値は変化しますが、ライフサイクルアセスメントによる研究結果を参照して、今後その効果を解析します。


Q13: 自然生態保護や食料増産など、他の問題の解決には、エネルギー消費が必要となるのではないでしょうか?

A13: ご指摘の通り、何らかの活動を行うにはどうしてもエネルギー消費が必要になります。自然生態保護は活動の仕方によりエネルギー消費を抑えることもできるでしょうが、食糧増産には農業機械への投入エネルギー、化学肥料製造への投入エネルギー、輸送エネルギーなどエネルギー投入が必要になります。同じエネルギーで、できるだけ効率よく食料増産する可能性を探っていくことも重要です。


Q14: バイオマスはなぜカーボンニュートラルなのでしょうか? 最大値(ポテンシャル)はどの程度あるのでしょうか? 海外からの輸入について述べていましたが、国内のものを使うべきではないでしょうか?

A14: バイオマスは成長するときにCO2を固定し、利用するときにCO2を放出するため、持続可能な利用を続ける限りカーボンニュートラル(CO2を排出しない)です。大きく分けて、土地を利用して生産するもの(プランテーションバイオマス)とバイオマスのマテリアル利用の過程で発生するもの(残渣バイオマス)の2種類あります。後者のポテンシャルは石油換算で約2100万トン(日本国内で利用されるエネルギーの合計が石油換算約5億トン)ですが、実際に利用されているのは、紙パルプ産業における黒液・廃材の利用とごみ発電などによる石油換算約500万トンにすぎません。余剰耕地や森林を利用し直接栽培する方法もありますが、地代や人件費が高くまだ経済的ではありません。現在、国内の木材生産量のうち約8割が外国材なので、国産材の割合を増加させることで残渣バイオマスの発生量を増やすことが可能になりますが、今後の日本の森林産業の動向に依存します。またブラジルからバイオエタノールを輸入しガソリンに混合することが実際に検討されていて、今後アジア諸国からバイオエタノールを輸入することもありえますが、それぞれの国の食料問題や森林問題との関係についても配慮する必要があります。


Q15: 中国との関係はどのようにシミュレーションに反映されていますか?

A15: 重要なご指摘です。一つは、日本がどんなに削減努力を行っても中国が削減に向かわないと世界全体では排出削減につながらないこと、もう一つは、エネルギーを多く消費する産業が中国に移転すると日本では削減が進みやすくなりますが、中国の削減が難しくなるからです。前者については、今後の国際政治を考慮してどのような排出削減分担が実行可能になるかシナリオ分析を試みています。後者については、国内の主要な産業に今後の動向についてインタビューするとともにモデル分析を行う予定です。


Q16: 京都議定書の役割をどう考えますか?米、豪および途上国の取り組みはどうなっていますか?

A16: 京都議定書は温室効果ガス排出量削減のための数値目標を伴った初めての国際枠組みで、世界が協力して削減に舵を切ったところに重要な意味を持つと考えます。しかし、はじめから途上国に具体的な削減目標値を設定しなかったこと、米国やオーストラリアが離脱したことなど問題もあり、今後、世界全体で削減に向けた行動がとれるように枠組みを改善する必要があります。日本はまず、京都議定書の目標値を達成する必要がありますが、短期的な視野にたった対策だけでなく、長期的な視野にたった対策が導入されるよう、脱温暖化研究を進めていきます。


Q17: クールビズなどの個々の省エネの効果はどの程度でしょうか?

A17: 電気事業連合会の試算によると、夏場(6〜9月)に全国の家庭や職場など民生部門で冷房用に使われる電力の量は約320億kWhで、室温を1度上げると32億kWh減少し、二酸化炭素120万t-CO2の削減につながるといわれています。日常にできる省エネ対策がいろいろあります。インターネットなどで検索して探してみてください。
例えば、クールビズに関しては下記のサイトが参考になると思います。

http://www.env.go.jp/earth/info/coolbiz/

http://www.team-6.jp/action/coolbiz/index.html


Q18: 経済発展と温暖化防止は両立するのでしょうか?

A18: 「持続可能な開発」という地球環境保全のキーワードは、将来の人間活動の基盤となる良好な環境を損なえば、経済発展する余地すらない(ので持続可能な形で開発や発展を進める必要がある)という意味で使われています。したがって経済発展も自由度が無限なのではなく、地球温暖化を防止する範囲内で検討する必要があると考えています。この観点に立てば、現時点でも経済発展の方向性に改善の余地があると考えます。例えば、日本は世界でも最先端の省エネ技術を持っていますが、これをもっと積極的に海外に広めることで、ビジネスになり温暖化防止にもなります。既に環境をキーワードにした技術開発が進んでいます。また環境を配慮したライフスタイル(LOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)など)にも関心が集まってきました。今後、環境保全と経済活動を両立させる社会経済像の例、そこに至る道筋について研究を進めていきます。


Q19: CO2問題の中で、ごみ焼却という対策は今後どのように位置づけられるのでしょうか?

A19: ごみ焼却からもCO2が排出されます。またゴミを埋め立て処分するとメタンが発生します。メタンはCO2よりも単位重量あたり21倍の温室効果があるため、回収してエネルギー利用することが望ましいです。3R(削減、再利用、リサイクル)を推進してごみ排出自体を減少させることが望まれます。


Q20: 研究者だけではなく、いろいろな分野の人の参加が必要ではありませんか?

A20: ご指摘の通りです。研究者、行政官、企業人、消費者、教育者、NGOなど社会を構成する全員が参加して初めて豊かな脱温暖化社会の構築への道が開けます。

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