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講演1「地球温暖化−何が起こるか、どう防ぐか− 温暖化が招く気候の変化とその影響」

東京・京都会場でのアンケートに寄せられた質問に、講演者(江守正多)が回答します。
多数のご質問をいただきましたが、似た内容の質問をまとめるなど主催者側で整理しましたことをご了承下さい。

Q1: ヒートアイランド現象は地球温暖化とどう関係しますか?
  近年地球の平均気温が上がっているのはヒートアイランドのせいではありませんか?

A1: ヒートアイランド現象は、都市部の気温が周囲に比べて高くなる現象で、その原因はアスファルトの蓄熱、樹木からの蒸発散の減少、人工廃熱などです。 大気中の温室効果ガスの増加を原因とする地球温暖化とは直接は関係ありません(両者とも人間活動が原因という共通点はあります)。 しかし、20世紀に観測されている地球の平均気温上昇を評価する時は都市部以外の測定地も含めているため、ヒートアイランドの影響は1割程度以下と見積もられており、近年の気温上昇はヒートアイランドでは説明できません。


Q2: フロンの温室効果は非常に強いと聞きます。あるいは量的にはCO2より水蒸気が支配的ではありませんか?
  なぜCO2に注目するのですか。また、京都議定書で取り上げた6種類の温室効果気体はどうやって選ばれたのですか?

A2: フロンの温室効果はCO2の数千倍と言いますが、それはそれぞれの物質の同じ量あたりという意味です。実際は、フロンはCO2よりもずっと微量なので、産業革命以降に増加した分による温室効果は、CO2が最も大きく、全ての温室効果ガスを合わせた効果の半分以上です。 将来についても、何も対策を取らなければ、CO2による温室効果が量的に最も重要と考えられます。また、フロンはオゾン層破壊防止のモントリオール議定書によって既に国際的に削減が取り決められています。 水蒸気は、大きな温室効果を有する重要なガスであることには間違いありませんが、人間が直接排出するというよりは、自然の循環によって大気中の量が決まり、その量を人間がコントロールすることはほとんど不可能であるため、人為起源の温室効果ガスには含めません。
 京都議定書の6種類のガスとは、CO2、CH4、N2Oの主要な温室効果ガスの他に、SF6、HFC、PFCというフッ素系化合物を含みます。 これら3種類のフッ素系化合物は、アメリカとカナダが導入を主張したものです。これらは、フロンと同様に同じ量あたりの温室効果が強く、かつ先進国で排出が急増しているというのが、議定書に含められた際の根拠ですが、アメリカとカナダは温室効果ガス削減方法の柔軟性を増すためにこれらの導入を主張したという見方もあります。


Q3: モデルに不確かさがあるのに、不確かさの度合いが減っているとどうして言えるのですか?
  また不確かさを減らすために今後どういう取り組みが考えられますか?

A3: 気候モデルの不確かさを減らす取り組みは、大きく2種類あります。一つは、講演でお話したように、大規模火山噴火や氷河期などの過去の気候変動をモデルがどれだけうまく再現できるかテストをして、うまくいったモデルを信用するというやり方です。 もう一つは、モデルで表現している個々のプロセス、例えば雲のでき方などを、より現実に近くしていくというやり方です。そのためには、新しい観測データやコンピュータ実験に基づいて、我々の「自然の理解」が進歩していく必要があります。
 実際に、世界中の多くの科学者が、この両方の種類の取り組みを日々行っていて、最新の気候モデルは、少し前のものと比べても、様々な現象がより現実的に表せるようになってきています。この意味で、予測の不確かさの度合いも、少しずつ減ってきていると言えると思います。


Q4: 現在は間氷期で今後は寒冷化するとか、そもそも温暖化は起きていないという説を聞きますが?

A4: 現在が間氷期で、いつかは次の氷河期が来るであろうことはかなり確かです。しかし、氷河期と間氷期のサイクルはおよそ10万年周期ですから、もうすぐ氷河期が来ると言っても、それは何百年後のことか何千年後のことか分かりません。 温暖化は、今後数十年から百年の差し迫った問題なので、氷河期が来るから温暖化の心配をしなくてよいとは全く言えません。
 温暖化は起きていないという説、あるいは、近年の気温上昇はCO2のせいではないという説はいくつかありますが、それらはどれも、現在までの科学的知識ではまだよく分かっていない部分などをことさらに取り上げて懐疑的に言っているだけで、温暖化が起きていないことを積極的に立証できているものではありません。


Q5: 過去のデータを使ってモデルを走らせて現在の気候を予測すれば、実際の観測と照らし合わせてモデルの検証が出来ませんか?

A5: おっしゃる通りです。実際、我々のものを含めて多くの気候モデルは20世紀の気候変動をうまく再現することが検証されています。
  (http://www.nies.go.jp/whatsnew/2004/20041105/20041105-2.html 参照)
 しかし、観測データの不確実性が大きいため、残念ながらこれだけでは検証の決め手にはなりません。そこで、講演や質問3のところでお話したように、大規模火山噴火や氷河期などあの手この手を使って、さらなる検証を行いつつあります。


Q6: モデルの中でフィードバックはどれくらい考えられていますか?
  海面上昇に伴う海水膨張によるCO2吸収の増加、凍土が溶けることによるメタンの放出、雲の増加による日傘効果、温暖化による植物の光合成活発化など。

A6: 今回の講演でお話した気候モデルでは、物理的なフィードバックのみが考慮されていて、生物化学的なフィードバックは考慮されていません。例えば、雲の増加による日傘効果は考慮していますが、CO2濃度やメタン濃度は、別のモデルであらかじめ計算したものを与えています。 しかし、ご指摘のとおり、物理的な気候の変化によってCO2やメタンの排出・吸収が影響を受けるというフィードバックはたいへん重要と考えられますので、そのようなフィードバックを全て含むモデルを現在開発中です。


Q7: 予測では北半球高緯度で最も気温上昇が大きいとのことですが、どうしてですか?

A7: いくつか理由がありますが、最も重要なのは、雪や氷が融けることによる効果でしょう。雪や氷は太陽光をよく反射しますが、温暖化して雪や氷が減ると、太陽光の反射が減る、 すなわち地表面が太陽光をより吸収しやすくなるので、気温上昇が大きくなります。他にも、もともと気温が低いと、同じだけの熱を赤外線の形で余分に逃がすためには大きな気温上昇が必要であること、高緯度では大気が安定していて上下に混ざりにくいこと、といった理由があります。 南極のまわりの海洋で気温が北半球の同じ緯度ほど上がらないと予測されるのは、海の水が上下によく混ざることも関係しています。


Q8: 温暖化すると、豪雪地帯ではむしろプラスに働くと考えられませんか?

A8: おっしゃるとおりです。ほどほどの温暖化は、地域や分野を限れば、プラスになることもあるでしょう。寒かったところで住みやすくなる、農業などがしやすくなるといったことです。 しかし、温暖化が深刻になれば、そのような地域でもその他のマイナス面の影響が増えてくると考えられますし、最初からマイナスの影響を受ける地域・分野は多いですから、それが温暖化を肯定する理由にはなりにくいと思います。


Q9: 2100年までの温暖化のアニメーション(動画)は公開されていますか? またそれを利用して構いませんか?

A9: 今回のシンポジウムを収録したDVDや、中学生向けCD−ROM教材 「解決!地球温暖化!」(http://www.uknow.or.jp/be/embassy_news/E000298.htm)の中でご覧になることができます。
個別に教材などでご利用になりたい方は、国立環境研究所企画・広報室(電話029-850-2308)までお問い合わせ下さい。


Q10: モデルでは、海の深さ方向の水温変化やCO2濃度変化は考慮されていますか?

A10: 海は海底までの3次元の温度、塩分、流速を解いています。従って海の深さ方向の水温変化は考慮されています。現在用いているモデルでは、海のCO2濃度は解いていません。質問6の答えをご覧下さい。


Q11: なぜ将来予測で真夏日が年によって増えたり減ったりすることまで分かるのですか?

A11: 将来のある特定の年に真夏日が多いか少ないかは、分かりません。計算結果の真夏日は年々で変動していますが、これは一つの計算例と思って下さい。一般に、気候モデルによる温暖化予測の結果で意味があるのは、平均的な変化傾向だけです。 例えば、将来のある年の真夏日の計算値に予測としての意味はありませんが、将来の真夏日は平均的にどんな割合で増えそうか、真夏日の年々の変動の幅が平均的にどう変化しそうか、といったことには意味があります。


Q12: なぜ温暖化によって降水量が増えるのですか?それが北半球で顕著である理由は?

A12: 主に大気中の水蒸気量が増えるせいです。北半球だけで顕著に増えるわけではなく、南半球でも中高緯度では顕著に増えます。顕著に増えないのは亜熱帯で、減少するところもあります。


Q13: 2100年以降の気温上昇や海水面上昇はどう考えられますか?
  最後のスライドの1000年後までのグラフに単位がなかったのも気になります。

A13: 2100年以降は、具体的な社会経済の発展シナリオがさらに考えにくくなるので、あまり予測研究が行われていません。ただし、気候を安定化させる(例えば気温上昇を2℃で止める)目標を考える上で、今後の重要な研究課題です。 最後のスライドのグラフに単位が無いのは、相対的な変化傾向に注目してもらえば十分であるためです。例えば、CO2濃度の増加が止まれば、気温上昇はだいたい止まるが、海面上昇はなかなか止まらない、といったことです。


Q14: プランクトン量の差などにより個々の海域や湖沼毎にCO2吸収率は違うと思うのですが考慮されていますか?

A14: 今回お見せした計算では、CO2の循環はモデル中で計算していません。質問6の答えをご覧下さい。現在開発中のCO2の循環を結合した気候モデルでは、プランクトンの量なども予測します。


Q15: 地球シミュレータの計算では何年位前からの実測データを使っているのですか?

A15: 1850年から2000年までは、実測もしくは推定された過去の温室効果ガス濃度、エアロゾル排出量、太陽活動や火山噴火といったデータを条件として与えた計算を行っています。(http://www.nies.go.jp/whatsnew/2004/20041105/20041105-2.html 参照)
2000年から先は、シナリオを与えて計算を行っています。


Q16: 9cm〜88cmと予想される海水面上昇について、その発生を未然に防ぐための対策と、それが実際に起きてしまった後の対策とでは、どちらの研究に重点が置かれていますか?

A16: どちらの研究も重要と思いますが、対策の重要性という意味では、「海水面上昇の発生を避ける対策」(すなわちCO2などの排出削減)は、他の深刻な影響(水資源、健康、農業など)の発生も避けることになりますし、地球規模で温暖化の影響を軽減することになりますので、優先して取り組まれるべきと思います。

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