**********************

講演2「飛行機を使って中国の大気汚染を探る−酸性雨・地球温暖化とのかかわり−」

講演者(畠山史郎)による回答

Q: なぜ、1200mでの試料採取なのですか?

A: 対流圏の大気、は地表〜約2000mまでの大気境界層と、その上の自由対流圏とに分かれています。地表での汚染物質の排出の影響を強く受ける境界層内における汚染物質の状況を調べるため、このときはその真ん中である約1200m付近を飛行しました。飛行高度は観測の目的や対象によってかわります。


Q: NO2モニタリングのセンサーを知りたいです。フラックス測定ですか?

A: 飛行機ではNO2の測定には市販の窒素酸化物計を用いています。モリブデンコンバーターでNO2→NOに還元した後、NO+O3の反応を行わせ、そのときに出る光(化学発光)を検出することによりNO2の濃度を求めます。フラックス測定ではありません。


Q: 気象(雨・雲・温湿度・風向)を加味する必要はないのでしょうか?

A: 実際の解析には気象条件も十分検討しています。気象状況(風向・風速)の変化により、汚染物質を含む空気塊の輸送も大きく変化します。また途中で雨が降れば、多くの汚染物質が洗い流されますので、風下での汚染物質の濃度は低下することになります。これらの変化をはっきりつかむには気象要素はデータの解析に不可欠です。


Q: 飛行機を使わなかった場合(地上・海上)と比べて、どんな成果がでるのですか?

A: 飛行機を使うと広い領域を短時間で調べることができるというメリットがあります。一方地上観測では、長時間にわたって変化を調べることができるというメリットがあります。両方の観測を同時に行うことにより、それぞれの長所を生かすことができます。講演ではお示しできませんでしたが、我々は中国における航空機観測のときに上海沖合の舟山列島、青島近傍の田横島などで同時に地上観測を行っています。


Q: 線での分析だけではなく、面やバルクでの広範な調査はあるのですか?

A: 面で捉える観測は今、人工衛星を用いた観測が鋭意進められています。まだ地表付近の大気汚染物質を十分な精度で測るのは難しいのですが、今後これも可能になると思います。


Q: 講演の中でアジア地域という言葉が出ましたが、中国以外のデータはあるのですか?

A: 韓国や、タイなど東南アジアの国々、台湾などそれぞれにデータがとられています。私がご紹介したのは私たちと直接共同研究を行って得られたデータです。


Q: 酸性雨は、なぜpH5.6以下なのですか?

A: 空気中には約350ppmの二酸化炭素があります。雨のもととなる雲の中に二酸化炭素が溶けて平衡に達するとpHが約5.6となります。つまり二酸化炭素だけで雨水がpH5.6となりますので、それよりpHが低い雨を酸性雨とよんでいます。しかし、人間活動以外の火山や生物起源の硫黄化合物、雷による窒素酸化物などによっても酸性物質は生成しますので、間違いなく人間活動の影響による酸性雨だと言い切れるのはpH5以下の雨であると考えたほうが良いとおもいます。また中国北部(北京周辺)では、土壌がアルカリ性なので、これが一緒に溶けて降る雨は、人間が出した汚染物質を大量に含んでいるのにpHは7付近となっています。pH5.6以下の雨ではありませんが、その中には人間活動に由来する汚染物質が大量に溶けているので、我々はこれも酸性雨と呼んでいます(広い意味での酸性雨)。

topへ